希望と夢を唄う
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こちらは過去のお話です
少しでも遠くに……
逃げなきゃ……
そのような言葉が林の生い茂る雪原を慌ただく懸命に走る少年の頭の中を埋めつくしている。
その鬱陶しさにさらに足を速める。
左足が滑ってしまい少年は一面雪で覆われた大地にうつ伏せに倒れてしまう。
肩まで伸びた赤髪や着ていた服はボロボロになり体の至る所に切り傷がある。
彼にはもう再び走り出す気力などもう残ってはいなかった。
「はぁ……はぁ………はぁ…………!」
彼は荒い呼吸を繰り返しながら、仰向けに体を動かすと涙を流しそうになるのを隠すように、右腕で目元を覆った。
「―――――――死ぬ、のか」
徐々に意識が薄れていく
最初は痛みや寒さなどを感じていたのに今はもう感じられない。
死が近づいてくる。
重くなった瞼を閉じる。
そして、少年は意識を手放した。
❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆❆
「うーさぶさぶー」
「もう少し速く歩きなさいよダリア」
「うぇー、もういっぱい歩いたじゃん休憩しよーよー!」
「歩いてるだけでしょ!頑張りなさいよ!」
「いや、さっき不審動きをしていた魔術師たちの殲滅任務から帰ってきてすぐこの調査任務じゃんか!少しは休ませて欲しいよ!」
「あとは帰るだけでしょ!もう少しで休めるんだから………ん?」
「どしたのーセレス?」
前を歩いていたセレスが急に足を止めたのを見てダリアと呼ばれた青髪の女性が疑問に思い、足を止めて問いかけるが返事はない。
すると、セレスは赤髪を靡かせながら地面にしゃがみこんだ。ダリアは何かあったのではと足速に近づく。
「どーしたのセレスぅー」
セレスに追いついたダリアが背中越しにもう一度問いかける。するとセレスは体をダリアの方に回転させて両腕に抱えているものを見せた。
「見てダリア」
「これは……子供?」
見る限り7歳ぐらいだろうか。
体のあちこちに切り傷のようなものが見られる、真っ赤な赤髪が印象的な少年だった。
「そうよ。……にしてもどうしてこんな場所に子供が」
「恐らく………」
「えぇ。あの町にいた子供でしょうね」
「確か、連中が襲撃したんだろー?」
「だから、逃げてきたんでしょう。恐らくあの町は、もう壊滅状態でしょう」
赤髪の少年をセレスがしばらく抱えていると何かに気づいたかのようにダリアは顔を引き吊らせてセレスの顔を見た。
「ねぇ、セレス……もしかしてその子連れて帰るとか言わないよね?」
「もちろん連れて帰るわ。今日は珍しく冴えてるわね、なら私が次に言う事も分かるでしょ?」
「私にこの子供をおぶらせて帰るつもりー!?」
「そうよ。そういう訳でよろしくね?ダリア」
「イヤーーー!もう足が持たないよーー!」
ダリアが悲鳴のような叫びを上げているのを後目に、セレスは子供を持ったまま立ち上がるとダリアに立つように促し、ダリアに子供を持たせると、また帰路へ歩き出した。
「全くセレスは人使いが荒いなー。てか、なんて言って検問を通るのさー?」
「私の子供………かしらね♪」
「ふーん、私が知る限りセレスは付き合った事があったなんて聞いたことはないしー、今の私みたいに人使いが荒いからー、検問の人に疑われるんじゃないか……イデっ!……イデデデ!……ごめんなさい!許して下さいセレス様ー!!」
耳を引っ張りながらセレスは笑顔でダリアに言う。
しかし、セレスの目は微塵も笑ってなどいない
「次同じような事言ったら、これでは済まないからね?」
恐ろしい剣幕のセレスの顔を見て、反射的に謝罪をする。
「はい、すみません。ちょっと調子に乗りました。是非おぶらせて下さい。」
そうダリアが言うと、「よろしい」といいながらダリアの耳から手を離した。
そしてダリアがおぶるのを見届けてからセレスは再び帰路へと足を向ける。
セレスの先を進む背中を見つめながら、ダリアはだから誰も貰い手がいないんだよと心の中で呟くのだった
2~3日と不定期ですが更新は致します。
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