解散、そして追いかけっこ
【ログイン34日目】※ゲーム内時間換算(27日)
「あー、ルカ。ごめん、かなり遅くなった」
俺がルカのところに戻ったのは、ルカの決めた10分という時間を大幅に超えた約40分後だった。
いや本当にごめんなさい。
流石に、道に迷った、なんて言い訳じゃ誤魔化しきれないだろうなぁ。
と、道中に別の言い訳を考えてみたわけだが何も浮かばなかった。
よって、今の俺はノープラン。
どんな質問もアドリブで何とかしてみせる!
「あ、え……だ、大丈夫だよ?」
そんな俺の覚悟とは反対に、ルカの反応は俺が予想していたどれとも違うものだった。
もう詰んだかな?
先程の覚悟が急速に失われていく。
「そ、そうか。なら一回街に戻るか?」
「……そうだね。私も気分落ち着いたから」
そう言うと、ルカは歩き出す。
俺とラティもそれに続くように歩き出した。
☆☆☆☆☆
「ごめんね! 今日はもう出来ない!」
街に戻り、ギルドでクエスト完了の手続きをした。
そして、次はどうしようかと俺が考え始めた瞬間に、ルカがそう切り出してきた。
出来ない、というのはログアウトするってことだろうか。
時間を見ると確かに、ルカと行動してから何時間も経過している。
ここでお開きにしても問題はないだろう。
「分かった。今日はありがとう。ギルドとか装備とか、知らなかったことを教えてくれて。正直かなり助かった」
俺にとって、ルカとEOFができたことは結果的にかなり良かった。
装備やギルドなんて欠片も知らなかったからな。
俺からすれば、プレイヤーにとって当たり前の情報をどうやって知るかが最も難しい。
ルカはそれをクリアしてくれたので、感謝しかない。
「う、うん。こちらこそ。また今度ね」
どこか余所余所しい態度で、俺の目の前から消えたルカ。
ログアウトしたらしい。
「クゥーン……」
ん? 横を見てみるとラティがいた。
プレイヤーがログアウトしてもテイムされた魔物はそのままなのか?
しかし、ルカに置いていかれたようで悲しい声をあげるラティを見ているのも辛い。
「ラティ、お前はどうするんだ?」
つい、俺は声をかけてしまう。
ウルフが言語を理解しているはずがないのに。
「ウォン!」
すると。
プイッ、とラティは反対を向いて歩き出した。
「は?」
せっかく、人が心配して優しく声をかけてあげたのに……。
まるで、こっち見んな、と言うような反応をしなくてもいいじゃないか!
「ち、ちょっと待て!」
反射的に追いかけてしまう俺。
このままラティを野放しにしていい筈がない。
最悪、他のプレイヤーから野生の魔物が街に入り込んだと誤解されて攻撃を受けてしまう可能性もある。
ここは俺が飼い主のフリをするのが賢明だろう。ルカのためにもラティのためにも。
走りながら結論を出した俺。
ラティはスルスルと人混みを抜けていく。
当然ながら俺の身長では目視などできないので、《魔力操作》と《気力操作》を全力駆使しながらラティを追っている。
ついでに、プレイヤーの気配と動きを捉えて効率的にラティを追うことで、《魔力操作》と《気力操作》の訓練にもしている。
意外と良い訓練方法かもしれない。
難易度もそこそこ丁度いい。
「ラティーー!」
たまに飼い主アピール。
これを挟むことで、ラティに攻撃しようとするプレイヤーは少なくなるはず。
一体いつまでこの鬼ごっこが続くのだろうか。
《地図》を走りながら発動させ確認すると、ラティの進行方向は草原エリアの反対……森エリアのようだ。
ラティの速力に合わせながら走っているので、森エリアの門までかなり時間が掛かるはず。
出来るならそれまでに捕まえたい。
だが、残念なことに今の俺は初心者装備を付けている。
あまり埒外な速度で走りたくはないのだ。
いまの速度だってかなり危うい。
事実、通り過ぎる無数のプレイヤーからは驚きの表情が多く伺える。
《隠密》をあらかじめ発動させておくべきだった、と今さら気づくが、もう手遅れ。
寧ろ、いきなり目の前から消えたり気配が薄くなったりしたら更に怪しまれるだろう。
結果的に《隠密》を使わなかったのは良かったかもしれない。
ポジティブにそう捉えることにした。
「わあっ! なんだお前っ!」
「すいません!」
余計なことを考えていたからか、目の前にいるプレイヤーと衝突しそうになった。
間一髪で避けたが本当に危ない。
だが、もし衝突したら……吹っ飛ぶのはどっちなんだろうか?
ふと、そんな疑問が俺の脳内に浮かんだ。
現実的に考えれば、いくら走っていると言えども子供が大人に衝突すれば、吹っ飛ぶのは子供だろう。
しかし、ここはゲームの中。
ステータス的に考えれば、先程のプレイヤーが必ず吹っ飛ぶのだ。……というか吹っ飛ぶだけじゃなくてHP全損もあり得そう。
……いや、流石にないか。
もし。それが出来てしまえば、俺が道を走るだけで何百ものプレイヤーをキル出来てしまうことになる。
そんな理不尽なことがシステム的に可能なはずが無い。
道徳的にもよろしくないし。
まぁ、レベリング効率は良さそうとは少し思ったけれど。
スルスルとプレイヤーの隙間を通りながら、俺は懲りずにそんなことを考え続ける。
《地図》で確認すると、もうそろそろ森エリアに着くところだった。
プレイヤーの数も少なく、前方に注意する必要もそこまでないだろう。
ラティとの距離は縮まっていないし離れてもない。
その証拠に、プレイヤーが少なくなった現地点なら、俺の身長でもギリギリ目視できるくらいだ。
俺はラティを《鑑定》しようと思う。
速力が解れば、俺も速度を合わせやすいし追いつきやすい。
まあ、単純にどんなスキルを持っているか気になった、というのもある。
表示されるウィンドウで視界が邪魔されるだろうが、《気力操作》と《魔力操作》を使えば何とかなると思う。
俺は《鑑定》を発動させた。
_________________________________________
ステータス
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………………え?
いや、ちょっと待て?
……何かのバグだろう。きっと。
そう思い、もう一度《鑑定》してみる。
……鑑定できません、か。
結果は同じ。
何度《鑑定》してみても表示されるクエスチョンマークは変わらなかった。
こんなステータスを見るのは、マーナさんを《鑑定》したとき以来だな。
しかも、マーナさんのステータスでは見えていた部分もラティでは見えなくなっている。
もしかしたら、テイムされた魔物のステータスはテイムした本人にしか見えないのか?
ふと、そんな考えが浮かぶ。
しかし、俺は脳内で直ぐにそれを否定した。
プレイヤーと魔物を《鑑定》できるのに、テイムされただけの魔物が《鑑定》できないはずは無い、と思い直したのだ。
それに、いくら《鑑定》が弱体化したといっても、ステータスが丸々なにも見えないのはおかしい。
ならば。
なぜラティのステータスは見えない?
ちょっとした思いつきで《鑑定》しただけに、この結果には本当に驚きしかない。
どこからそんなスキルを取得したんだ?
俺だって、自分のステータスを隠すために不本意ながらPKを行った。そしてその結果、《偽装》というとても便利なスキルを得た。
しかし、ラティはPKなんてことはしていないはず。
もし、ラティがプレイヤーを殺していたら……ルカもPKをしているということになる。
それは考えづらいのだ。
それに、人目がつきやすい草原エリアでPKを行うのはリスクが高い。
実際に森エリアでPKしたことのある俺が感じたのだ。
その難しさは森エリアの比ではないだろう。
……とするとSPを使って取得したのか?
それなら有り得る。
まあ、テイムされている魔物がSPを持っているかどうかは分からないが。
あれ? 普通のウルフとかボアのステータスにSPの項目ってあったかな? ……いや覚えてない。
《鑑定》してもパラメータとスキルを見たら、直ぐにやめちゃってたからなぁ。次はちゃんと見てみよう。
だんだん脱線しかけてきた思考を戻し、考察を続ける。
確かに、ラティがどうやって《鑑定》を遮断するスキルを得たのか気になるが、今はもういい。
結果として、ラティに《鑑定》は通らない。
そして、なぜ通らないのか。ここも疑問なのだ。
俺の《鑑定》はスキルレベル40。
……40。 ……40だよな?
少し不安になり、俺はステータスを開いた。
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《念力》のスキルレベルが上限に達しました。
スキル《念力》が進化します。
……確認。スキル《念力》が《念動力》に進化しました。
中級スキルに進化……武技スキル≪圧殺≫が解除されました。
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ステータス
レベル 1
存在値 84
名前 サクヤ
種族 人狼
職業 密偵
パラメータ
HP1230
MP1245
速力368 筋力365 防力365
器力700 精力700
スキル
〔種族スキル〕《爪撃》LV33《噛撃》LV9
《変化》LV27《人化》LV--
〔職業スキル〕《鑑定》LV42《閃めき》LV42
《視覚強化》LV38《推測》LV14《識別》LV3
《回避》LV9
〔通常スキル〕《錬金術》LV1《念話》LV--
《念動力》LV1《隠密》LV3
《地図》LV37《耐久》LV 33《火魔法》LV15
《水魔法》LV11《風魔法》LV11《土魔法》LV11
《光魔法》LV11《影魔法》LV32
《付与魔法》LV28《偽装》LV38
《不意打》LV5《気力操作》LV14《武闘》LV12
《根性》LV7《魔力》LV31《魔力操作》LV14
〔武技スキル〕
≪残像≫ ≪切断≫ ≪圧殺≫
SP147
EP0
PP 80
装備枠
1.黒鉄の直剣
称号
〈変わり者〉〈念じる者〉〈潜む者〉〈耐える者〉
〈PK〉〈暗殺者〉〈気を修めし者〉〈黒の先駆者〉
〈死に急ぐ者〉〈魔才の神童〉
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あっ、なるほど。
やっと《念力》が進化して《念動力》になった。
これで、複数の操作が可能となったわけだ。
より便利になったこのスキルを《鑑定》したいが、時と場合が少しまずい。
あとで落ち着いたとき、ゆっくり見るとしよう。
新しい武技スキルの≪圧殺≫も気になるし。
ちなみに《鑑定》はスキルレベル42だったね。
多分、いまスキルレベルが2上がったんだろう。多分。
しかし、ボアを数体ほど倒した筈だがレベルは上がってないな。
まだレベル1だから上がりは早いと思ったんだが……流石に2回の進化をすれば遅くなってしまう、か。
仕方ない。
焦らずコツコツやるとしよう。
ステータスを閉じ、前を向いた俺。
なんと、その前には大きな門があった。
そう。森エリアへと出る北の門だ。
スキル詳細
《鑑定》+2《識別》+2《気力操作》+2
《魔力操作》+2《魔力》+2《偽装》+1
NEW 《念動力》 ≪圧殺≫




