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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
1.出会いと成長
45/106

二人目②


 【ログイン26日目】※ゲーム内時間換算(19日目)

 side:レイク


 

 私は、まず掲示板を開きました。

 望みはこの人に賭けるとします。


 現実世界で磨かれたタイピングで掲示板に、緊急で助けて欲しい、と書き込みました。これが届くと良いですが……。


 自分の運を考えると良い想像はできませんが、出来ることはやります。

 まずはマカさんの戦意を復活させます。



 「マカさん。やれますか?」



 「む、無理よ……6人なんて勝てる訳ないわ! レイク、逃げるわよ! もうキルされるのは嫌……」



 「逃げても追いつかれて倒されるだけでしょう。それよりも良い作戦があります。勝てる作戦です」



 「な、何?」



 「私の知り合いが助けに来るまで時間を稼ぐ作戦です。安心してください、私のお友達は強いですよ?」


 

 「で、でも……どうするのよ? 見るからに強そうよ、あの人達。瞬殺されるんじゃないの……」



 「戦うだけが時間稼ぎではありませんよ。幸いな事に、あのプレイヤーはスライムが好きなようです。マカさんがぷるぷるするだけでも時間稼ぎにはなるでしょう」



 「ほ、本当? た、助けに来るの本当に?」


 

 「はい。来ます」



 言い切るのは少し罪悪感がありましだが、ここで歯切りの悪いことを言い、マカさんを不安がらせるのは悪手です。


 もとより、この戦いは賭けです。

 いまさら保険をかけようと掛けまいが、後に引けない事実は変わりません。


 あとは、プレイヤーのスライムへの好感度と倒すことによる罪悪感の大きさにかかっています。これは結果が教えてくれるでしょう。


 マカさんの得意技でもある、ぷるぷるが発動されました。

 本人は結構、大変と言っていますが見ている側からすると、可愛いだけです。


 可愛い物好きには堪らないでしょう。


 

 「うっ……か、可愛い……」



 その証拠に、効果が現れてきました。

 スライムに興奮していたプレイヤーが呻いています。


 良い感じです。

 マカさんのモチベーションも上がってきたようです。


 可愛いと言われた事が純粋に嬉しかったのでしょう。

 ぷるぷるが激しくなっています。


 

 「お、俺、サモナーに転職しようかなぁ」


 

 「おい馬鹿。レベル23まで上げたんだからやめろよ?」


 

 「でも俺、夢が出来たんだ……可愛いものに囲まれたい」



 とても良い感じです。

 スライムを完全に敵として意識していません。


 彼がいれば、時間稼ぎはできそうです。

 問題はマカさんですが……。


 

 「マカさん、大丈夫ですか?」



 「ふ……ふ……う……くっ……ハッ……ふー……ンッ」



 かなり辛そうです。

 思いのほか、ぷるぷるが大人しくなっているようです。

 

 このままでは危ないかもしれません。

 彼がマカさんの虜になっていれば良いのですが。



 「うっ、必死にぷるぷるしようとしてるのが、また……可愛い……!!」



 どうやら、問題なさそうです。

 寧ろ効果的かもしれません。


 やはりマカさんに任せて正解でした。

 時間稼ぎという点においては、私より遥かに優秀です。


 私にはこのような方法は出来ません。 

 出来るとしたら怖がらせるくらいでしょう。


 それもこの人数だと効果は少ないと思います。


 これが最善でしょう。

 

 しかし、この時間稼ぎも長く続かないのは明確です。

 何故なら、彼らの目的は私達だからです。



 「おい、そんな事言ってないで早くやるぞ。もういいだろ、そのスライムは」



 「うるせぇ! お前らが女目当でナンパしたせいで、黒猫ちゃんに会えなかったんだぞ! このロリコン共がぁぁ!」



 「なっ! おまっ、それは言わない約束だろぉ!?」



 「そ、そうだぞ! 別に女目当てじゃねぇし!」


 

 「ろ、ロリコンじゃねぇよ!」



 良い感じに仲間割れが起きました。 

 マカさんの力は恐ろしいです。


 やはり、女性というのは男性同士の友情を壊す不思議な力があるのでしょう。

 このような場面は多く見ます。


 彼を含めたプレイヤー達が言い争っています。

 ロリコンやらなんやらと、彼らも学生のようです。


 彼らは社会に出てから自分たちの小ささを自覚するでしょう。

 世の中には、様々な人がいるものです。


 本当に人間というのは不思議です。

 多種性に溢れていて飽きることがありません。


 マカさんのぷるぷるは完全に止まってしまいました。

 しかし、それに気づく様子はありません。


 彼らも中々、個性的です。

 

 どうやら、私達は乗り越える事が出来そうです。

 あとは待つだけで良いでしょう。


 私はそう思いました。


 ですが、これを裏切るのが人間の神秘です。

 先程まで喧嘩をしていた彼らが、どういう訳か見事な連携でマカさんを捕まえました。


 

 「このスライムは持ち帰る! いいな!」



 「駄目だって言ってるだろ……何でそんな拘るんだ……」


 

 「強いて言うなら……運命かな」



 「……いい加減にしろォ!」



 不味いです。

 マカさんはかなりプライドの高い子です。

 

 触られる事を極度に嫌がります。

 

 

 「ち、ちょっと待て! スライムがぷるぷるしてるぞ! ……そうか、俺の思いに答えてくれたんだ!」



 「え、んな馬鹿な……」



 その証拠にぷるぷるしています。

 あのぷるぷるは怒りのぷるぷるです。


 不味いです。


 もし、マカさんが耐えきれずに攻撃でもしてしまえば、時間稼ぎが台無しです。

 私達は反撃されて倒されてしまいます。


 

 「マカさん、耐えてくだ「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


 

 手遅れでした。

 私の言葉も一歩及ばず、マカさんの限界を越えてしまいました。


 マカさんは攻撃を仕掛けます。

 

 完全に油断していたのか、マカさんを抱えていたプレイヤーに命中しました。

 これでもう時間稼ぎは出来ないでしょう。


 ダメージを受けたプレイヤーは驚いた様子でした。

 残念ながら大したダメージはなかったようです。


 しかし、その隙にマカさんはプレイヤーの腕を擦り抜けていました。

 私の方に戻っています。


 

 「ほれ見たことか。もういいだろ、あのスライムは」


 

 「ううっ……な、何でだ……スライムちゃん……」



 「よし、こいつは放っておこう。みんな、倒すぞー」



 「ま、待て! あと一回だけ……っ、話し聞いて!」



 あのプレイヤーを除いたプレイヤー達の戦意が復活しています。

 完全に敵として見られています。


 あのプレイヤーが必死に説得しようとしていますが、他の五人は聞く耳を持とうとしません。


 紛れもない窮地です。


 そして、これを脱する手段は一つです。

 私が姿を見せる事です。


 私達に接触しようとするプレイヤーがさらに増える可能性があるので、やりたくはありませんでしたが仕方ないです。


 私は、発動させていたスキルを解きました。


 いまなら、私の姿が見えているはずです。

 その証拠にプレイヤー達は警戒しています。


 

 「おい! スライムにあんなやつが付いてるなんて初耳だぞ!」



 「俺もだよ!」



 五人は武器を持ちながらも攻撃してくる気配はありません。

 私を警戒して、様子を見ているのでしょう。


 それもそうです。

 一見すると私の見た目は怖いのです。


 ステータスは弱いですが、初見殺しは得意です。

 このまま膠着状態が続くと良いのですが。


 マカさんは私の後ろに隠れています。

 少し見えていますが、何もないよりはマシでしょう。


 

 「れ、レイク……大丈夫なのよね?」



 「ええ、大丈夫です。幸運なことに……間に合ったようです」



 そうです。

 私達は間に合いました。


 本当にギリギリです。

 

 これもマカさんのおかげでしょう。

 彼女のぷるぷるは大きかったのです。


 彼らプレイヤー達は武器を構えています。

 いつ攻撃するか悩んでいるようです。


 私が姿を見せた甲斐がありました。


 最悪、問答無用で攻撃してくる危険もありました。

 今日の私は運が良いようです。


 彼らは一言二言ほど話すと、こちらに近づいてきます。

 慎重なのは良いことですが、今回は判断が遅かったようです。


 そのおかげで、私達の勝利は確定しました。


 何故なら、かの有名なプレイヤーが私達の味方だからです。


 思わず二度見してしまいましたが、間違いありません。


 その証拠も見ました。


 

 「魔法支援できるぞ!」



 「了解! 前衛、油断するなよ!」


 

 剣を持つプレイヤーが突撃しようとしました。



 その瞬間です。


 空から何かが降ってきました。


 私達は、衝撃と巻き返った土に襲われました。


 攻撃が来ると思い目を瞑っていたマカさんも、驚いて目を一杯に見開いています。


 プレイヤーも咄嗟の出来事に動けないようです。


 土埃が止みます。


 そこには、威風堂々と佇む黒狼がいました。




 そうです。




 彼こそが不動のプレイヤーランキング1位。




 EOF最強のプレイヤーである " サクヤ " なのです。






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