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VRおじいちゃん ~ひろしの大冒険~  作者: オイシイオコメ
仮想空間でセカンドライフ
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13/95

ひろし、最大のピンチ

 カフェでみんなで話していると、おじいさんは、なんとなくカフェに貼ってある広告が気になった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ついに新区画、分譲開始!


 ピンデチに、G区画とH区画を追加しました。


 夢のマイホーム、

 チームの集合場所、

 夢は無限に広がります!


 最小区画150万プクナ~

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おじいさんが広告を読んでいると、イリューシュが話しかけてきた。


「ひろしさん、広告が気になりますか? 実はわたし、先日からピンデチに拠点を移して土地を見に来ていて……」


「そうなんですか。ゲームの世界でも土地が買えるんですね」


「そうなんです。わたしイークラトの町という所にチームの家があったのですが、チームをやめてしまって……」


「そうでしたか……。ところで良い場所は見つかりましたか?」


「はい、お陰様で。明日、G区画の土地を契約する予定なんです」


「それはそれは。イリューシュさん、家ができたら是非遊(ぜひ、あそ)びに行かせてください」


 すると、それを聞いていたアカネも言った。


「あたしも行きたい!」


 めぐもアカネに続いた。


「わたしも! でもイリューシュさん(うらや)ましいなぁ。家が買えるだけのプクナ持ってるなんて。わたしも家ほしいなぁ」


 イリューシュは笑顔で答えた。


「わたしは長い間このゲームをやっているのでプクナが余ってしまっているんです。ふふふ」


 するとイリューシュは少し考えて、みんなに話した。


「もし、みなさんが良ければなんですけど……、一緒にチームで住みませんか?」


「え! あたし住む!」

「わたしも住みたいです!」

「わたしもよろしいでしょうか」


 全員即答した。


「ふふふ、良かった。みなさんとだったら一緒に住みたいな、って思って。では明日ご案内しますね」


 それを聞いたアカネはガッツポーズをして言った。


「やったー! 新しいチームだ! To The Topのチームの家、なんか雰囲気悪くてさぁ。変なオッサンがセクハラ発言してくるし」


「「ははははは」」


 みんなはしばらくカフェでお喋りをすると、また明日会う約束をして、ログアウトしていった。



 おじいさんはVRグラスを外すと、すでに夜9時を過ぎていた。


「あぁ、もうこんな時間か。しまったしまった」


 おじいさんはテーブルの上にラップがかけられて置いてあった夕飯を見つけると、電子レンジに入れて温め始めた。


 「おばあさんは先に寝室で寝ているみたいだな……」


 ピピピピ!


 おじいさんは電子レンジで温めた夕飯を取り出すとテーブルについた。


「いただきます」


 そして夕食を食べはじめると、思わず笑顔になって今日の事を思い出した。


「あぁ、今日は楽しい一日だったなぁ」


 おじいさんは試合で壁を壊したことや、めぐやイリューシュの試合、カフェで楽しくお喋りした事を思い出した。


「あんなに緊張したり楽しく笑ったのは何年ぶりだろうか。明日も楽しみだなぁ」


 その時トイレに起きてきたおばあさんは、遠目にニヤニヤしているおじいさんを見つけて、少し気味悪がった。



 ー 翌朝 ー


 おじいさんは朝食を済ませて家と庭の掃除を終えると、軽トラで街へ出かけて、おばあさんに頼まれた物を買って帰ってきた。


「おばあさん、頼まれたものを買ってきたよ。あとは何かやることあるかい」


「大丈夫ですよ。ゲームやりたいんでしょう?」


「ははは。この歳になってすまんな」


「いいんですよ。あんな楽しそうにしてるんですもの」


 おじいさんは少し急いで荷物を片付けると、約束の時間より少し早かったが、ソファに座ってVRグラスをかけた。


 しかし……。視界には時計台が一瞬映ったが、すぐに真っ暗になってしまった。


「おや、どうしたんだろう」


 おじいさんは、もう一度VRグラスをかけてみたが、やはり真っ暗のままだった。


「あぁ。壊れてしまったのか……」


 おじいさんは、がっくりと肩を落とした。


「あなた、どうしたの?」


「ゲームが壊れてしまったみたいなんだ」


「あら……」


「あぁ、残念だなぁ……」


 するとおばあさんはタンスの引き出しを引っ張り出して、中からヘソクリを取り出した。


「あなた、これ」


「えっ、お金かい? おばあさん、いいよ。大丈夫だよ」


「大丈夫って言ったって、家の中に元気ない人が居るほうが(いや)よ」


「おばあさん……」


「はい、早く受け取って」


「……ありがとう」


 おじいさんはおばあさんからお金を受け取ると、深々と頭を下げて軽トラで街の家電量販店へ向かった。


 ◆


 おじいさんは家電量販店に到着すると、店員に詳しくゲームの話をしてザ・フラウのプリインストール版VR-GigBoxを購入した。


 そして安全運転をしながら急いで帰ってくると、おばあさんにお礼をしてVRグラスをかけ、少し申し訳無さそうにゲームの世界へ入っていった。


「はじめまして! わたしはあなたのパートナーです。わたしの名前を決めてね!」


「あ、節子さん」


「節子でいいかな?」


「あ、そうか、また最初からか」


 おじいさんは、最初にやったことを思い出して再び時計台にやってきた。


「あぁ、やっと来れた」


 するとおじいさんを探していたアカネがおじいさんを見つけた。


「あ、じぃちゃん! ……だよな?」


「あ、アカネさん!」


「じいちゃん、服違うし、フレンド切れちゃってるんだけど」


「あ、実はゲームが壊れて、もう一台買ったんです」


「ええっ!?」


「いやぁ……、すみません」


「え、あ、えっと、ちょっとそこで待っててよ。みんな呼んでくるから!」


 アカネはそう言うと、みんなを呼びに行った。


 ◆


 しばらくすると、アカネはイリューシュとめぐを連れてきた。


 イリューシュは少し戸惑っているおじいさんに挨拶をすると笑顔で尋ねた。


「ひろしさん、データは移行がまだなんですね」


「いこう?」


「ひろしさん、わたしと一緒に来てもらえますか? ふふふ」


 イリューシュはおじいさんとみんなを連れて、すぐ近くのデータセンターへ入った。


 そしてセンターに並んでいる端末の前に行き、タッチパネルを指さしながらおじいさんに説明を始めた。


「この端末で前のデータを引き継げるんです、右上の『データ移行』というところを押してください」


「わかりました」


 おじいさんは端末の「データ移行」を押した。


 すると画面には、「瞳の虹彩データを照合します。目を開いてお待ち下さい。VRグラスを外さないでください」と表示された。


「ええと、目を開いて……」


 おじいさんが目を開いていると端末から音声案内が流れた。


『瞳の虹彩の照合が終わりました。データを移行します』


 ……ポーン♪


『データ移行が完了しました。おかえりなさい、ひろしさん』


 おじいさんのデータは移行され、入賞バッジの付いた小豆色のジャージ姿になった。


「おじいちゃん、お帰り!」


 めぐがそう言うと、おじいさんは満面の笑顔になって答えた。


「ただいま。ははは」


 その様子を見ていたイリューシュはウンウンと(うなず)くと、みんなに言った。


「では、ひろしさんのデータも戻りましたし、昨日お話していたG区画へ行きましょうか」


「行こう!」

「はい!」

「よろしくおねがいします」


 こうしてみんなはイリューシュが購入した土地を見に行ったのだった。


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