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バレンタインデーにチョコゼロな俺、ホワイトデーに暴走した結果

作者: シキ



 高校1年生の冬。

なんとかスクールカースト底辺を逃れトップとも遊びに行ける位置に落ち着いた。

良く話す相手も2人確保して順調な高校生ライフ。

…そのハズだった。

なのに俺の心は凍てついている。


 彼女が出来ないのはまあいい。

よくないがまあ、いい。想定内だ。

だがしかし、俺はバレンタインデーにチョコを貰っていない。

一つもだ。親からもナシ。

母親はチョコ0なのを知って「ぃ、今から作ってこようか?」なんて気の使われ方した。

オカン、ソレ、トドメダヨ…?

気持ちだけいただきます。


 学校ではバレンタインデーなんて友チョコとか言って堂々と菓子を食べる日、なんて事はなかった。

女子同士はそうなのだが、男子に渡すチョコは割とガチだった。

甘酸っぱい雰囲気でソワソワモジモジしながらチョコを渡す女子。俺の隣の男子にな?

少し茶化しながら二人っきりになるように誘導した俺エライ。

周りを見ればチョコの数=モテ度の法則が崩れていなさそうな学校だった。

ェ、オレ、チョコ、ゼロ…。



 暴走した俺はホワイトデー前日、お菓子を買い漁った。

悲しげな表情でやんわり止める母親に涙を流して「止めないで…」と言えば「それで気が済むなら…」と泣かれた。

えっと、親に泣かれる事してるの俺⁉︎


 ホワイトデー当日。

紙袋7個パンパンにお菓子を携え俺登校。

笑いながら「今日、ホワイトデーだから!」と女子にお菓子を配りまくる。

「え?私貴方に渡してない」と悲しい事実確認されるも俺は負けずに「え?俺バレンタインデーにチョコ一つも貰ってない!」と言いながらお菓子を無理矢理持たせて立ち去る。

「今日ホワイトデーだから!」そう言いながら笑顔でお菓子を配る俺に、男子は静かに涙を流した。



 同学年の女子全員にお菓子を渡すミッションをクリアした翌日、男子の友達が増えました。

優しく肩を叩かれて「今度遊びに行こう!な!」と複数人に言われる。

優しくしなければならない存在にまで落ちた俺を前からの友人は指を指して笑いやがる。

お前、親しき仲にも気遣いは必要なんだぞ?


 「可愛いそうだから、連絡くらいしてあげても良いよ」とギャルに謎の上から目線の同情をもらう。

「あ、そういうの結構です。半分ネタだったんで」と断った。

ギャグキャラの地位に着いた俺に怖いものはない。

開き直っているとも言う。


 「えっと、この前のお返し…」と大人しめの女子グループから手作りのお菓子をもらう。

「お、じゃあジュース奢るから昼休みにお茶会開こうぜ」と無難に返す。

相性良さそうな男子を誘ってジュース奢らせてなんちゃって合コンみたいになった。

男子には感謝された。


 「またお菓子ちょうだい」と遠慮知らず系女子に絡まれた。

「お年玉もスッカラカンの俺にまだたかるのか⁉︎」と泣き真似したら「馬鹿がいる」とゲラ笑いされた。

友人に笑われるのと女子に笑われるのとではここまで印象違うのかと実感。

いや、コイツが普通に俺を馬鹿にしてるだけか。



 春休みの予定がほどよく埋まり、ワクワクしながら修了式を迎える。

良くも悪くも学年内に俺を知らない人はいない。

確実に黒歴史になるだろうが、今の俺は爽やかや心地をしていた。

何人か俺がお菓子を渡した女子と付き合ってた彼氏さんから絡まれてヤサグレたともいう。

「バレンタインデーにチョコゼロの俺がヤケクソになってホワイトデーにお菓子バラ撒いただけだ!」と心からの叫びに「絡んでしまったお詫び」とファミレスで飯を奢ってもらった。

その優しさが心の傷にしみて痛いのよ…。

あ、ドリアは美味しかったです。



 春休み中、告白された。

いつぞやの大人しめの子だった。

俺のコミュ力、行動力、発想にキュンキュンきたらしい。いやん。

脳内でふざけながらも大人しめの子を観察。

顔、可愛い部類。もっとちゃんと化粧したらもっとバケそう。

スタイル、何がとは言わないがDはあるな。身長差も向かい合わせに立ったら丁度額にチュー出来る程度なのがグッド。

「君の事あんまり知らないから今付き合ったら身体目的になっちゃうよ?思春期の性欲ナメちゃダメだよ?」と出さなくていい本音がポロリ。

アカン、オレ今人生初の告白にテンパってる。今気付いた。



 どうも、高校2年になった童貞です。

あの本音ポロリの後、相手も相当テンパっていたのか「ど、どうぞ‼︎」と目を瞑ってタコクチするもんだから、失礼ながら笑ってしまい少し話して清いお付き合いスタート。

「開き直って暴走して良かった!」と友人に惚気たら苦笑いが返ってきた。



 翌年のホワイトデー、俺と彼女のバカップルぶりを見て模倣犯が複数現れた。


 またその翌年のホワイトデー、やはり複数の模倣犯が現れた。

今年は3年目ということと全学年に模倣犯が現れた事により、教師が動いた。

「受験生は登校する人も少ないので事前調査等してお菓子を計画的に買いなさい。」とHRで言われた。

元々バレンタインデーやホワイトデーの日に学校にお菓子を持って来る事を容認していた(校則では一応禁止)学校ではあるが、HRでお知らせする内容としてはどうかと思う。


 卒業して大学生。

部活の後輩情報でまだホワイトデーにチョコゼロ達が女子にお菓子を配るのは続いているらしい。

「もはや伝統ですね」と苦笑い。

俺も苦笑いだよ。俺の暴走が学校の伝統になるとかなんの罰ゲームなんそれ。

「発祥が俺というのは黙ってろよ⁉︎」とお願いしたら「手遅れです、てか今更」と笑われた。ちくしょうめ。


 あ、童貞は高校卒業と同時に卒業しました。

お互い大学生になって、大人しめだった彼女も垢抜けた感じになってもっと可愛くなっちゃったから悪い虫付かないように必死の俺です。

頑張って同じ大学受かってよかった…。

 今でも彼女は俺のコミュ力、行動力、発想力にキュンキュンしてるってよ。

俺は彼女のその癒し力、可愛いさ、エッチさにキュンキュンしてると割と最低な返しをしても笑って許してくれた。


 ホワイトデーに暴走した馬鹿な俺、グッジョブ!



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― 新着の感想 ―
[一言] ギャグセンスがツボって笑いながら読みました。 こんな青春ほしかった…。
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