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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
1.出会いと成長
1/106

夏休み

初投稿です。誤字脱字、文がおかしい等は感想などで教えて頂けると嬉しいです。直ぐに修正します。


 

 キンーコンーカンーコンー


 長い授業が終わり、待ち望んでいた鐘が鳴った。

 反射的に外を見ると既に日が傾いている。


 先生が授業の終わりを告げ、教室から出ていく。

 俺は机の上に広げていた教材を片付けた。


 普段と同じ放課後のはずだが、クラスメイト達の表情が普段と比べて明るいように感じるのは気のせいでは無いだろう。


 そして、それは俺も例外ではない。


 正確には今日ではなく、明日からよ事を考えているのだ。

 学生にとって待ち遠しい期間。


 そう。


 夏休みなのだ。

 

 この夏休みへの期待と躍動感は、高校生となった今でも変わらない。むしろ、段々と高まってすらいるだろう。

 その証拠に周りのクラスメイト達は明日からの予定について楽しそうに話している。



 「バイバイ〜」


 「またねー」


 「おい、明日から遊びまくるぞ!」

 

 「やっと夏休みだー!」


 「あまり、ハメ外しすぎるなよ」



 生徒達の声も聞こえてくる。

 やはり、心なしか声が嬉しそうだ。



 「おーい、陽紀(はるき)ー!」



 友人の加藤敦弘(かとうあつひろ)の が話しかけてくる。

 分かっていたが、こいつも嬉しそうだなー。



 「何だよ、さっきから」



 「明日から夏休みだな!」



 「誰でも知ってるぞ」



 こいつとは中学からの付き合いだ。

 

 リアクションがオーバー気味であり、何かとうるさいが悪い奴では無い。だからこそ、中学からの関係が長く続いているのだ。



 「やる事は一つしかないだろ!」



 「分かってる」

 


 しつこい奴だ。


 そう、今年の夏で俺たちがやる事は決まっている。

 例年通りならば海や山などに旅行(遊び)しているが、その類では無い。



 「楽しみだよな!」



 「ああ、ずっと待っていたからな」



 そう、今年の夏はやる事が山積みになっている。

 もちろん課題のことじゃない。もっと俺たちにとって楽しいことだ。


 それは。





 「「EOFのサービス開始日!」」





 日本で誕生したVR。

 そのVR技術の結晶体がこの世界初のVRMMO。

 すなわち、EOFである。

 

 近年。世界中でこの研究、開発が大急ぎで行われていた。


 小型化された頭全体を覆う、専用の機械をつかって全く新しいもう一つの世界へと意識を移動する。


 こんな事、聞いただけではどれだけの技術が必要なのかということすら俺にはわからない。


 事実、半世紀前では理論的に可能と証明されていても、誰もそれを現実のものには出来なかったのだ。


 当然のことである。

 

 理論的に可能と証明されていても、VRMMOをプレイする事で何か悪影響があるのかも分からない。


 そんな状態では誰も怖くて手をつけられないのだろう。俺もやりたくない。




 しかし、約5か月前。

 VRMMOという話題も、世間一般人には忘れ去られていた頃、ある会社が大々的に発表したのだ。


 もちろん、真実なのかどうか疑うものも多くいた。

 

 というか、半信半疑だった者が大半だっただろう。

 俺もその1人だったのだ。


 だが、実際に希望者に約1時間ほどの体験をさせ、体験者の興奮した様子をみせられれば、疑うよりも興味を持つ者のほうが多くなるのは必然だった。


 日本中から注目を集めたVRMMO。

 その興奮の熱がまだ冷めていない、ある日。


 その新技術を使ったゲームソフトが発売されたのだ。

 

 日本全土が混乱した。


 当初は、製造側へ疑問の声が多くあがった。

 何故その技術をゲームなどに。

 もっと有用な使い道は沢山ある、と。


 だが、それも次第に収まっていった。

 いや、収められていった、というほうが正しい。


 何せ、未知の技術で作られたもう一つの幻想的な世界にRPGという形で、自由に冒険ができる。


 想像しただけで、胸が高鳴るような感覚に陥ったのを今でも鮮明に思い出せる。そんな感覚になったのは俺だけではないはずだ。


 誰しもが、一度こんな世界に自分が行けたらなと。


 そう思ったことはあるはずだ。


 発売が決定した当初、EOFを取り扱っている会社に前例の無いほどの数の予約が殺到した。


 日本の一部分だけでこの有り様なのだ。


 日本中から買いに来る人達を数えれば、それこそ日本の人口の殆どと言っても過言では無いだろう。


 もちろんソフトは文字通りの一瞬で完売。


 流石に、この事態は予想していなかったのか各会社は大慌て。その結果、大手会社が代表で急遽会見が開かれ、4か月待ってくれ。と発表された。


 反発的な態度を取る人もいたが、冷静に考えれば4か月でも足りないのでは無いか、とも思える。


 たった4か月だけで日本中に行き渡る数だけのVRMMO本体、ゲームソフトを製造出来るのか疑問を感じる。


 そんな事出来ないのでは、と素人ながら俺は思った。


 だが、その予想は裏切られた。

 

 会見の1か月後には発売日が発表されたのだ。

 

 2か月後には本体が販売され、日本に行き届いた。

 3か月後にはソフトが販売し、日本に行き届いた。

 

 そして、今日が4か月後の本サービス開始日なのだ。


 この日までがとても長く感じた。


 しかし、たった4か月で日本に行き届く数のVRMMO本体そしてゲームソフトを製造した早業は、今でも疑問を持つものだ。


 しかし。それでも、早くもう一つの世界を冒険をすることへの興味の方が圧倒的に勝っていたのだ。


 今日という日が歴史に刻まれる。 


 そうなっても、おかしな事では無いと思う。

 事実、日本、または世界が注目しているのは間違いない事なのだから。

 



    

   ☆☆☆





_________________________________________

 

 《embody・of・fantasìa》


 略してEOF。


 この新しい世界のコンセプトは自由。

 大規模なフィールドに徘徊する魔物を倒し、レベルを上げる。そして、各エリアごとに存在するエリアボスを討伐し、新たなフィールドを解放しよう。フィールドが解放されるにつれ、冒険ができる範囲も広くなっていく。


 コンセプトの通り、自由に自分のステータスにポイントを割り振る事ができ、自分だけのユニークなステータスにすることができる。ステータスに関しては自己責任。プレイヤー本人が一切責任を負う。


 キャラメイクで選べるのは、種族、職業、初期パラメータ、初期スキルである。これも自由に選ぶ事ができ、プレイヤーそれぞれで十分に考えて欲しい。


 この世界に存在するクエストは、多種多様である。

職業ごとに違うクエストもあるし、誰でも受けることのできるクエストもある。クエスト報酬はクエスト難易度次第なので、是非頑張ってほしい。

 

 また、定期的に運営側からイベントを用意する。


 なお、プレイヤー同士の対立には運営側は基本的に関与はしない。度が過ぎるようであれば、対処はさせてもらう。その場合、GMコールをしていなければ問題が無いものだと判断する。


 最後に。

 プレイヤーの方々には自由気ままにこの世界を思う存分、楽しんで頂きたい。


_________________________________________






 「へー、なるほど」


 部屋の机に置いてあるVRMMO本体。

 その本体を買うときについてきた説明書を読んだ。


 長々と30ページほどにわたって続いているが、短くまとめるとこんな感じだろう。


 他にも細かい注意などが書いてあるが見ていない。


 まぁ、チュートリアルで分かることだと思うしな。

 最悪、加藤に聞けばいい。


 このゲームは " 自由 " をコンセプトにしている。


 説明書を見るかぎり、現実と同じ程ではないが限界まで現実に近づけられたシステムとなってるらしい。


 そして自分だけのオンリーなステータスに出来る!

 

 開発者も男心が分かってるな。

 やる気が出ないわけがない。


 自分だけのステータス、スキルなどに憧れるのは男の子として当然のことだと思う。


 俺もその気持ちを否定出来ない。

 

 それどころか、少し恥ずかしいが実現させようという気しかない。


 それほど自由度が高いらしいので、キャラメイクでは思いっきり理想を追求してやろうと思う。


 うん決めた。そうしよう。

 


 

 さて、残り数分で本サービスが開始する。

 もちろん俺はタイムロス無しにダイブする予定だ。

 何事も最初が大事だし、こういうゲームだと尚更だろう。


 準備は出来ている。

 夕食はもう食べたし、親にも数時間は絶対に部屋に入るなと伝えている。


 後は、残り数分を待つだけだ。


 しかし、このソフトは本当に分からない事が多い。

 説明書を読んでいても、使用上の注意だけが書かれていて中の世界については自由としか書かれていない。


 運営側が用意するイベントとやらも気になる。

 ほんの少し書かれているだけというのも怪しい。


 まぁ、いい。


 俺には関係ない事だ。

 こういうのは、考察専門の輩に任せるのが一番いい。

 どのゲームにもそういうのはいるし、このゲームなら数え切れないほどいそうだ。

 

 ふと、時計をみると長針が動いていた。

 いつの間にか時間が経っていたようだ。

 

 後は存分に楽しむだけだ。


 俺は期待に胸を躍らせながら起動ワードを呟いた。


 叫ぶのはなんか恥ずかしいのだ。分かって欲しい。




 「【EOF】・オープン」


 

 

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