ひろし、ゲームシステムを知る
騎士が剣を構えると、めぐも荷台から降りて戦闘態勢に入った。
イリューシュはそれを見て弓を構えると、騎士に照準を合わせた。
おじいさんはポケットの石を一つ握りしめて手に隠した。
すると騎士は、おじいさんたちを見回して言った。
「雑魚の集まりが」
そう言うと、騎士はアカネに斬りかかった。
ブワッ!!
「くっ!」
騎士の剣はアカネの予想以上の速さだった。
アカネは焦って後ろへ避けたが、騎士はニヤリと笑って大きく踏み込んだ。
「死ね!」
「やられてたまるか! やぁぁああ!」
バシッ!
アカネは体勢を崩しながらも騎士が踏み込んだ足を右足で払うと、騎士は予想外の攻撃によろめいた。
「なにっ! だが甘いわ!」
騎士は体勢を崩して膝をついたが、即座に剣を返して斬り上げ、一瞬でアカネを切り裂いた。
ズバッ!
「……くそ、負けたか!」
アカネはそう言い残すと消滅していった。
「アカネ!」
めぐは大声で叫ぶと、騎士を睨みつけて詠唱を始めた。
「聖なる雷を司る者たちよ。我にその慈悲と慈愛を与え……」
それを見たおじいさんは、めぐの詠唱を完了させるまでの間、騎士の気を引くために石を投げつけた。
シャァッ……、キンッ!
しかし騎士は剣で石を弾き飛ばすと、おじいさんに言った。
「じいさん、これはイベントの動画で研究済みだ。石投げるとかアホな攻撃すんなよ」
ヒュッ……ドッ!
その時、おじいさんに気を取られていた騎士の頭にイリューシュの矢が刺さった。
騎士は慌てて後へ下がると少し動揺しながら呟いた。
「っつ。油断したわ。だいぶHP減ったじゃねぇか」
すると、詠唱を完成させためぐが雷の大呪文を放った。
ガガーン!!
雷は騎士を直撃した。
しかし、騎士は消滅せずにめぐに言い放った。
「おい、何だコレ。あいつの矢の10分の1のダメージもねぇぞ」
めぐはそれを聞いて硬直すると、思わず涙ぐんだ。
それを見たおじいさんは、ポケットから野球ボールに近い形の石を取り出して握りしめた。
そして、大きく振りかぶると狙いを騎士に定めた。
それを見た騎士は笑いながらおじいさんに言った。
「おいおい、じいさん。その攻撃、まじ笑うからヤメろって」
しかし、おじいさんはその言葉に怯むこと無く大きく踏み出すと、二本の指に勢いを乗せ、腕をしならせながら一気に石を放った。
シャァッ……、カクッ
騎士は剣で石を防ごうとしたが、なんと石は剣の手前で大きくえぐるようにカーブした。
ガンッ!
石はカーブしながら下に落ち、騎士の膝を直撃した。
「ぐあっ!」
騎士は予想以上の攻撃力の乗った石に膝を撃ち抜かれ、その場に倒れ込んだ。
「なっ! カーブしやがった!」
ヒュッ、ドッ!
するとイリューシュがその瞬間を逃さず騎士にヘッドショットを決めた。
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
めぐはそれに続くようにMPの限界まで雷の魔法を連続で放つと、騎士のHPはとうとうゼロになり、悔しそうな表情で消滅し始めた。
「く……、こんな雑魚たちに……、クソがっ」
『26ポイントのステータスポイントを獲得しました』
「アカネ! かたきは取ったよ!」
めぐがそう言うと、イリューシュとおじいさんも笑顔になった。
おじいさんたちは戦いを終えると、軽トラでG区画の家へ戻ってきた。
そして車から降りて家の玄関を開けると、大広間でアカネがくつろいでいた。
「あ、おかえりー! 負けちゃってごめんね」
アカネがそう言うと、めぐはガッツポーズをして言った。
「アカネのかたきは、みんなで取ったよ」
「まじか! あいつに勝ったの? すげーじゃん、ありがとう!」
アカネはみんなに走っていって抱き着くと、めぐがアカネに聞いた。
「やられた時、すごく痛かったんじゃない?」
「うん、すげー痛かったよ! でもあたし痛いの慣れてるからさ」
すると、おじいさんが不思議に思ってアカネに尋ねた。
「アカネさん、わたしイベントでやられた時、まったく痛くなかったんですが、これは……」
「あぁ、じいちゃん。イベントの時はやられても痛くないし、ステータスポイントも無くならないんだよ」
「あぁ、なるほど。イベントは特別なのですね。ありがとうございます」
するとめぐがアカネに心配そうに尋ねた。
「アカネ、ステータスポイント無くなっちゃったよね」
「うん。まぁでも仕方ないよ」
「ごめんね。わたしたちがあの騎士倒したから、間接的にアカネの分ももらっちゃう形になっちゃった……」
「え? ぜんぜんいいよ。あんま貯まってなかったし」
「ほんとごめんアカネ。それにしても変換率89%ってぜんぜんステータスに変換してないんだね」
「あたしは貯め込んで、ドン! ってタイプなんだ」
おじいさんが2人の話を聞いて「??」になっていると、イリューシュがそれに気づいておじいさんに説明した。
「ひろしさん、ちょっと難しいですよね。左上にSPってありませんか?」
「あ、はい。あります」
「そのSPを押してもらっても良いですか?」
「あ、はい」
すると視界に小窓が現れ、数値が表示された。
「ええと、SP145pの100%と現れました」
「え、100%! ひろしさん、まだ一回もステータスに変換していないのですね」
「変換?」
「簡単に言うと、今は145pが100%ステータスポイントに変換されるんです」
「はぁ」
「ですが、一回変換するごとに%が下がっていしまうので、早く強くなりたい人は貯めてから変換するんです」
するとアカネが割り込んできて話した。
「だからあたしは最低100p貯まってから変換するんだ! じいちゃん、145pもあるなら変換ボタン押したら?」
おじいさんはステータスポイントの表示の横に「変換」と書かれたボタンを見つけた。
「あぁ、これですね。やってみます」
おじいさんが「変換」を押すと、久しぶりに節子さんが現れた。
「ステータスポイントをステータスに変換するよっ! 145ポイントを自由に割り振ってね」
[残り 145p]
物理攻撃力 1100
魔法攻撃力 なし
物理防御力 0
魔法防御力 0
素早さ 0
器用さ 0
おじいさんは少し悩んだが、良く分からなかったので結局こうなった。
[残り 0p]
物理攻撃力 1245
魔法攻撃力 なし
物理防御力 0
魔法防御力 0
素早さ 0
器用さ 0
すると、ステータスポイントのところの変換率が「99%」に変わった。
「ありがとうございます。無事変換できました」
おじいさんがそう言うと、みんなは笑顔で頷いた。
みんなが大広間の椅子に座ってくつろぎ始めると、アカネが急に笑いながらめぐに話しはじめた。
「そういえば、さっきの黒の騎士さぁ、ハッキングとか言ってイリューシュさんのスカウトに必死だったよな」
「ほんと、それ思った。ってか絶対あの人、大げさなこと言って口説いてくる人だよ」
アカネはそれを聞くと笑いながらウンウンと頷いた。
「だよな。あの騎士、イリューシュさんが仲間になったら、絶対口説こうとしてたよな」
「「はははははは」」
みんなは一斉に笑った。
こうして楽しい時間はあっという間に過ぎ、みんなはまた明日会う約束をしてログアウトしていった。




