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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
89/106

作戦会議


 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

  side:ブラン


 

 蒼影の麒麟。

 その本部である建物。


 今では、ほぼ全てのプレイヤーが知っている場所である。


 そして、そんな場所にかつてない程の数のプレイヤーが集まっていた。

 そのどれもが良さげな装備で固めており、ある程度知名度がある者達だ。


 いつもの席に座っているブランは、周りを軽く見渡す。

 隣にはサブマスであるルイズが座っている。


 ここまではいつも通りの光景。

 しかし、そのあとに座っているのは見慣れたクランメンバーではない。


 ロイ、エリカ、ノウズ、そして名だたる上位プレイヤー達が座っているのだ。

 

 この場を設けたのはもちろんブラン。

 内容はイベントについて。


 もうイベントは開始されているにも関わらず、上位プレイヤーがほぼ全員参加しているのには理由がある。


 それは。



 「今回、この場に参加してくれたことに礼を言う。では早速本題に入ろうと思う。多くの者が既に説明を見たと思うが……このイベントはチーム戦だ。プレイヤー全てが協力しなければならない。そのため、パワーバランスを崩しかねない君達を均等に分ける。ここまでは理解してくれたか?」



 ブランは周りの反応を伺う。

 皆、ブランの言葉に無言で頷いているようだ。


 ブランはそれを確認し、再び口を開く。


 

 「ここで重要なのは、どう分けるか、の一点だ。それをこの場で話し合いたいと思う」



 「どう分けるかって、具体的には?」



 プレイヤーの一人が質問する。

 たしかに気になるところだろう。


 

 「説明を見たところ、今回のイベントは4つのエリアの開放。それもイベント限定のエリアだ。それぞれ、山村、墓地、湿林、洞窟があるらしい。出来るだけ、各エリアと相性のいいプレイヤーを配置したい」



 「なるほどな」



 感心した様子のプレイヤー。

 他のプレイヤーも同じような感想を抱いたようだ。

 ブランは話を続ける。



 「親切なことに各エリアに出現する魔物まで説明されていた。まず、山村は狼」



 狼、という言葉を聞いた瞬間、多くのプレイヤーが驚いたように目を見開いた。

 そして、大きく声を張り上げる。

 


 「おい! 俺が見た説明にはそんなこと書いてなかったぞ!」



 「お、俺もだ!」



 「……デタラメか?」



 一人のプレイヤーがそう叫ぶと、それはあっという間に広がる。

 隣のルイズがその光景を少し不安そうに見ていた。


 普段は堂々している男だが、意外とこの場に緊張しているのかもしれない。

 そんなルイズの様子を見ながら、ブランは場を落ちつけるべく発言した。

 

 

 「デタラメではない。事実だ。これらの情報はクラン特典として、我ら " 蒼影の麒麟 " には説明されている」



 その言葉に、その場にいる全てのプレイヤーが再び目を見開く。

 クラン特典。たしかにあり得る。


 そして同時に、その特典が大きな情報を持つことも分かる。

 出現する魔物を知っているだけでも、知らない者との差は大きく、それ以外の情報があれば更に大きなアドバンテージになるだろう。


 それを知ることができる。

 多くのプレイヤーがこの話し合いについて、認識を改めた。


 

 「話を続けよう」



 ブランは周りの反応から、話が思惑通り進んでいると確信する。

 




 ☆☆☆☆☆

 




 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

  side:ロイ


 


 「話を続けよう」



 ブランの衝撃発言を聞いた俺はすかさず、隣にいるカムイへと視線を向ける。

 真偽を確かめるためだ。


 カムイと目が合う。

 直ぐに俺の意を汲み取ったカムイは、静かに首を横に振った。


 どうやら、ブランの話は本当のようだ。

 

 ちょっとした集まり程度にしか思っていなかった話し合いだが、ここからは集中する必要があるだろう。

 

 

 「山村には狼、墓地には幽霊、湿林にはスライム、洞窟には蝙蝠が出現する。そして、それぞれ全てのエリアボスを倒すことでイベントボスへ挑戦することができる」



 狼、幽霊、スライム。

 この三つの魔物を聞いた瞬間、俺の頭には、とある光景が浮かぶ。


 それは約2週間前、草原エリアのエリアボスを討伐しに行く道中でのことだ。

 黒狼、白騎士、歪渦、と今ではそれぞれ掲示板などでそう呼ばれている魔物達に、上位プレイヤーで構成されたレイドが呆気なく壊滅させられた……。


 特にあの黒狼……異常なスピードとダメージで俺はもちろんの事だが、その場にいたプレイヤーの多くが数分で皆殺しにされた。


 あの時の無念はまだ記憶に新しい。


 あの時のことを思い出しているのは俺だけでないようで、周りを見れば多くのプレイヤーが皆目を伏せている。


 今回でリベンジを果たす!


 俺は心中でそう決心し、無意識に伏せていた顔を上げる。

 そしてブランの話を聞くことに集中した。



 「制限時間はゲーム内での4日間。現実世界だと1日だ。その間にイベントボスを討伐すること……これが今回のイベントのノルマだ」



 4体のエリアボスを討伐するのに12時間。

 そしてイベントボスを討伐するのに12時間、と言ったところか。


 時間的余裕があるのかどうかはまだ分からないが、時間切れ、という事態だけは避けなければない。

 

 本来なら、今すぐエリアボスを討伐すべく行動するところだが、この話し合いが重要なのも分かる。

 だからこそ、多くのプレイヤーが大人しく話を聞いているのだ。


 正直、何人かは途中で退席するかと思っていた。

 まあ、誰も退席しないというのも日本人らしいか。

 ……いや、トッププレイヤーらしいと言った方がいいな。

 


 「だが、ここで重要になる要素……それはメダルだ。これによって争いが生まれ、連携が取れなくなるのが最悪だ」



 同感。

 つまり、ブランはこう言いたいんだろう。

 目先の利に囚われるな、と。


 

 「説明にはしっかりと、イベントボスを倒せない場合はプレイヤー側の敗北となると記載されている。そこら辺を踏まえて、上位プレイヤーの皆には行動して欲しいと思う」



 一同が静かに頷く。

 たしかにどのプレイヤーにとっても、イベントボスを討伐できないのは不本意だろう。


 

 「では早速、分ける人員について話そう」






 ☆☆☆☆☆






 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】

  side:メル




 「では早速、分ける人員について話そう」



 ロイさんに連れられるまま参加してしまったこの話し合い。

 正直、私はイベントを楽しめれば良いので、こんな作戦会議みたいなことは要らないんじゃないかと思ってる。


 ブランさんの話を少し退屈だと思っているのが良い証拠。

 今すぐ限定エリアに飛びたい。


 しかし、悲しいかな。

 他のみんなは不思議なくらい真面目に話を聞いているのだ。


 隣を見れば、あのリリでさえ真剣な表情で聞き入っている。

 


 「恐らく、最も厄介なのは山村の狼。次点で蝙蝠、幽霊、スライムだろう」



 スライム……。

 一時期、掲示板で有名になっていたが、今では姿は見えない。


 あの黒猫と同じく、なにか特別な条件が無いと現れないんだろうか。

 


 「幸い、エリアからエリアへの移動に制限は無い。よって上位プレイヤーには、墓地、湿林、洞窟の三つに分かれてもらう」



 ブランさんの作戦。

 先に山村以外のエリアを分担して片付け、その後に上位プレイヤー全員で山村を攻略するという感じか。


 どれだけ狼を警戒してるのか、よく分かるなぁ。


 きっとトラウマだったんだろう。

 白騎士戦と呼ばれている、あの時のことが。

 

 

 「墓地には幽霊が出現するため、《光魔法》を使える魔法職に攻略してもらいたい」



 あ、たぶん私のことだ。

 私の取得している《聖魔法》。


 これは《光魔法》のスキルレベルが50になった時に進化したものだ。

 

 取得した当時の私は知らなかったが、このスキルはとてもレアで強力なものだったらしい。

 今でも、《聖魔法》を持っているプレイヤーは数えるほどしかいない。


 そんな、自分で言うのもなんだけど貴重なスキルを持っている私は、まあまあな有名人らしい。全く実感はないけど。


 というのも、さっきロイさんから聞いて初めて知ったことだからだ。


 

 「洞窟の蝙蝠には、遠距離の攻撃手段を持つプレイヤーに任せる」



 遠距離手段を持つプレイヤー……一番有名なのはエリカさんだ。

 でも、最近あまり調子がよくないらしい。


 プレイヤーランキングも2位から下がってしまっている。

 でも逆に、ランキングが上がった、というプレイヤーも不思議なことに居ないらしい。


 これもロイさんから聞いたこと。



 「湿林のスライムは、近接攻撃の得意な者に殲滅してもらおうと思う」


 

 物理攻撃最強と言われてるのは、やはりロイさんだ。

 あの人の武技スキルは強い。


 でも、私はリリを応援する。

 最近取得した武技スキルを使いこなせれば……。


 あ、そういえば。

 この前、ロイさんが言ってたな。



 『いやいや、俺なんかよりイリアさんの方が強いよ』


 

 だっけ?


 イリア……さん?

 

 ロイさん以上って。


 どんな人なんだろう?


 作戦について淡々と話すブランさんを意識の隅に追いやり、私はこれから始まるイベントについて妄想を始めていた。


 サブマスのルイズさんという人が、怪訝そうにこちらを見ていることにも気付かずに……。


 

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