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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
98/106

孤闘


 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

 side:レイク


 

 「お前がボスか! 喰らえ! ≪せ――」



 ――言葉を言い切る前に男は絶命しました。

 その体をポリゴンに変えて、辺りは静まりかえります。



 「落ち着きましたか……」



 私は振り下ろした斧を戻すと、改めて周りを見渡しました。

 スケルトンの残骸やゾンビの亡骸、半分になった人魂など多くの戦いを物語る跡が残っています。


 

 「残りはどうなっていますか?」



 『確認。スケルトン、ゾンビ、リビングアーマーの複数体が交戦中。推定3697人。ナビゲートを開始しますか?』



 「お願いします」



 告げられた無慈悲な数に、私は思わず溜息を吐いてしまいます。

 3697人。少なくともそれほどのプレイヤーがここに居るのでしょう。


 運営の端末だと思われる王冠を被った骸骨は、私の鎧の中に収納しています。安全ですし邪魔にもならないので、名案だったと自負しています。


 骸骨にナビゲートされた場所に走って向かいますが、かなり遠いようです。

 骸骨が分かるのはスケルトンやゾンビなどの位置だけのようなので、戦いが終わる前に辿り着く必要があります。


 イベントが始まって1時間ほど経ったのでしょうか。

 正確な時間は分かりませんが、それほど経ってはいません。


 しかし、私は早くも消耗していました。

 1時間といってもここに来るプレイヤーは大勢で、常に一体多数を強いられます。


 それに私は範囲攻撃というものを持ちません。個に対して負けるつもりはないですが、囲まれればダメージも受けます。

 

 これがマカさんやサクヤさんなら魔法などで対処できたのかもしれません。日頃、どれだけ頼っていたのかが分かります。しばらくの課題です。


 走っているとそろそろ交戦地点です。

 武器同士の戦闘音が聞こえてきます。



 「おい! 新手だぞ!」



 私に気づいた盗賊のような男が叫びます。

 スケルトンの相手をしていた剣士がこちらを向き、剣を構えて警戒しているようです。


 装備を見る限り、先ほど相手をしたプレイヤーより弱いようです。人数も3人ですし、早く決着をつけてしまっても問題ないでしょう。



 「ファイヤーア――」



 「――≪脆脚≫」



 魔法を使おうとした後衛の少女の背後に回り込み、武技スキルを発動させました。私が狙ったのは少女の脚です。

 衝撃に耐えられなかった少女は体勢を崩しました。


 私は素早く斧を振り下ろします。

 隙だらけの少女は次の瞬間にポリゴンと化しました。


 この≪脆脚≫は次に脚で与えるダメージを10%増加させるという武技スキルです。クールタイムも短く使い勝手のいいスキルです。


 

 「くっ! コイツ!」



 盗賊のような男が悔しそうに言います。

 そして、持っていたナイフを構えてこちらに近づいてきました。


 私は斧を横凪します。

 フェイントも何も無い単純な攻撃でしたが、盗賊のような男は反応できなかったようで斧を受けました。


 盗賊のような男はポリゴンと化します。

 


 「≪加速≫!!」



 それを見ていた剣士のような男は武技スキルを発動しました。

 私の方へ素早く移動してきます。


 私はその動きに合うように斧を振りました。

 剣士のような男は避けることができずにポリゴンと化しました。


 この≪加速≫という武技スキルは中々扱いが難しいスキルです。発動するととても速く動けますが、その方向は直線で曲がることが出来ません。


 気をつけて使わないと今のようにカウンターを合わせられてしまいます。

 私も持っている武技スキルなので気をつけるとしましょう。


 

 「ナビゲートをお願いします」



 『確認。表示します』



 次の交戦地点が表示されました。

 距離はかなり近いようです。


 戦っているのはスケルトンとゾンビのようです。かなり数がいますが、現在進行形で数を減らしています。減るペースから考えて多くのプレイヤーがそこにいるのでしょう。


 私は走り出しました。

 

 移動しているとスケルトンやゾンビの集団を見かけます。この魔物たちは私の味方です。正確にはイベント中の私の味方ですが、完全に破壊されなければ何度でも蘇る彼らは心強い味方です。


 こうして一人で戦っていると集団の強さというのを改めて感じます。これ以上スキルを無駄に取る気はありませんでしたが、イベントが終わったあとに何か取得してもいいかもしれません。


 そう考えている内にナビゲートの場所に着きました。


 丁度戦っていたスケルトンとゾンビが倒されたタイミングでした。

 装備を見る限り、かなり上位のプレイヤーのようです。


 見覚えのあるプレイヤーもいます。あの森で戦ったプレイヤーの一人です。私の鎧に大きな傷をつけたので覚えています。

 

 

 「ホーリーカット!」



 その少女が魔法を放ちました。

 とても速い攻撃です。避けようと思えば避けれますが、私は避けません。


 鎧に魔法が当たります。しかし、光の線は消え、私にダメージはありません。

 《聖無効》。このスキルによって私にその魔法は効かなかったのでしょう。


 

 「え! アンデットなのに!?」



 少女とその仲間たちはとても驚いているようです。

 確かにアンデットには聖属性がよく効くでしょう。しかし、私にその弱点は完全にありません。


 そんなことより相手が完全に困惑している隙を突くとしましょう。

 

 

 「≪加速≫」


 

 私の身体が真っ直ぐ移動します。

 その速度は通常の1.5倍ほどでしょうか。


 完全に制御するのは難しいですが、何度か使っている内に慣れました。

 私は前衛の槍を持ったプレイヤーに近づきます。



 「なっ――」



 ――斧を振り下ろしました。

 流石に一撃で倒せる相手ではなかったようで、プレイヤーは衝撃で後ろに大きく飛んで行きました。


  

 「ハイヒール! エリアリジェネレーション!」



 後ろにいる少女が魔法を掛け続けているようです。

 森で戦った時も同じでしたが、後衛で回復をしている魔法使いを先に倒す必要があります。


 しかし、それをさせてくれるほど甘くはないようです。



 「≪加速≫!」



 剣を持ったプレイヤーが切り掛かってきます。

 速度はかなりのもので咄嗟に後ろに下がりました。


 安全を取った行動でしたが、少し後悔しています。

 危険を冒しても1人倒しておくべきでした。


 数の不利を少しでも速く覆さなければ消耗するのは私です。

 


 「アイスボール!」



 「ファイヤーウェーブ!」



 「クリエイトゴーレム!」



 ここぞとばかりに後衛のプレイヤーが魔法を撃ってきました。

 アイスボールを落ち着いて避け、範囲の広いファイヤウェーブは受けます。


 私は《炎無効》を持っているため火属性の魔法は効きません。

 しかし、クリエイトゴーレムは初めて見る魔法です。


 魔法を唱えたプレイヤーの前の地面が盛り上がり、形を成していきます。大きさは人のおよそ2倍でしょうか。ゴツゴツとした岩で出来た武骨なゴーレムが立っています。


 

 「……」



 ゴーレムは無言のままこちらに向かってきました。

 脚はとても遅いですが、重量はありそうなので攻撃を受ければダメージを負ってしまうでしょう。


 冷静にゴーレムの攻撃を見極めます。

 腕を横薙ぎにした雑な攻撃を屈んで避け、斧を振り上げました。


 見た目とは裏腹に脆いようで、私の一撃でゴーレムは地面に還りました。

 


 「≪必殺≫」



 「!?」



 首を切られました。


 いつの間にか背後に回られていたようです。

 完全な不意打ちをされたため、驚いて対応が遅れてしまいました。



 「≪上段回蹴≫」



 私は振り向いて武技スキルを発動させます。

 このスキルは蹴りによるノックバックを大きくする効果を持ちます。


 危険なスキルを持つプレイヤーを一先ず引き離す狙いで放った蹴りは、見事に私を攻撃したプレイヤーに命中したようです。

 プレイヤーは大きく後ろに吹き飛びました。


 見るとそのプレイヤーは少女でした。

 一体どうやって私の背後に回ったのか分かりませんが、最大限警戒する必要があります。


 

 「リリっ! ヒール!」



 後衛の少女が回復をしたようです。

 とても厄介です。私には回復手段がありません。


 インベントリ内にはありますが戦闘中に使う余裕はありせんし、その余裕があるなら相手を倒します。

 私のHPはまだ9割あります。


 逆に言えば1割削られたということです。


 今さらスケルトンやゾンビに応援を頼んでも遅いですし、これは切り札を使うしかないかもしれません。

 

 

 「≪戦楽炎斧≫」



 私の身体が白い炎に覆われます。

 鎧だけでなく斧にも白い炎は移りました。


 

 「え! なにそれ!?」



 「ばけもんじゃねぇかッ!」



 「え、エリアリジェネレーション! シールド!」



 私の変わりようにプレイヤーたちは驚きながら警戒したようですが、もう遅いです。

 私は切り札である武技スキルを発動させました。



 「≪頭冠魔動≫」



 次の瞬間、私は後衛の少女の()()に居ました。


 

 「え……」



 後衛の少女は私の炎の熱気か何かで気づいたのでしょうか。

 それとも単に消えた私に戸惑っただけかもしれません。


 少女の呟きを聞き流しながら、私は斧を振り下ろしました。

 


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