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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
97/106

動き


 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

 side:マカ



 「とかげ?」


 

 それはどこからどう見てもトカゲだった。

 体表は黄緑でしっぽが長い。四足でしっかりと地面を踏み締めていた。


 かわいいとは思えないわね。

 爬虫類は苦手というわけじゃないけど、好きでもない。

 

 ウーパールーパーはかわいいと思うけどね。

 あれ……ウーパールーパーって爬虫類? 両生類だったかしら?


 

 「まあ、一応トカゲだ。私はゼリア。君はプレイヤーなのか?」



 爬虫類特有のクリクリした目を瞬きさせながら、ゼリアと名乗るトカゲは質問してきた。

 やっぱりプレイヤーみたいね。


 私たち以外にも魔物プレイヤーがいたことには少し驚いたけど、同時に嬉しくもある。

 まあ、まだ数は少ないみたいだけど。



 「プレイヤーよ。マカっていうの。見た通りスライムをやってるわ」



 「見た通りではないような気もするが……」



 言われると確かに自分でも、もう純粋なスライムではないような気もする。

 けど、スライムはスライム。そこに変わりはないの。だから気にしないことにするわ。



 「そこはいいのよ。それで、あっちの熊さんは?」


 

 未だに、私の触手で身動きが取れずにいる熊さんを見ながら聞いた。



 「彼もプレイヤーだ。サイという。掲示板で連絡を取って合流したんだが、直後に目印の大木が消えてしまった。何か知らないか?」



 あ、それ間違いなく私ね。

 ていうか、掲示板で知り合ったのね。イベントで一杯一杯だったからすっかり確認するのを忘れてたわ。

 

 

 「それは私のせいね。まあそんなことは置いといて、イベントの話をしましょ」



 「お、置いといて……」



 「イベントとは関係ないからいいのよ」



 「そ、そうか」



 ゼリアは明らかに動揺しているけど、気にしない方がいいわね。

 この話はこのまま流しましょうか。



 「い、いやおかしいだろ! そんなことが――」



 『――もしもし、マカさん聞こえてますか?』

 


 サイというらしい熊が話し出した瞬間、レイクさんの声が聞こえた。

 けど、サイは話し続けているしゼリアの表情に変化もない。


 私にしか聞こえてないみたいね。

 とりあえず、サイを無視してレイクに応えることにした。

 


 「レイクなの?」



 『はい。私です。イベントについて伝えたいことがあります。時間がないので手短に言いますね。まず――――というようです。詳しくは隣のGMに聞けば、大抵のことは答えてくれると思います』


 

 「ちょっとレイク」



 『なんでしょう?』



 「GMって何? そんなのいないわよ」


 

 『……おかしいですね。GMを介して通信してるんじゃないんですか?』


 

 「私にだけ直接聞こえてるみたい」



 『……まあいいでしょう。とにかく時間がないので注意してください』



 レイクはそう言うと通信を切った。

 随分と焦ってるみたいね。



 「さっきから一人で何を話しているんだ?」


 

 不審そうな表情でゼリアが聞いてくる。

 サイは黙っちゃったみたいね。

 確かに側から見たらかなり危ない人に見えるわね。



 「私の友達から連絡があっただけよ。ついでだし、あなたたちにも教えてあげる」



 私はレイクからの話をゼリアに伝えた。

 プレイヤーが攻めてくること、時間が残り2時間もないことを。



 「な、なに!? 絶体絶命じゃないか!」


 

 予想した通りの反応のゼリア。

 顔はトカゲなのに驚きで溢れてるのがよく分かる。

 不思議なものね。


 

 「あぁ……終わりだ」



 対して、サイのほうはもう諦めているよう。

 熊の表情が暗く爛れている。

 この人は何で魔物になったのかしらね。本当に不思議。



 「とりあえず準備しなきゃいけないわ」


 

 そんな二人の面倒を私が見なきゃいけないなんて。

 不運ね私。と思った。


 けど、これでも数少ない魔物プレイヤーという仲間なのだから、協力し合わないといけないのよね。



 「私は周辺のスライムを吸収してくるわ。二人はプレイヤーが出てきそうな場所を探しながらGMっぽいのを見つけて」



 「GM? ま、まあ分かった」



 「サイの面倒はゼリアに任せるわ」

 

 

 「ああ、分かった」



 サイのことは押し付け、私は湿林の奥へ歩く。

 ゼリアたちはゼリアたちで歩き回るでしょうし、もしかしたら私がGMを見つけるかもしれないものね。


 途中で見つけたスライムはちゃんと吸収しておく。

 使えるものは少しでも増やしておかないと。


 いつプレイヤーが来るのか正確な時間は分からないけど、戦いになるのは確定してる。

 よく分からないけれど強そうな種族に進化したことだし、簡単に負けることはないはず。


 どちらかといえば心配なのはゼリアたちね。

 まともに戦えるのかしら。


 サイのいかにもな様子を思い出し、さらに不安になる。


 

 「ん?」



 なにかいる。

 ゼリアたちを発見した時と同じ感覚。


 また新しい魔物プレイヤーかしら?

 

 新規が多いのはいいことだけど、なんで私のところにくるのかしら。

 サクヤとレイクのところにも来てると思いたいわね。


 

 「ファイヤアロー!!」



 矢の形をした炎が私目掛けて飛んでくる。

 声のした方に目をやると、3人の人が立っていた。


 あら?

 普通のプレイヤー?


 




 ☆☆☆☆☆



 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

 side:ロイ

 


 湿林エリアのエリアボスを発見。

 

 この情報はイベントが開始してすぐに出回ったらしい。

 ランキング上位者たちが話し合いをしている間、その他の多くのプレイヤーが挑み、敗れ、情報を取っていた。


 俺が湿林エリアへ行くころには、エリアボスのほぼ全てが既に暴かれていた状態だった。


 

 「にしてもデタラメだな。こいつ」


 

 「な」


 

 エリアボス情報 " 湿林 " を見たカムイは顔を顰めながらそう言う。

 無理もない。


 顔には出さなかったが俺も同じような心情だ。

 

 なにが「湿林エリアは最も簡単だろう」だ?

 いや、ブランも簡単とは言ってなかったか。

 しかし優先度は最も低い。


 なぜなら、このエリアに割り当てられた上位プレイヤーは、俺たちのみだからだ。

 


 「物理、魔法のどちらも全く効かない? 冗談だろ」



 先駆者の書き込みを見ながら、俺は思わずそう呟いた。

 エリアボスは巨大なスライムのようで、湿林の奥にいるらしい。エリアボス以外に目立ったモンスターは居ないみたいなので、エリアボスに集中できるのは良い。


 

 「スライムねえ……」



 カムイはどうしても意識してしまうようだが、それも無理は無い。

 寧ろ、()()()のことを思い出さないほうが無理だろう。


 

 「どっちにしろこっちのエリアボスも強そうだし、応援は呼んでおいた方が良さそうだな」



 「そうだな」



 俺はブランにメッセージを送った。

 上位プレイヤーの殆どは墓地と洞窟に行っている。湿林に居るのは俺たちのパーティのみだ。

 

 それだけ俺たちのことを評価してくれているということだが、今回ばかりはそれに応えることは出来なさそうだ。

 明らかに俺たちで何とかなる相手じゃない。


 俺、カムイ、クッキー、ミノ。

 この4人のパーティはゲームを始めてからずっと一緒に続けてきたメンツだ。


 全員リアルでも知り合いで、他のマルチゲームも一緒にやる仲だ。

 俺が前衛の剣士、カムイがサポートの斥候、クッキーが後衛の魔法使い、ミノが回復兼タンクの盾使いだ。


 バランスは良いと思う。それぞれが自分の役割をちゃんと分かってるし、このゲームの中でもかなり上位のパーティだと自負している。



 「ロイー、メルちゃん達呼ぼうよー」


 

 「おい、クッキー。お前がただ好きなだけだろそれ」



 俺とロイの後ろでクッキーとミノが話している。

 クッキーはメルのことを気に入っているようだが、こいつは誰にでもこんな感じなので当てにならない。ちなみに男だ。


 ミノはかなり真面目なタイプだ。ゲームでもその真面目さは変わらず、NPCに優しかったりPKをかなり嫌う。

 

 

 「……ッ、みんな何か来るぞ!」



 カムイが慌てて声を出した。

 何かを察知したんだろう。


 ミノと俺が、カムイとクッキーを守るように前に出る。

 ミノは盾を構えて警戒している。


 何が来るのか。


 俺は警戒しながらも心の中でそうつぶやいた。

 

 ……ザ……ザ……ザザ……。


 微かに音が聞こえる。

 何の音だ?


 ノイズのような小さな音の正体が分からず思案していると、その音がどんどん大きくなっていった。

 次第に大きくなる音に耳を澄ませ、その正体に思い当たる。



 「おい、まさか……」



 「これヤッベェぞ……!」



 「逃げなきゃッ!」



 ザアアァァッッ!!!!


 林の奥から見えたのは大量の水。

 木々を押し倒しながらこちらに向かって進んでくる津波だった。


 そして、もはや逃げることは出来ず。

 俺たちはその渦に呑まれていった。


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