偽物文学女子と俺の青春物語
─── 今でもあの姿を忘れられない
「眼鏡」「黒髪」「三つ編み」「地味」と
まさしく文学女子と呼ぶべきその人を……
とある日の早朝、 その人は牛乳配達をしていた。
その横顔は美しく、高めの鼻梁も、薄ピンクの唇も、彫刻すればどこかの外国のコインになりそうなほど精巧な見た目だった。
何の繋がりもなく、話したことすらないその人
分かることは、朝早く牛乳配達で近所に現れる。
それだけだった。
今しかないないと思い、勇気を持って話しかけた。
「いつも、ご苦労様です」って
その人は、ニコリと微笑んで会釈をした。
近づいて初めて分かったが、とても身長が高い。
いつも遠くか見ていたから気づかなかった。
──── そして、もう一つ
この人は、おねぇでした。
背も高いが、肩幅もすごい……
さっきまで夢を見ていた気分だ。
冷や汗が止まらない。
これは悪夢か?と今が夢であって欲しいと願った。
─── 俺は、 おねぇに恋していたのだ。
そんな時、「ちょっと、牛乳でも飲みませんか?」って、お茶会、いや、最後の晩餐に招待された。
お断りする前に、マルタを運ぶ大工職人のように、肩に担がれ、おねぇの自宅に連れ込まれた。
想像していた物とは似ても似つかない程のボロアパート
よく考えれば分かる、想像通りのお屋敷に住んでいたら、牛乳配達なんてしていないと……
やはり、俺の頭はお花畑状態だったのだろう。
「私、実は文学女子系の忍者なのよ」
もう、何を言っているのか分からない。
その他にも、この部屋には、
必殺技は休みなし!となぜか自慢げに話す
ブラック企業勤めのサラリーマン
ドラゴンと名付けられた金魚
片手におにぎりを持った小太りの農民
大魔王になりたいと言うご老人
名探偵を雇って不倫調査中と言う自称聖女
情報量が多すぎて気絶しそうな程、濃いメンツがその場にいた。
「7人揃った事だし、このブラウン管を使って異世界へ行くわ! 皆んな準備は大丈夫かしら?」
周りの変人たちは、うんっと頷く。
待て、金魚がカウントされてるぞ…
もはや、 この状況について、考えることをやめた。
『「行きましょう! 異世界へ!!」』
スクール水着を来た俺は、
ブラウン管TVの中へと姿を消した。
─── その後のことは誰も知らない。
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