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VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~  作者: オイシイオコメ
あの日の記憶
29/95

ひろし、アカネに驚く

 おじいさんが現実世界に帰ってくると、おばあさんはテーブルで熱心に本を読んでいた。


「ただいま」


「あら、おかえりなさい」


「何か勉強しているのかい?」


「ええ。今日お友達になった方がゲームの中のどこらへんに住んでらっしゃるのかと思って」


「あぁ、なるほどなぁ。お友達がゲームで住んでいる場所って分かるんだなぁ」


「あら、アプリでプロフィールを見ると拠点にしている町の名前が書いてありますよ」


 おばあさんは、老眼鏡をかけて地図を覗き込んだ。


「あ、これだわ、シャーム。あら、ピンデチからそんなに遠くないわね。でもこの海どうやって渡るのかしら」


 それを聞いたおじいさんがおばあさんに言った。


「どうやらメインクエストを進めないと、他の町に行けないんだそうだよ」


「あら、そうなんですね。頑張ってメインクエストを進めないとですね」


「そうだなぁ。わたしも頑張らないと」


「そうそう、今日はお友達と新しいお店の物件を見に行ったんですよ」


「あぁ、それはすごいなぁ」


 2人は、今日も夜遅くまで楽しくお喋りをした。



 ー 翌日 ー


 今日も2人は朝から家の仕事を終わらせ、一緒に昼食をとり始めた。


 すると、おじいさんはスマホのランプが点滅している事に気がついた。


「おや? メッセージかな」


 おじいさんはアプリを開いてみると、イリューシュからメッセージが届いていた。


 ーーーーーーーーーーーー


 イリューシュ:今日のオーディションは観覧ができるので、よろしければご友人もお誘いくださいね。会場までは無料の無人タクシーもありますので。ではのちほど。


 ーーーーーーーーーーーー


 おじいさんはメッセージを読み終わると、少し照れくさそうにおばあさんに言った。


「おばあさん、今日は夕方5時からバンドのオーディションがあるんだ。良かったら見に来てくれるかい」


「あら、見られるのね。場所はどこかしら」


「ピンデチからコーシャタの街へ行く途中にステージがあるんだ。無料の無人タクシーもあるそうだよ」


「まぁ。じゃあ、お友達と行ってみようかしら。楽しみですね、うふふ」


「あぁ、ははは。がんばらないとなぁ」


 二人は食事を終えてテーブルを片付けると、いつものようにVRグラスをかけてゲームの世界へ入った。



 ー 東京 株式会社イグラア社内 ー


「お電話ありがとうございます。株式会社イグラア、ザ・フラウ運営本部、山本でございます」


『お世話になってます。ギーカブルの大埼です』


「あ、真理さん。お疲れ様です」


『お疲れ山本ちゃん。この間のサーバー負荷の原因が分かったんで報告したいんだけど部長いる?』


「あ、居ますよ、変わりますね」


 ♪♪♪~♪♪~♪♪♪~


「はい、お電話かわりました」


『お疲れ様です、ギーカブルの大埼です』


「あ~、真理ちゃん。おつかれ~。ちょうど外部セキュリティ会社からの報告を待ってたとこだよ~」


『この間のサーバー負荷、ログを調べたら、どうやら誰かがハッキングを試みたみたいで』


「そうなのぉ? まだ、たまにサーバーに負荷がかかるんだよね」


『ええ? それは危ないですね。一度ウチからサーバー監視しましょうか?』


「ほんと? お願いできる?」


『もちろんですよ~。何時くらいまでメインサーバーに接続できますか?』


「21時までは僕がいるから、それまでは大丈夫よ」


『21時までですね。では夕方頃からアクセスさせていただきますね」


「助かるよ~。レベル2のアクセス許可出しとくね」


『はい、では監視しておきますね』


「はーい、お願いしまーす」


 真理は電話を切ると静かに微笑んだ。



 その頃、おじいさんはG区画の家に到着し、玄関を開けて中に入った。


「おや? 誰もいない…… 。ああそうか、今日は夕方集合の約束だったな」


 しかしその時、かすかに2階から声が聞こえてきた。


「オナシャス……、やぁっ……、あぁい」


 バン


「もう一本オナシャス……、やあぁっ」


 おじいさんは不思議に思って2階へ上がり、開け放たれた居間のドアから中を覗くと、アカネが柔道着を着た黒ちゃんと稽古をしていた。


 バンバンバン!


「アカネ、まいった!」


「うし! あれ、じいちゃん早いね」


 アカネがおじいさんに気付くと、黒ちゃんは絞め技を決められたまま頭を下げて挨拶した。


「こんにちは、ひろしさん。お邪魔しています」


 2階の居間は畳が敷き詰められていて道場のようになっていた。


 アカネは黒ちゃんを離すと、嬉しそうにおじいさんに話した。


「黒ちゃん、昔柔道やってたんだって。投げ技と寝技の練習させてもらてるんだ。へへへ」


 アカネは道着を直しながら話を続けた。


「昨日イリューシュさんに2階を柔道の練習で借りたいって送ったら、朝来たら道場になっててさ。イリューシュさん最高!」


 アカネはそう言うと畳に戻って姿勢を正し、黒ちゃんに礼をした。


「オナシャス! やぁああ!」


 アカネは黒ちゃんに勢いよく飛び込んで組み付くと、黒ちゃんは組み付いたまま横へ移動した。


「やぁぁああ!」


 アカネは移動する黒ちゃんの一瞬の隙をついて足技をかけると、黒ちゃんのバランスを崩して転がるように投げ飛ばした。


 バン!


 それを見ていたおじいさんは驚いて声をあげた。


「アカネさん、素晴らしいですね!」


「ほんと? じいちゃん照れるよ。へへへ」


 アカネは元の位置に戻って黒ちゃんに礼をすると、再び稽古をはじめた。


 おじいさんは稽古の邪魔をしないように静かに部屋を離れると、階段を降りて和室へ向かった。


 するとその時、イリューシュとめぐが玄関を開けて家に入ってきた。


「戻りましたー」

「ただいまー。あ、おじいちゃん」


「あ、イリューシュさん、めぐちゃん、おかえりなさい。今日はどちらへ?」


 すると、めぐが嬉しそうに答えた。


「今日、オーディション会場まで無料の無人タクシーが出てるっていうから、ステージの様子を見てきたの!」


「あぁ、そうだったのですね」


「うん、この間見た時よりも大きいステージになってて、照明も凄そうだった!」


「あの時よりもステージが大きくなったのですか?」


「そう! TOKIOドームのステージくらいあったよ!」


「ええ? TOKIOドームのステージですか? いやぁ、まさかそんなに大きなステージだなんて……」


 おじいさんは予想以上の規模のオーディションに少し緊張し始めた。 



 その頃、おばあさんたちは案内ロボットと一緒に、新しいお店の物件を見に来ていた。


「洋子ちゃん、やっぱりこのお店いいよね!」


 マユが嬉しそうに言うと、メイも賛成した。


「ここなら村の大通りだし、お客さんも増えるかも」


 ナミとアルマジロも一緒に(うなず)いた。


 すると、ナミが店に置いてある大きな棚を見つけて小さな声で言った。


「これ、アルマジロたちのぉ(うち)にできそぅ」


 その棚は窓から日差しが入り日向ぼっこもできそうな棚だった。


 おばあさんはみんなの声を聞くと、一度頷(いちど、うなず)いて提案した。


「じゃあ、みなさん。ここにしませんか?」


「「うん」」


 全員一致で物件を決めると、マユが案内ロボットのタッチパネルを操作して「契約(移転)」ボタンを押した。


 すると、前の店にあった棚や商品、そして店の中で寝ていた残りのアルマジロたちも転送されてきた。


「ふぅぅ~」


 マユは深呼吸をすると、大きな声でみんなに言った。


「よし! みんな、これからも頑張ろうね!」


「「うん」」


 みんなは手分けして回復薬や防御強化薬、全回復薬を並べると、ナミはアルマジロたちを棚に乗せて看板のデザインを始めた。


 ナミは手を前に出してしばらく何かを描くように動かすと、小さい声で呟いた。


「ぅん。できた」


 ナミは何かを押すようなジェスチャーをすると、店の上の看板がナミがデザインしたものになった。


 看板には4人のデフォルメされた似顔絵と、回復薬の絵が描かれていた。


 こうして、おばあさんたちは新しいお店を出したのであった。


 そして、だんだんと外は暗くなり、おじいさんたちのオーディションの時間が近づいてきた。



  ー その頃 イグラァの外部セキュリティ会社、ギーカブル社内 ー


 真理は会社のパソコンを使ってザ・フラウのメインサーバーにアクセスすると、近くにいたエンジニアに声をかけた。


「ヤマちゃん、準備できたわ。ハッキングを開始してちょうだい」


 すると、ヤマちゃんと呼ばれたエンジニアはニヤリと笑って答えた。


「まかせて、マリさん。今日はパーティだね」


 ギーガブルの大埼真里は黒のリーダー、マリだった。


 真理はゆっくりと足を組むと、満足そうに微笑んだ。

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