会議
翌日。市役所の最上階にある市長室で、リースは立派な椅子に腰掛け新聞を読んでいた。
一面を飾る昨日の爆発。記事の中には市長が自ら救助活動に参加したということも書かれている。そして、爆発の原因はガス漏れと警察が断定したということも書かれていた。
「ふん。」
リースは不愉快そうに鼻を鳴らすと、新聞を丸め傍らに置かれたゴミ箱に叩き込んだ。
あの爆発はガス漏れなどではない。
昨日の現場や複数のルートから得た情報によると、以前からシーノファミリーの構成員と店の責任者が揉めていた事と、爆発直前に二人の男がアタッシュケースを置いていったという事がわかっている。そして、シーノファミリーと警察は仲が良いという話もだいぶ前からリースの耳に入っている。
コンコン。
酷い状況に頭を抱えるリースの耳にノックの音が届く。
「どうぞ。」
「失礼します。」
リースが呼び掛けると、ドアが開きフタミが一礼して入室する。
そして、その後ろにアミスと、スーツを着崩しニヤニヤと笑みを浮かべる男が続く。この男の名はアルカ、秘書の一人だ。
「皆さんに集まっていただいたのは他でもありません。」
街を一望できる壁一面の窓を背にリースは、対面する三人に丁寧な口調で話す。
「いいとこに飲みに連れてってくれるんですね。わかります。」
「おい。」
ふざけるアルカの脇腹をフタミが肘で小突く。
「昨日の件ですね。」
二人のやり取りを横目にアミスは単刀直入に聞いた。
「ええ。・・・フタミさん、以前お願いしたシーノファミリーの件はどうなっていますか?」
リースは短く答えるとフタミに視線を移し、聞く。
「はい、先月に電話とお手紙で活動を縮小するようお願いをしましたが、市役所への相談や苦情は増加傾向にあります。そして、昨日の一件です。」
フタミはタブレットを片手に淡々と説明した。
「そうですか・・・」
「シーノと酒でも飲みながら話し合えばいいんじゃないですかぁ?」
再びアルカが軽い口調で言い放つ。
「確かに悪くはない提案だけど、それはまだ早いんじゃないかしら?」
微笑むアミスだが、その目は笑っていない。
「いえ、アルカさんの意見を採用しましょう。」
そう言ってリースはニッコリと微笑む。
「市長、あざっす!」
「手土産を忘れずに持って行ってくださいね。」
「わかりました。すぐに手配します。」