ひろし、援護に向かう
社長と専務の大谷、そして元気なおばあさんたちはカフェでお喋りを楽しんでいたが、次のバスが出る時間が近づいてきたのでカフェからバス乗り場へと移動した。
◆
社長たちがバス乗り場に到着すると、バスは相変わらず大盛況だった。
バスはすぐに満車になってしまったため、今回は満車になったバスから先に出発していた。
それを見た専務の大谷は社長に言った。
「社長、これは本当に予想以上の大盛況ですね」
「正直ここまでとは思わなかったな」
最後のバスを先頭で待っていた社長は笑顔になると、一緒にいた元気なおばあさんたちを先に案内した。
「さあみなさん、奥の席へどうぞ」
おばあさんたちは案内されて奥の席へ座ると、社長と大谷は吊り革につかまって前に立った。
すると待っていたお客さんたちも続々と乗車してきた。
しかしその時、ひとりの女の子がバスに飛び込んできて、運転手の大槻と乗客たちに言った。
「すみません! ちょっとだけ待ってもらえませんか?」
「え、あ、はい」
乗客たちも慌てる女の子に優しく答えた。
「わたし大丈夫だよ」
「あたしも」
「おれも、問題ない」
女の子は奥にいる社長たちのほうにも視線を送って尋ねた。
「みなさん、お急ぎですか? ちょっとだけ待ってもらえないでしょうか」
それを聞いたおばあさんの一人が笑顔で答えた。
「ぜんぜん大丈夫よ。あたしたちなら、いつまででもお喋りして待っていられるもの」
「「あっはっはっは」」
「ありがとうございます!」
しばらくすると、ピンデチの村のほうから2人の女の子が走ってくるのが見えた。
女の子たちは、すでに満員になりかけていたバスに飛び乗ると、息を切らしながらバスの中の乗客たちに言った。
「お待たせしてごめんなさい!」
「ごめんなさい!」
バスの乗客たちと社長たちは笑顔で迎えた。
「では3号車、コーシャタへ出発します」
こうしてバスは先行する2台のバスから5分ほど遅れてピンデチを出発した。
その頃、美咲は和代と一緒にビッグ・スクーターのモービルでゆっくりと砂漠地帯へと向かっていた。
すると、社長たちが乗っているバスが追いついて来て、距離を取りながら追い抜いていった。
それを見た和代が美咲に言った。
「あら、美咲ちゃん。またバスだわ」
「ほんとだ、3台目。結構走ってるんだね」
するとその時、和代の視界に白く光る物が見えた。
「あら? あっちの岩山の上に何か白いものがいるわ。何かしら」
「白いもの?」
美咲は岩山の上を見てみると、なんとイークラトの破壊神ホワイト・ドラゴンがいるのが見えた。
「え! なんでピンデチに!?」
美咲が驚いて声を上げると、ホワイトドラゴンはゆっくりと飛び上がって降下してきた。
バサッ バサッ バサッ バサッ
そしてなんと、社長たちの乗るバスの進行方向を塞ぐように降り立った。
ー バス車内 ー
「え、うそ! ドラゴン!」
「こわいよ……」
バスの中の乗客たちは少しパニックになった。
ホワイトドラゴンを確認した社長は大谷に言った。
「大谷くん、大変なエラーが起きたようだ。行かねばならぬな」
「はい」
社長はバスの中の人たちに言った。
「ご安心ください。あのドラゴンは私どもが倒してみせます。大丈夫です」
そして社長は運転手の大槻に言った。
「大槻さん、我々はここで降ります。少し危険ですが進行方向を右に変えて砂漠地帯を突っ切り、ピンデチまで逃げてください」
「はい!」
大槻はバスを停止させて社長たちを降ろすと、バスを発進させて進行方向を変えた。
そしてサンドワームが出現する砂漠地帯へ入り、一直線にピンデチへと向かった。
するとその時、バスの横に美咲と和代が乗るバイクがやって来て、美咲がバスに止まるように手で合図した。
大槻はそれを見てバスを停止させると、美咲が和代をバイクから降ろして運転手の大槻に言った。
「すみません、おばあちゃんも乗せてください!」
「わかりました! さぁはやく!」
和代がバスに乗り込むと、美咲は一気にバイクを加速させた。
そしてホワイトドラゴンから少し距離をとって戦闘準備をしている社長たちのほうへ向かった。
ザザァァ……
美咲は社長たちの近くにバイクを止めて降りると、コーシャタで戦った大谷を見つけた。
大谷も美咲に気づくと、美咲は頭を下げながら言った。
「ホワイトドラゴンの討伐ですよね。この間の罪滅ぼしに、お手伝いさせてください」
それを聞いた大谷は嬉しそうに言った。
「これは頼もしい助っ人ですね。今、想定外の事態が起きています。宜しく頼みます」
「はい」
美咲は返事をするとレイピアを装備して、クルリと回しながらホワイトドラゴンを睨みつけた。
ー ピンデチG区画の家 ー
おじいさんたちはバンド練習を一段落させると、おじいさんは気になっていた事をアカネに尋ねた。
「アカネさん、今日は大熊笹さんと黒ちゃんさんがいませんね」
「うん。熊じいと黒ちゃんは朝練した後に、柔道教室で柔道を教えてるって行っちゃった。あたしはバンド練があったから残ったんだ」
「ああ、そうだったのですね」
するとその時、イリューシュが社長からのメッセージを受け取った。
『エージェント、ピンデチの砂漠地帯にホワイトドラゴンが現れた。至急応援たのむ』
「ええ!?」
思わずリューシュが大声をあげるとおじいさんが驚いて尋ねた。
「イリューシュさん、どうなさったのですか」
「大変な事が起きました。イークラトの破壊神、ホワイトドラゴンがピンデチに現れたようなのです」
するとアカネが拳を突き上げて言った。
「これは助けに行くしかないでしょ!」
それを聞いたイリューシュはアカネに話した。
「アカネさん。ホワイトドラゴンは、この世界で最強のドラゴンなんです。私もソロで討伐は容易ではありません」
「「ええ!?」」
「私は仕事として行かなければなりません。みなさんは家で待っていてください」
すると、めぐがイリューシュに言った。
「イリューシュさん。家で待つくらいなら一緒に行きたいです」
アカネとおじいさんも続いた。
「あたしだってそうだよ。気になっちゃうよ」
「わたしもお手伝いします」
みんながイリューシュにそう言うと、イリューシュは笑顔になって答えた。
「みなさん、ありがとうございます。では一緒に参りましょう」
「「おー!」」
おじいさんたちは急いで村の外へ出ると、軽トラに乗って砂漠地帯へと向かった。
ー ピンデチ砂漠地帯 ー
おじいさんたちが砂漠地帯に入ると、遠くにホワイトドラゴンと社長たちが居るのが見えた。
そして、一台のバスがホワイトドラゴン避けて砂漠地帯へ迂回しているのも見えた。
それを見たイリューシュが窓から顔を出して荷台のめぐとアカネに言った。
「バスがホワイトドラゴンを避けて砂漠地帯を横切っています。ドラゴン退治とバスの護衛の二手に分かれましょう」
するとめぐがイリューシュに言った。
「わたし遠距離から攻撃できるから、ドラゴン行きます!」
それを聞いたアカネは立ち上がって言った。
「じゃああたしは、バスに行く!」
イリューシュは2人の言葉に頷くと、運転席のおじいさんに言った。
「では、わたしとめぐさんがドラゴンに行きます。ひろしさんとアカネさんはバスの護衛をお願いします」
「はい!」
おじいさんは軽トラを猛スピードで走らせると、ドラゴン討伐の準備をしていた社長たちの近くにイリューシュとめぐを降ろした。
イリューシュは車から降りてドアを閉めると、荷台のアカネがめぐとイリューシュに大声で言った。
「めぐ! イリューシュさん! がんばって!」
「うん! がんばる!」
「はい、行ってきます!」
おじいさんは、そのまま軽トラを走らせて砂漠地帯のバスのほうへ向かった。
イリューシュとめぐは走って社長たちに合流すると、イリューシュが社長にめぐを紹介した。
「社長、こちらは協力者のめぐさんです」
「おお。このような時に大変たすかります。宜しくお願いします」
「は、はい。がんばります!」
めぐが緊張気味に答えると、社長はみんなのほうを向いて大きな声で言った。
「みなさん、ご協力感謝いたします。なぜホワイトドラゴンがここに居るのかは分かりません。ただ、倒さなければならないのは事実です」
そして社長は腕を高く上げるとみんなを鼓舞した。
「では、イークラトの破壊神を倒しに行きますぞ!」
「「はい!」」
みんなは返事をすると、一斉にドラゴンへ向かって走り出した。




