思わぬ発覚
『通訳者』の能力について思わぬ発覚があったのは商談が終わった数ヶ月後だった。
「どうやらデニスさん達は上手くやってくれてるみたいだね 」
「はい。さすがリューク様です 」
この数ヶ月で将棋とリバーシは国中外に広がった。
かなりの収益が出ているようで父様はホクホクしている。
どうやら国王が僕と会ってみたいと言っていたらしいがあと2年後に控えたお披露目パーティーの時にとの事になった。
この国の貴族の子は6歳で社交界デビューしその1年で交流を広げ、7歳で学園に入学する流れが普通らしい。
僕達と同じ年代に王女様もいるらしく注目されている。
「庭にでてみようかな 」
「かしこまりました 」
この家の庭はかなりの広さがあり綺麗な花々が咲き誇る花壇がある。
庭に出ると晴れ晴れとした空に花の香りが心地よい風が運んでくる。
「いい天気ですね 」
そう言いながらアリアはお茶の準備をしている。
ちょっと庭の散策でもしようかな。
子供の僕から見ると余計に広く感じるようで端から端までいくのも一苦労だ。
『助けて 』
なんだ?。
風に乗って声が聞こえてきた気がする。
けれど周りを見渡しても誰もいない。
『助けて 』
気のせいかとも思ったがやっぱり聞こえる。
花壇の奥の方からかもしれない。
急ぎ足で声のする方へ向かうと、やはり花壇の奥の茂みに、羽を怪我した小鳥がいた。
『助けて 』
「やっぱり聞こえる 」
これはもしかして、いやその前に。
思考を巡らせるより先に早く助けないと。
「アリアこの子を助けてあげて 」
そっと抱き上げて、できるだけ負担のかけないよう小走りでアリアのところへ迎う。
アリアは回復魔法の使い手でどうにかしてくれると信じて頼んでみた。
「リューク様血が 」
「僕のじゃないこの子のだよ 」
少し血がついてるけど気にしている暇はない。
「わかりました。ヒール 」
小鳥に手をかざし魔法を使用する。
緑色のキラキラした光が小鳥をと包みそれらが消えると怪我は完全に消えていた。
いつ見ても綺麗だな。
魔法使ってみたかった…。
まあ、今更か。
「ありがとうアリア 」
「いえ、リューク様のお着替えを準備して参ります。なにかあればすぐお呼び下さいね 」
アリアは誰よりも僕に対して過保護だ。
姉達の世話係も務めていたらしいがここまで過保護ではなかったと言っていた。
まあ、こんな美人に良くしてもらい嬉しい限りではあるが…。
『助けてくれてありがとう 』
「うん、どういたしまして 」
『私の声が聞こえるの? 』
「そうみたい 」
やはりこれは、『通訳者』の能力だろうか。
なるほど動物にまで通訳の能力が作用するのか。
これは色々実験してみないと。
『なにかお礼をさせてくれない 』
よく見ると前世でも見たことがないくらい綺麗な毛並みで青を中心とした色彩が綺麗だ。
「じゃあ、僕と友達になろう! 」
『友達? 』
コテンと首を傾げる。
「うん!。僕友達が少なくて、だから友達になってくれないかな。この庭は安全だし一緒に遊んだりしよ 」
『うん、友達なる!。楽しそう 』
友達、友達と口ずさみながらパタパタと僕の周りを嬉しそうに飛び回り指を前にやるとそっととまった。
「僕はリューク。君は? 」
『名前はないよ 』
「そっか… 」
名前か…、うーん。
なにかないかな。
雄かなそれとも雌なのか、聞こえる声は女の子みたいで綺麗な声だ。
「よし、じゃあ君の名前はメロ。君の綺麗な声にちなんで音という意味を持つメロディからとってみたんだけどどうかな 」
『メロ!。私はメロ。ふふっ、ふふふっ 』
また楽しげに飛び始める。
名前をつけた時一瞬だがキラリと光った気がしたが気のせいか。
ネーミングセンスは良くも悪くも普通だと思うけど喜んでくれてるなら良かった。
これで『通訳者』の可能性が広がったぞ。
友達も出来たし!。
別にぼっちじゃない…。1人や2人くらいならいるし。
うん、素直に喜んでおこう。