キャラメイク3
次は初期ステータスの選択だ。
サクッと決めて行きたいのだが、俺にそんな高等なこと出来るだろうか?
まず、初期ステータスに割り振ることのできるポイントは全部で30。
そのポイントをそれぞれの値に割り振る事ができる。
そして、割り振るのは完全にプレイヤーの自由になっている。
どれか一つに極振りするのもありだし、全て均一にするのもプレイヤーの好み次第だ。
要は、プレイヤーの性格が出るのである。
そんな訳で、俺のステータスの割り振りだが……。
実はもう決めてある。
決めた……と言うより、これしか出来ない。
と言った方が適切だろう。
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ステータス
名前 サクヤ
種族 ウルフ
職業 探偵
HP 5
MP 5
速力4 筋力4 防力4 器力4 精力4
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ザ ・普通である。
後から、いくらでも修正が効くようにしたのだ。
決して極振りが怖いわけではない。
決してな。
本当だぞ?
『随分、ビビっているのね』
うるさいぞ。
怖いのでは無い。
俺は今後の事を考えたんだぞ。
何せ、俺が決めたのは未知の魔物という種族なのだ。
これくらいの保険を入れても良いだろう。
しかし、こうして見ると振れるポイントが30というのは少なく見えるな。
ショボく見える。
俺のステータスで1番大きい値が5しか無いのだ。
初期のステータス振りはあくまで仮定、ということだろうか?
ここからどう伸ばしていくかが大事なんだろう。
まぁ、これで良いか。
失敗はしていないだろう。
…………していない筈だ。
やっとスキルの選択をする。
これで最初の決定は最後だ。
実は、俺はキャラの見た目を変える必要が無いらしいのだ。
人種キャラと違って、魔物は見た目を変える事は出来ないらしい。
そういう訳で決定は最後なのだ。
それで、何にするか。
個人的に取りたいスキルは決まっている。
まず、必ず取るのは魔法系のスキルだ。
せっかく魔法が使える世界なのに、魔法を使わないという選択肢は存在しないだろう!
これは譲れない。
次に、生産系スキルだ。
これは出来ればで良い。
やってみたいけれども魔物では厳しいと思う。
何かを作るのにウルフの足でやるのは不便だからな。
もしからしたら、スキルが発動すらしないかもしれん。
生産職で、自分だけの装備…………。
とか、凄く憧れるのだが。
魔物を選んだ以上しょうがない。
諦め……ようかな?
次は……。
ぶっちゃけ、決めていない。
いいと思ったスキルを取るつもりだ。
相変わらず自分でも計画性が無いと思う。
失敗したら最悪、アカウントを削除してやり直すつもりだ。
あまりにも酷かったらだが。
例えば、他の魔物にリスキルされ続けられたり。
プレイヤーにもキルされまくったり。
こんな鬱な感じだったら考える。
よしよし。
これで良いだろう。
「これで決定だ」
『あなた……大丈夫?』
また呆れられた。
2回目だ。
では、俺が選んだスキルを確認しよう。
まず、《影魔法》だ。
魔物のイメージと言ったら闇系だろ。
という訳でこれにした。
しかし、問題があったのだ。
魔物系のスキルのはずなのに《影魔法》は消費SPが10もしたのだ。
GMに聞いてみると、基本四属性と呼ばれる魔法の種類があるらしい。
それぞれ、火、水、風、土、なのだとか。
定番だな。
そして、問題の影魔法は特殊系統と呼ばれる魔法になっているらしい。
他にも、光などの強力な魔法が多い。
なので消費SPが10。
と説明を受けた。
同時に、基本四属性魔法の方が使い勝手が良い。
とも忠告された。
だが、俺は《影魔法》を選んだ。
カッコいいからな。
やっぱ魔物と言ったら闇系というイメージだし。
間違ってない、間違ってない。
で次のスキルだが。
《錬金》だ。
うん。
言いたい事は分かる。
自分で生産は難しいって言ったしな。
でも。
欲しくなったんだよ!
《錬金》って見た瞬間に、反射的に指が動いてしまったんだよ!
しょうがないじゃん!
やりたかったんだって!
はあ、死にスキルになりそう……。
ちなみに、消費SPは10である。
生産系のスキルだから当然だ。
SP10を無駄にしたかもしれない。
というか十中八九、無駄になる。
魔物の錬金術師なんて聞いた事ないからな。
やらかした。
正直、これに決めてしまった時は流石のGMもため息をついていた。
何も言いはしなかったけどな。
無駄、と思ったのだろう。
そして、これが原因で詰む事が無いように今から願っとこう。
さて、最後のスキルだ。
《念話》だ。
これは意外と使う場があると思う。
戦闘には使えないがな。
魔物である以上、必ず人のプレイヤーと出会う事はあるはずなのだ。
その時にコミュニケーションが取れるというのは大きいだろう?
自分がプレイヤーというのも伝える事が出来れば、協力してくれるかもしれないし。
まあ、伝えるつもりはないし協力されるつもりも無いが。
いつか必要になる時は来る。
保険のような物だ。
消費SPは10したがな。
確かに《念話》は特殊なのだろう。
見ただけで分かる。
だが、会話をするだけのスキルなのに消費SPが10は重すぎないか?
そこの所をGMに聞いてみた。
すると案の定、多 対 多のPvPでは無類の強さを発揮するらしい。
確かにPvPでは強そうだが。
明らかに、初期スキルで選ぶものじゃ無いだろう。
これも死にスキル……までとは行かなくとも使う場面は少なくなりそうだ。
はあ、結局スキルは3つ。
しかも全て実戦で使い物にならないかも知れない。
《念話》と《錬金》については使えない。
頼みの《影魔法》も使い勝手は悪そうだ。
なんでこんなスキルにしたのだろう?
思えば、種族を魔物にした所あたりから悪ノリしすぎていた気がする。
この状況、割りとヤバいのでは?
さて。
こんな調子でスキルも決まったのだ。
俺のステータスを見ようじゃないか。
「決まったステータス見せてくれ」
『はい、どうぞ』
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ステータス
名前 サクヤ
種族 ウルフ
職業 探偵
パラメータ
HP 5
MP 5
速力 4 筋力 4 防力 4
器力 4 精力 4
スキル
〔種族スキル〕《爪撃》《噛撃》
〔職業スキル〕《鑑定》《閃めき》《視覚強化》
〔通常スキル〕《影魔法》《錬金》《念話》
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おお!
種族スキルはまともだ!
安心した。
種族スキルの存在は、俺にとって救いになったな。
ちゃんと、ウルフらしいスキルが揃っている。
これで少しはマシになっただろう。
戦えそうだ。
職業スキルも中々いいんじゃないか?
下位職から鑑定があるのは、生産職などがほとんどだったはずだ。
それこそ、戦闘職業で鑑定のある職業はないのではなかろうか?
そう考えると " 探偵 " は当たりだったな。
《鑑定》は有用だ。
物体だけでなく、生物も識別することが出来る。
すなわちステータスが見えるのだ。
物体ならば、レアリティ。
生物ならば、ステータス。
このように《鑑定》があるのと無いのでは、情報量に大きな差が出るのだ。
周りに敵の多い魔物にとって、とてもありがたいスキルになるだろう。
期待の大きいスキルだ。
これは、素直に嬉しい。
大当たりだな。
他にもスキルはあるが、あとで見るとしよう。
「オッケー、把握した」
『じゃあ最後だけど、あなたの外見を見せておくわ。ログインしたら自分の姿は見えないからね』
GMが画像を見せてくれた。
そこには、一匹のウルフが写っていた。
これが俺のなるウルフの姿なのだろう。
全体の色はグレー。
爪や牙が鋭く尖がっている。
毛並みも良さそうなフサフサで、ペットなどに人気そうだ。……お買い求めの際はペットショップへどうぞ。
山などに住んでいそうな外見だけどな。
シンプルだが悪くはない。
良いじゃないか。
「早速、スタートさせてくれ」
『じゃあ、これからスタートするけど魔物に街は無いから出る場所はランダムになるわ。あなたにピッタリじゃない、ランダムなんて』
ん? 今なんて言った?
「ち、ちょっと待てスタートがランダ――」
『スタートね〜。頑張って、変わり者の魔物さん』
GMがそう言うのと同時に俺の視界はブラックアウトした。
てか、また暗くなるやつか。
俺、これ苦手なんだよな。
誤字修正しました。
矛盾した点があったので修正しました。