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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
72/106

解除至らず


 【ログイン34日目】※ゲーム内時間換算(27日)



 「クウヤ君、左!!」



 「了解!」



 ルカの忠告通り、ボアの突進を左に避けた俺。

 さっきまで俺がいた場所をボアが通り過ぎる。


 その瞬間、両手で握った剣を振り下ろした。

 威力はかなりセーブしたつもりだ。


 しかし、剣の切れ味をセーブすることは出来なかったようだ。


 俺の思考とは正反対に、振り下ろした剣はボアの体を深く抉る。

 これでは、ダメージが大きすぎる……。


 

 「ルカ頼む!」


 

 あと数撃で倒れるボアだが、俺が(とど)めをさしてしまうより、ルカが倒したほうが幾らか自然。


 そう判断した俺は、ルカに任せて後ろに飛び退く。


 ルカが魔法を撃つのに必要なスペースを作るためだ。

 俺に当たるのは色んな意味で不味いからな。



 「ファイヤボール」



 ルカがそう呟くと、構えた杖からファイヤボールが勢いよく飛び出す。


 ファイヤボールはその勢いを衰えさせることなく、ボアの胴体に命中。

 ボアが衝撃で少し飛び、その体が消える。


 残ったのは皮だな。

 まあ、当たりでも無いし外れでもない。


 ルカは、そのアイテムをインベントリに収納する。

 確か、ボアを狩ったのはこれで三匹目だ。


 

 「ふう、皮かぁ。三匹目なんだから、もうちょっとレアなアイテムでも良いんだけどな……」



 「それは……さっきみたいな目玉でもか?」



 「うっ、あれは例外! あれ? 思い出したらまた吐き気が」



 「思い出さなくていいぞ」



 ルカが言った通り。二匹目のボアを倒した時、ランク3のレアアイテムがドロップしたのだ。


 その名も、ボアの目玉。

 見た目も名前そのままで、グロさはランク9だと思う。


 実を言うと俺も危なかった。

 見た目がグロいだけなら問題ないのだが、目の黒い部分がギョロッと一瞬だけ動いた時は、俺も吐き気がした。


 ルカは直ぐラティに抱きついて、精神を安定させていたが…………ラティによる精神安定効果は高そうだった。


 俺がインベントリに収納したことで問題は解決したが、もう二度と見たくない。ていうか、目玉とか何に使うんだよ。


 もし、《錬金術》で使う素材だったりしたら、俺はもう錬金術を修める気を無くすと思う。


 でも、目玉を使う生産スキルって《錬金術》くらいしか思い浮かばないんだよなぁ。

 これが杞憂であることを祈る。


 これ以上、あの目玉のことを考えたくないので、思考を中断してルカの方を向く。


 

 「もふもふ……もふもふ……」



 ルカはラティで精神を安定させていたようだ。

 ラティもまんざらでも無さそう。


 しかし、これでは暫く移動は出来なさそうだな。



 「ルカ、俺一人でボア探してくる」



 「く、クウヤ君、ダメだよ! まだレベル低いんだし、すぐに死んじゃうから!」



 「大丈夫だよ。危なくなったら直ぐ逃げる。それに、ルカはもう少し休んだ方が良い」


 

 「うっ! ……分かった。でも、10分だけだからね!」



 「分かった」



 ルカに軽く返してから、俺は歩き出す。

 と同時に、《地図》を発動して地形を確認する。


 図上に表示されるので、高低差などがかなり見づらい。

 数少ない《地図》の不満点だな。


 草原エリアといっても多少の凹凸はあるようで、緩やかな傾斜になっている方に向けて歩く。

 距離はそう遠くない。


 暫くすると、ルカの姿が草原に阻まれて見えなくなった。

 恐らく、ここまで2分もかかってないと思う。


 さて。

 ここからは時間との勝負。


 俺は《念力》を発動。それを自分にかける。

 

 《気力操作》と《魔力操作》を利用して、ルカとラティのが俺の方を見ていないタイミングを伺う。


 …………今!


 全速力で空中に上がる。

 少しして下を見ると、ルカ達が豆粒ほどになっていた。


 少し上がりすぎた。

 けど、まぁいいか。


 発動させていた《地図》で方角を確認。

 森エリアは……こっちか。


 把握した方向へ全速力。

 風の抵抗がかなり邪魔だな。仕方ないことだけど。


 では、俺がなぜ森エリアに向かっているか、説明しよう。

 

 それは、……俺の装備を早く作ってもらうためだ!

 

 探索者ギルドに行った時も、街中を歩いているときも、明らかにこの装備は他と比べてダサすぎる。

 特に探索者ギルドは酷かった。


 装備のグレートが高いプレイヤーが殆どなのに、初心者装備でギルドの列に並ぶ、俺の居た堪れなさが……。


 といっても、俺は100万Gという大金を所持しているので、その気になれば装備の一式二式はポンと変えてしまう。


 が、俺はバラザというNPCに装備を造ってもらう約束をしてしまった。なので、装備を買うことが出来ないという現状なわけだ。


 その上、その素材は俺が負担しなくてはならないらしい。


 約束をした時は、後回しでもいっか、と思っていた。

 わざわざ森エリアまで取りに行くのも面倒だし、ルカとの約束もあったからだ。


 しかし、今は違う。

 少しでも早くこの装備を変えたい! という明確な意思がある。


 という経緯より。

 俺は10分で森エリアと草原エリアの往復を行おうとしているのだ。


 現在の経過時間は約3分程だが、漸く街が見えてきた。

 このペースだと間に合わないな……。


 レイクさんとルカを《念力》で運んだときは《耐久》のおかげで、速力にかなりの補正が入っていた。


 今はそれがない分、遅くなってしまうのは必然。

 しかし、だからといって諦めない。


 出来るだけ時間のロスを少なくし、ベストタイムを出す。

 ……なんかタイムアタックしてるみたいだ。


 EOFにそんなランキングは無いが、もしあれば一位を取るくらいの速さを目指す。

 

 そんな思考をしている間に、街を通り過ぎ、森エリアの入口部分に差しかかった。

 下に数人のプレイヤーが見えるが、草原エリアと比べると数はずっと少ない。


 ここまでの経過時間は6分。

 街を4分で抜けた計算だ。


 だが、このペースで行くとマーナさんの洞窟に着いた時点で10分をオーバーしてしまう。帰りも含めると……20分は超えるな。


 《念力》をフルで使っているのにこの時間か。

 このタイムが恐らく、今の俺の限界。


 速力があと2倍は欲しいな。

 その為にも、速力補正のスキルを取得したいものだが……生憎そんな都合のいいスキルは取得可能欄には無い。


 俺には、難易度の高い自主取得しか道はなさそうだ。


 ぼんやりと、そんな事を思っていると。

 前方に山脈が見えてきた。


 あともう少し。

 

 俺はラストスパートのために、更に速度を加速させた…………というのは気持ちだけで実際加速はしていない。


 

 よし。着いた。

 経過時間は11分。もう遅刻だ。


 と、心の中では思いながらも、俺は焦っていない。

 もう言い訳は考えてあるからな。


 道に迷った。


 これでいこう。

 俺は初心者なので道に迷ったとしても仕方ない、ルカはそう思うはずだ。


 ……ルカの良心につけ込むような形で心苦しくはあるが。


 というような事を思いながら、洞窟に入る。

 もちろん速力マックスだ。


 最初に入った時はあんなに暗く感じたのに、今はそこまで暗く感じない。怖さもかなり減った。


 これが慣れというものなのかもな。

 

 この調子でホラーゲームも易々とクリアできたら良いが、恐らくそこまで俺の恐怖心は甘く無いと思う。


 いつか見た長い髪の女を脳内で必死に削除していると、倉庫がある扉の前まで着いた。

 レイクさんとマカがいないな。


 レイクさんは森エリアでレベリングでもしてそうだが、マカに関しては予想が全く出来ない。

 考えても無駄な時間になるだけだ。


 俺は倉庫の扉を開け、早速バラザに持っていくための素材を探す。

 まずは純魔銀鉱石と純魔鋼鉱石。純魔鋼とは、多分オリハルコンのことだと思う。


 こちらは両方ともランク8のアイテムだ。

 ここから、さらに魔物の素材や結晶などを選ぶ。


 《鑑定》と《識別》を駆使しながら選んでいると、竜の○○シリーズがあったので、これら全てをインベントリに迷わず入れた。


 数は馬鹿みたいにあるので、マーナさんに怒られることも無いと思う。

 だが、それを抜きにしても。


 竜とかの装備は欲しいよね、やっぱり。

 なんとなく、龍王の宝玉も入れた。カッコいいし、ぜひ使って欲しいからな。


 あとは、エンペラーグリズリーの毛皮、世界樹の枝、世界樹の雫、火結晶、水結晶、風結晶、土結晶、光結果、影結晶。アラクネの糸も入れとく。


 あとは……ん? なんだこれ。

 ……古龍の血? 前はあったか、こんなの。


 よく見れば、俺が今いる場所そのものが、以前はなかったスペースだということに気づく。

 マーナさんが新設したのかな?


 まあ、それにしても早すぎるけど。


 しかし、マーナさんがやった、としか考えられない。

 レイクさんもマカも俺も出来るわけがないからだ。


 俺はマーナさんに感謝しながら、古龍の血をインベントリに入れた。ちなみに、血とは瓶に入っている赤黒い液体のことらしい。ランクは10。高いな。


 さらに、新設された場所を見てみる。


 新しく置かれたものは多そうだな。


 棚から順に見ていく。

 古龍の血に続き、龍の血、古竜の血、竜の血、竜の心臓、竜の○○という臓器類があった。


 普通にグロい。

 心臓は何故かドクドクと動いているし、脳みそとかはもう……言葉に表せない。


 しかし、竜の○○シリーズではあるので、渋々インベントリに仕舞った。

 バラザの前に出すのが憚られるなぁ。


 竜の臓器シリーズが終わると、グリフォンの○○、ゴブリンの○○、ウルフの○○、といった各魔物の臓器シリーズが続いた。


 吐き気がする。

 マカをここに来させてはいけない、俺はそう思った。


 吐き気を催しながら、臓器シリーズを見ていると。

 新設された場所も、もう終わりに近づいてきた。


 数が馬鹿みたいに多くて辟易していたところだ。


 やっと解放される、と安堵しながら《識別》と《鑑定》を使っていると。

 神の血、というアイテムを発見した。


 神の血? 仰々しい名前のアイテムだなぁ。

 …………ん? 前にも見たことなかったか、このアイテム。

 

 俺はそう思い、過去の記憶を検索。

 そして、思い当たった。


 封印解除に必要なアイテム!


 俺はインベントリを開き、二つのアイテムを出した。

 封印の指輪と、封印の仮面。


 これらの封印を解除するためには、気が遠くなるような数の魔物の素材や鉱石が必要になる。

 

 が。それらの全てが、この倉庫にある。と思われる。


 神の血。

 まずは、これを二つの装備に近づける。


======================================


 " 神の血 " を消費しますか?


======================================


 

 すると、こんな画面が出てくる。

 やはり、やり方としては間違っていない。


 俺はYESを押す。

 すると、目の前にあった神の血が消えた。


 直ぐに《鑑定》する。


 

__________________________________________

 名称 封印の指輪  ランク3


 強い力で封印された指輪。ある条件を満たせば封印が解除される。封印された状態で装備しても効果はない。


 欲求LV 100以上


 欲求アイテム ・不死鳥の羽×50

        ・純魔鋼×500

        ・純魔銀×500

        ・純魔白銅×500

        ・デビルスライムの核×100

        ・炎結晶×10

        ・氷結晶×10

        ・嵐結晶×10

        ・地結晶×10

        ・聖結晶×10

        ・闇結晶×10


___________________________________________



__________________________________________

 名称 封印の仮面  ランク3


 強い力で封印された仮面。ある条件を満たせば封印が解除される。封印された状態で装備しても効果はない。


 欲求LV 100以上


 欲求アイテム ・ハイゴブリンの皮×100

        ・ハイリザードマンの皮×100

        ・ハイオークの皮×100

        ・ハイスケルトンの外骨×50

        ・ハイゾンビの心臓×50

        ・ハイミミックの核×200

        ・ウロボロスの皮×30

        ・カーバンクルの瞳×20

        ・ユニコーンの角×10

        ・ペガサスの翼×10

        ・スレイプニルの蹄×10

   

___________________________________________ 


 

 やはり、欲求アイテム欄から神の血が消えた。

 これで神の血はクリアということだろう。


 気の遠くなるような封印解除に、一歩近づいたわけだ。

 

 この二つの封印をいま解除できるかもしれない。

 そう思うと、わくわくしてきた。


 不死鳥の羽。

 これは、フェニックスのことかな。


 そう思いながら探していると、不死鳥の羽が普通にあった。

 募金の羽みたいに大量にあるので、50個すべて消費する。


 純魔鋼。

 500と見れば数はすごいが、加工された小さなインゴット一つで消費できたので、総量はそこまで多くない。


 純魔銀。

 こちらも、小さなインゴットで事足りた。

 

 純魔白銅。

 うん? と思ったが、探したら簡単に見つかった鉱石だ。

 何て読めばいいのか分からないが、アダマンタイトだろうか。


 要領は一緒なので、消費は早い。

 インゴットも量が多かった。

 バラザ用にインベントリにも入れておくか。


 デビルスライムの核。

 スライムの○○シリーズの奥にあった。


 色は黒いが、透き通るような綺麗な石だ。

 どっちかというと宝石っぽいな。


 炎結晶。

 火結晶じゃないのか? と思ったが、火結晶の上の棚に入っていた。完全に見落としていたな。


 ランクは8で、火結晶の上位互換で間違いない。

 だが、数は火結晶と同じくらい大量にあったので、消費した後にバラザ用の炎結晶としてインベントリに入れておく。


 氷結晶、嵐結晶、地結晶、聖結晶、闇結晶は炎結晶と同じ。

 インベントリにも入れ、消費も問題なくできた。


 ……筈だった。


 問題は、最後の闇結晶を消費しようとした時だ。

 やっと封印解除だ! と意気込んでいた俺だが、YESを押した瞬間に、見たことのない画面が現れた。


======================================


 欲求レベルを満たしていません。

 条件を満たした上で、再び消費して下さい。


======================================


 欲求レベル。

 乃ち100レベルに到達しているか、ということだ。


 そして、俺は到達していない。

 

 えー。

 正直、かなり期待していた。


 その分の落胆は大きい。

 封印解除はもう少しあとになりそうだ。


 大人しく封印の指輪をインベントリに仕舞う。

 

 ついでなので、封印の仮面も残り一個まで消費した。

 その状態で、インベントリに入れる。


 時間を確認すると、洞窟に来てからもう15分も経っていた。

 完全にやらかしている。


 俺は急いで洞窟を出ると、草原の方向へ《念力》を発動させた。

 

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