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【ログイン1日目】
はい、泣き止んだ。
現状があまりに不憫すぎてしばらくの間、心の中で泣いていた。
だが、諦めるのはまだ早い!
思い出せ。《念話》があるじゃん!
GMも有用って言ってたし。
とりあえず見てみようか。
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《念話》
所有者の心で念じた事が対象者に伝わる。消費MPは0で発動可能。念じた事は心を通じて伝わるので全ての言語に対応できる。
※魔物が使用した場合でも消費MPは0になる。
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おお!
なかなか良いんじゃないか?
特にMP消費が0ってとこが良い!
レベル1の俺にはとてもありがたい。
そして、全言語に対応できる……と。
思ってた通り会話をする上では便利だな。
SPが10かかるだけの事はある。
どっかのスキルと違ってな。
だが気になるところが1つあるのだ。
米印の、魔物が使用した場合でも消費MPは0。
この説明である。
まるで、魔物が使用したら消費MPが変わるスキルがあるような書かれ方をしている。
幸い《念話》は変わらなかったが、これが増えたりしたら問題になってくる。
減る分には全然いいけどな。
ううーん…………。
しかしこのスキル。果たして戦闘に使えるんだろうか。
《錬金》も《念話》も分かっていたが微妙だった。
《錬金》は生産系のスキルだし、《念話》は会話にしか使えないだろう。
比べるとまだ《念話》の方が活用できる部分はある気がする。
プレイヤーと会話が出来れば、それだけで有用な事だからな。
それに全言語に対応しているから、妖精や動物とも話す方が出来るかもしれない。
なかなかロマンチック。
妖精がいたら良いなー。
あ!
魔物と会話も出来るじゃん。
そうすれば、魔物を従えてサモナーみたいな事が出来るかもしれない。
夢が広がる。
いや、ダメか…………。
魔物を倒してレベルを上げなきゃいけないのに、魔物と仲良くなってどうすんだ。
冷静になれ、俺!
しかし《念話》を上手いこと使えないだろうか。
消費MPは0なので、いくらでも試せる。
色々やってみる価値はある。というか、これぐらいしか試すものがない。
しばらく森を彷徨う。
手ごろなウルフはいないかなー?
周りを見ながら丁度良さそうなレベルのウルフを探した。
お!
いたぞ! レベルは……3か。
ちょうどいい。
なら、まずは奇襲と《念話》を組み合わせてみよう。
茂みに隠れる。
ウルフがこっちに近寄ってくる。
ここまでは今までと同じだ。
ここで、《念話》を発動する!
『後ろに敵!』
すると、ウルフは凄い勢いで後ろを向いた。
慌てているようだ。
この隙に!
攻撃する!
結果は。
リスポーンした。
俺が死んだのである。
俺が《爪撃》を放っている最中にウルフは凄い勢いで180度回転してそのまま《爪撃》をしてきた。
即死だ。
はあ、いい作戦だと思ったんだけどなー。
ダメだった。
そんなに甘くないのかな。
次はどうするか。
んー……。
何も浮かばないし《念話》の練習でもウルフにしてこようかな?
それがいいか。
もうリスポーンにも慣れてきたし、丁度いい。
ふむ。
なるほどな。
リスポーンした。
何回目かは当然分からない。
だが、《念話》についてある程度は理解した。
無駄な死では無いと思う。
まず《念話》には、大きく分けて2つの使い方があることが分かった。
1つ目。
知っての通り会話に使える事。
説明にはこの使い方しか載っていない。
まあ、《念話》と聞いたら思い浮かぶのはこれだろう。
2つ目。
普通、2つ目なんて無いと思う。
しかし、会話する以外で使い方があったのだ。
この《念話》は、念じた事を対象に伝えることができる。
こう説明されている。
言葉を伝えるのではなく、念じた事を伝えるのだ。
ということは……。
上手くスキルを使えば、シンクロみたいな事も出来るかも?
そう思った。
何故なら、手を動かす場合は必ず脳からの信号が伝わっているのだ。すなわち俺が手を動かそうと思うと、脳から信号が送られる。
" 思う " と " 念じる " は同義だ。恐らく。
ならば、俺が手を動かす事を対象に伝えることも出来るのではないか?
そう思った。
早速、俺はウルフに試した。
レベル3のウルフだ。
結果。
ウルフを俺の意思で動かすことは出来た。
しかし、俺が手を動かすと念じたのを伝えただけではウルフは動かなかった。
俺が、実際に手を動かしている状態で《念話》を使わなければ動かなかったのだ。
しかもウルフに俺の姿を見られたら、速攻で《念話》の効果が消えて殺された。
条件はよく分からないが、シンクロもどきは出来たのだ。
ウルフに見つからずに、ウルフを操作して、ウルフを倒す。
これを達成しなければレベルは上がらない。
難易度は確実にベリーハードだろう。
ウルフに見つからずに操作するのは出来る。
幸いにも、俺のいる一帯は木が生い茂っている森だ。
そこに隠れていれば大丈夫だと思う。
問題は、ウルフを操作してウルフを倒すことだ。
俺目線だと、見えない相手と戦うようなもの。
難しくない筈が無い。
レベル5のウルフを操作すれば大丈夫そうだが、レジストされそうで怖い。
本当にレジストされるかどうかは試さないと分からないが、レベル3のウルフを使う事になりそうだ。
早速、練習して――
――――きた。
試した所、レベル4のウルフまでなら問題なく操れた。
レベル5のウルフはやはりレジストされた。
簡単にはいかないらしい。
だが、レベル4のウルフでも楽になったのは確かだ。
レベル3のウルフ相手ならば十分に戦えるだろう。
じゃあ、レベル上げてくる。
上げれるかな?
まずはレベル4のウルフを見つける。
これは意外とすぐに見つかるのだ。
森をウロウロしていれば必然的にウルフに会うからな。
よし。
見つけた。
ウルフに見つからないように出来るだけ近寄る。
この動作はとても上達した。まるで野生の狼。
準備完了。
あとは《念話》を発動させるだけだ。
俺は自分の右の前足をつかって、歩こうと動かす瞬間に《念話》を側のウルフに発動させた。
それと同時に、体と意識の全てを移すようなイメージで《念話》を発動させる。
すると。
シンクロが成功した。
俺が1歩、歩けばウルフも全く同じタイミングで動くし、ジャンプすれば同じようにジャンプする。
問題は、このまま俺が見つからずにレベル3のウルフと出会えるかどうか…………。
周りに気をつけながら森を進む。
操っているウルフも俺と同じ動きをしている。
全く同じなので、臨機応変に動けないのが難点。気を引き締めないと終わりだ。
あ!
ウルフが見えた。
向こうは、こちらに気づいていないみたいだ。
チャンス!
操っているウルフと、向こうのウルフが相対するように距離を調整する。
よし。
今だ!
俺は思っ切りダッシュした。
残念ながら速力は俺の問題なので、レベル4の速力ではない。
しかし、その他はレベル4の数値だ。
《爪撃》で攻撃すればHPは飛ぶはず。
当たれば勝てる。
腕を振り上げる。
《爪撃》で攻撃!
ウルフは振り向いて攻撃してきたが、流石レベル4の筋力だ。
見事にゴリ押して削りきった。
ウルフのHPが0になった。
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レベルが上がりました。
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よっしゃぁぁぁぁ‼︎‼︎
やっとだ!
レベルが上がったよ!
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称号、〈潜む者〉を獲得。
消費SP0で《潜伏》スキルを取得可能。
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称号、〈念じる者〉を獲得。
消費SP0で《念力》スキルを取得可能。
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ん、ん!?
何か色々獲得したぞ?
苦労した分、幸運に恵まれたか?
確認する事が多くなった。
気になる箇所もある。
だが今日はもう疲れた。
ログインしてから5時間は経っている。
キャラメイクにも時間が掛かったしな。
もう、寝るとしよう。
今日でレベルが上がっただけ良かった。
これで、明日からのレベル上げも楽になったらいいのだが。
そういえば明日から掲示板も見たいな。
有益な情報もあるかもしれないし、もしかしたら仲間がいるかもしれない。
さて、ログアウトするか。
俺はログアウトボタンを押した。
その瞬間、視界がブラックアウトした。
苦手なやつ……忘れてた…………。
以降、レベルアップのアナウンスは省略します