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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
92/106

それぞれ

お久しぶりです。

 

 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

 side:レイク



 「――とりあえず、3時間後には始まるので準備を怠らないよう気をつけて下さい。私はマカさんにも言ってきます。では」


 

 私はサクヤさんへ警告し、通信を終えました。

 サクヤさんは突然のことに戸惑っていたようでしたが、いまは一刻を争う状況のため、詳しい説明ができないことは仕方ありません。


 しかし、あのサクヤさんのことです。

 自力で何とかしてくれるでしょう。


 さて。



 私が降り立った場所は墓地でした。


 周りには、誰のものかも分からない墓が溢れており、時折り人魂も飛んでいました。

 幸い、私は恐怖への耐性が高いですが、苦手な人にとっては辛かったでしょう。


 私達……サクヤさんとマカさんと一緒に参加したイベントですが、目が覚めれば墓地には私一人。

 

 少し混乱しましたが、行くべき場所はすぐに分かりました。

 なぜなら、人魂たちが私を導くように動いていたからです。


 私はその後を追いかけました。

 かなり歩きました。


 同じような墓と枯れた木が並ぶ墓地を、ただただ歩きました。

 歩くにつれ、並行する人魂の数も増えていたので、私が間違った方向へ進んでいないことは分かりました。


 30分くらい歩いたでしょうか。


 すると、簡素な墓から豪華な装飾を施された墓へと、景色が次第に変わりました。

 そして、その中心に置かれている棺を見つけました。


 見れば、人魂はその棺に吸い込まれるように消えています。

 

 当然、私は棺を開け、中を確認しました。


 棺の中には、王冠をつけた一つの頭蓋骨がありました。

 《鑑定》などを使わなくとも、その禍々しさが伝わってきました。


 頭蓋骨本体もさる事ながら、特に頭に付いている王冠から暗く黒いオーラが噴き出しており、何らかの呪いや怨念が確実に取り憑いているでしょう。


 明らかに触れてはいけない物です。

 いつもの私なら、ここで頭蓋骨を触ることをやめていました。

 

 しかし、私には最近獲得したスキルがあります。


 《清浄》です。


 このスキルには状態異常を解除する能力があります。

 この頭蓋骨に《清浄》をすることは効果的なはずです。


 私は頭蓋骨に触れ、《清浄》を発動しました。

 

 すると、瞬く間に頭蓋骨から伝わる禍々しさが霧散し、その王冠に輝きが戻っていきます。

 これは成功でしょうか。


 私はそう思いました。

 

 そして、それは間違いではありませんでした。

 

 『侵攻開始まで残り3時間32分。防衛情報は未確認。緊急収集を実行可能です』

 

 頭蓋骨の口が動き、そう言葉を発したのです。

 当然驚きましたが、私はすぐに言葉の意味を理解しました。


 侵攻とは、恐らく人種プレイヤーたちのイベント開始のことです。

 防衛……つまり私達は守る側、人種プレイヤーたちの敵になるということです。

 

 この頭蓋骨は私達への救済措置、ガイドブックのような存在なのでしょう。

 私は、キャラメイクの時にいたNPCと同じような存在だと推測しました。

 

 そして、それならばこちらからの質問にも応答するはずです。

 

 私はまず、サクヤさんと通信ができないか尋ねました。

 

 推測通り応答がありました。

 頭蓋骨の答えはYESでした。


 これで完全な孤立は避けられました。


 次に私が質問したことは、私達の状況についてです。

 大まかに、なぜ別々なのか、なぜ人種プレイヤーの敵なのか、何をすれば良いのかを質問しました。


 答えは返ってきました。

 しかし、その返答はあまり意味のあるものではありませんでした。

 

 私たちが別々である理由は、このイベントが元々そういうものであるため。

 人種プレイヤーが敵である理由は、このイベントが元々そういうものであるため。

 何をすれば良いのかというと、人種プレイヤーからの侵攻を4日間受け止めること。


 私の質問に、頭蓋骨はそう答えたのです。

 

 分かったことは4日間の防衛のみで、それ以外の具体的なことは何一つわかりません。



 さて、どうしましょうか。






 ☆☆☆☆☆





 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

 side:ルカ




 「ラティ……ついにきたよ」


 

 『ルカ。そうだね』



 森エリアの少し奥、ちょうど街からは見えない場所で、私とラティはイベントの開始を待っていた。

 

 約2週間。

 私とラティは全力でレベリングと準備を行った。


 クエストのクリア条件は、このイベントでサクヤを1位にしないこと。

 それを達成するためには、サクヤと戦うこともあるかもしれない。


 いまの私たちで……。

 いや、いまの私たちなら勝てる。十分勝機はある。


 

 『ルカ。エリアはどこにする?』



 山村、墓地、湿林、洞窟の4つのエリア。

 私たちとの相性を考えると、最もいいのは山村か湿林エリアのように思える。


 私はラティにそう話した。

 私よりも賢いラティならもっと良い意見があるのかなと思った。



 「湿林か山村だけど、どっちがいいかな」



 『難しい。ルカに決めてほしい』



 しかし、どうやら私に従うみたい。 

 さてどっちがいいかな?






 ☆☆☆☆☆





 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

 side:ガーランド

 

 


 なんでこんなことに。

 俺はそう思うと、心の中で大きな溜息を吐いた。


 すでにイベントは開始されており、フレンド達は皆それぞれイベントエリアへと行っている。

 生産プレイヤーの何人かは街に残って武器やら道具やらを売っていたりもするが、俺みたいなやつは……まず居ないだろう。


 俺は現在、街に滞在しながら、自分でもよくわからない状況に立たされている。

 場所は、とある庶民的なレストラン。


 なぜイベントに参加せず、こんなところにいるのか。

 ……本当になぜだろうか、俺が一番聞きたい。

 

 そんな現状を再確認するため、俺はさりげなく伏せていた顔を上げた。


 しっかりと前を見れば、そこにいるのはバラザ師範。

 そして右を見れば、ガッツリと女の格好をした奇怪な男。

 左を見れば、顔や体におかしなペイントを施した少女。


 側からみれば、ヤバい、としか形容できない様。

 あのバラザ師範がまともに見える時点で……いやバラザ師範もまともではない。


 なぜなら、バラザ師範の服は今日も汚いから。

 一瞬でもまともだと思ったのは、俺の感覚が麻痺していたからだろうか。

 ……否定できない。


 

 「で、何のようかしらー?」



 大袈裟な素振りをしながらそう言う女装男。

 見ていて色々と厳しい。


 俺の口調はドワーフっぽく職人っぽく、出来るだけ厳粛なものを目指している。

 が、こういうおかしな奴の相手はしたくない。そのためだったら口調を崩すことも厭わないほどに。

 

 

 「まあそんな急ぐな。久しぶりに飯でも食おうぜ」


 

 久しぶり、と言っているが俺は初対面。

 旧知の中なら尚更、なぜ俺を連れてくる必要があったのか分からない。


 

 「あららー? あんたが奢りー?」



 「そうだ」



 「珍しいこともあるものねぇ。なら遠慮せずぅー」


 

 言われてみれば、確かに珍しいことだ。

 俺が知る限り、バラザ師範は自身の懐が痛むようなことは絶対にしない。



 「ほら、イズもなんか頼めよ。ガーランドも今日は特別だ」



 「は、はい」


 

 急に振られて驚いた。

 イズと呼ばれた少女は無言で頷いている。


 師範の奢り……か。

 こんなこと、これから先に何度あるか分からない。


 そんな貴重な機会を逃すのは勿体ないだろう。

 師範も特別だと言っているし、遠慮はいらないな。


 俺は自分の頼みたいものを頼みたい量だけ頼んだ。


 すると数分も掛からずに食事が出てきた。 

 元々信じられないくらい早いが、今日はイベント初日だ。プレイヤーが全くいない分、早いのだろう。


 食事が出された途端、イズと呼ばれた少女はすぐに食べ始めた。

 そんなにお腹が空いていたのか。


 バラザ師範と女装男も食べ始めている。

 俺も慌てて食べ始めた。


 普通にうまい。


 

 「さぁて、本題を早く言ってちょうだいバラザー?」


 

 料理に手をつけて数分後。

 女装男がそう言った。


 たしかに早く言ってほしい。

 俺も何のために来ているのか分からないからな。


 

 「少し頼みがあるんだけどなぁ」



 勿体ぶった口調の師範。

 そんなに言いづらいことなのか。


 

 「早くいいなさいよー」



 食事を口に運びながら話す女装男。

 イズと呼ばれた少女は、興味なさげに黙々と食べ続けている。



 「少し遠出しようと思っててなぁ」



 遠出? 

 この街の外に行くのだろうか。


 一応、バラザ師範はNPC。

 街の外に出れるとは考えづらいのだが。


 そう疑問に思ったが、バラザ師範の言葉は続く。



 「重ね重ね頼み事になるんだが、エリーかイズ。どっちかガーランドの面倒を見てくれねぇか?」



 「え?」



 俺は食事を進めていた手を止めて、その場でフリーズした。


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