閑話 魔性の女の子?
私こと、デニス・クルーグはその日に運命的な出会いをした。
大袈裟かもしれないが商人の感が警告するかのように反応している。
それはシックザール家に商談があると話を持ちかけられた時のことだ。
シックザール家は位の高い貴族の中では歴史の若い貴族だがどの代も優秀で今の子供たちめかなりのものだと聞く。
そんなシックザール家のしかも当主直々の呼び出しだ。
気を引き締めてかかろう。
シックザール家の現当主は性格も素晴らしいお方なので私の自慢の娘で跡取りとして育てているエリスも連れて行くことにした。
さて、今日はどうなるやら。
シックザール家に到着すると執事に案内され応接室に入室する。
既に当主のルークス様が座っておられた。
やはり彼の空気感はひと味違う。
こんな事を口にしては不敬罪にされるかもしれないが貴族にも本物の空気感を漂わせている人は多くはない。
優秀か、ただ跡を継いだだけかの優劣の差は一目ではっきりと分かるのだ。
まあ、今まで培った商人の目によるものだけど。
簡単に娘を紹介し話を進める。
「お久しぶりでございます。ルークス様 」
「うむ、久しぶりだな 」
「今日はどのようなご要件でしょう 」
「まあ、とにかく座りたまえ 」
なんだ、執事に誰かを呼ぶように言ったようだ。
「今日は、儲け話を用意してきた 」
えらく自信満々言うものだ。
それ程のものなのだろうか。
「ほう、それは楽しみでございます 」
「そして、その発案者を呼んでいる 」
発案者…。
今この家には第2夫人とまだ小さい三男の子供しかいないはずだ。
まさか、使用人の案なのだろうか。
「失礼します 」
そう言って入って来たのは、親譲りの綺麗な髪を肩まで伸ばし、どこか儚く中性的な可愛さをもったまだ幼い子供だった。
そして、その少女はしっかりと自己紹介をする。
まだ4歳と聞いていたが、貴族としての品格をしっかりともっている。
やはり本物の雰囲気。
けれど時折みせる、つい頬を緩ましてしまうよな可愛い笑顔にドンドン心を惹き付けられのを感じる。
はっと、我に返る。
商人としてこれでは相手に主導権を握らしてしまう。
子供とはいえ侮れないな。
そうして始まった商談はまさに商人人生史上で今までになかった驚きの連続だった。
将棋とリバーシといった発明。
それを発明したのがリュークスト様という事実。
そして、そのリュークスト様が男の子だった事…。
この私が商談中、手球に取られるとは。
商談の結果は商売としては明らかに0点けれど商人として100点だと私は思う。
そして、話が終わる頃に胸に決めていたことがあった。
リュークスト・シックザール様にゴマをする。
そして、全力支援するとまで宣言した。
しかも、ルークス様の前で。
けれど後悔などしていない。
その発想力、貴族としての品格、性格の良さに、家柄、起点のきく頭の回転の速さ。
どれをとっても可能性の塊でしかない。
それに可愛いは正義である。なんて言ってみたり。
私の娘も完全に同意見だろう。
いやはや、親子共々その魔性に籠絡されるとは。
それも悪くないと思わせるのだから彼の持つものはやはり素晴らしいだろう。
我がクルーグ商会とリュークスト様の未来に期待が高鳴るばかりだ。