商人
「うぅ、緊張してきた 」
「リューク様も緊張なさるんですね 」
アリアはそう言って僕をからかう。
「僕をなんだと思ってるんだよ 」
「ふふっ、冗談ですよ 」
僕の頭に手を伸ばし優しく撫でる。
「むぅ 」
今日は、商人に将棋とリバーシを紹介する日となっていた。
サンプルも用意し、父様や母様、アリア達使用人にも教えてしてもらったがなかなかの好評でかなりいい線いくのではないかと思う。
「リューク様、お父様がお呼びです 」
どうやら、到着したようだ。
応接室へ向かう。
さて、商人とはどのような人か。
「お父様、失礼します 」
応接室に入ると父様の向かいに、優しげな顔の男性とこの世界では珍しい黒髪のクールな印象の少女が座っていた。
「お初にお目にかかりますご息女様、私はクルーグ商会、会頭デニス・クルーグと申しますこちらは娘のエリス・クルーグです 」
「ご紹介預かりました、エリス・クルーグです 」
ご息女?。
確かに髪が少し伸びていて女の子に見えなくはないが服装は普通に男物のはずなんだけど。
「初めまして、シックザール家三男、リュークスト・シックザールと申します。本日は御足労頂きあがとうございます 」
本当は貴族から平民に話しかける時敬語はいらないのだがら、まだ子供で三男という事もあり敬語の方が印象は良いだろう。
クルーグ商会。
王都でも名を上げている商会でいろんな国に取引先を持っているのが持ち味となっている。
「ほぉ、素晴らしい。シックザール家は、皆優秀だと聞きますがやはり流石でございます 」
「はっはっは、自慢の子供たちだよ。それにデニスの子も優秀だと聞くぞ 」
「はい、自慢の娘でして、商売の才能も素晴らしく跡継ぎとして育てております 」
あれ、もしかして僕女の子って間違われたままかも…。まあいいか。
父様もわざと訂正してないみたいだし。
「それでは、さっそく本題といきましょう 」
将棋とリバーシを実際に僕と父様で見本を見せながら説明した。
どうやら僕にはこの2つの才能があるらしく父様にはほぼ勝利を収めている。
負けず嫌いな父様に何度も再選を申し込まれているは別の話
「これは、売れます! 。ぜひこのクルーグ商会に任せて頂きたい 」
どうやら、成功のようだ。
隣に座っている少女も食い入るように見ていた。
それにしても綺麗な黒髪だ、久しぶりに見たのもありじーっと見てしまう。
「すみません、不気味ですよねこんな髪 」
「えっ、まさか、その、すごく綺麗な黒髪に見入ってしまって… 」
言ってからハッとなる。
これはセクハラか…。
は、恥ずかしい。
恐る恐る周りを見るが少女は顔を赤くして目をパチパチとしながらこっちを見て、父様やデニスさんはニヤニヤと見ている。
「あ、ありがとうございます 」
ついに、ゆでダコみたいになってしまった。
「はっはっ、すまないな。天然でこういう事をする子で私達もいつも悶えているよ 」
「いやはや、この年で魔性の女ですな 」
「あのお父さん、リュークスト様は男の子では 」
「へっ? 」
「はっはっは、すまない勘違いしているようだったが面白そうなのでそのままにしていたよ 」
「お、男の子でしたか。いやはや、見抜けないとは私もまだまだですな 」
デニスさんは呆気にとられている。
ここは一芝居うってみるか。
「男の子はお嫌いですか? 」
必殺、上目遣い。
目を潤ませ以下略。
「はぅ 」
デニスさんも真っ赤に染め上がる。
ポーカーフェイス破れたり!。
「はっはっは、クルーグ商会も籠絡してみせるとは 」
父様の笑いで皆が笑いだし、商売の相談をしていた場とは思えない場となった。
「すまない取り乱したな 」
「いえ、こちらも。これまで結構な経験をしたがこうと手玉に取られるとは 」
「それでは交渉を続けようか 」
「ええ 」
交渉と言っても将棋とリバーシを売ることについては決まっていたので利益率の話となる。
この世界にも特許というものがあり教会で登録することでかなりの強制力を持つらしい。
交渉はスムーズなものとなり全体の3割に運搬などその他、3割割がシックザール家、国の税として2割、残り2割がクルーグ商会の利益となる。
この場合シックザール家ではなく僕のところに特許料としてお金が入るのが普通だが2割を特許料、1割をシックザール家にの利益として売ってくれるらしい。
「本当にこれでよいのか 」
父様がこういうのも、かなりシックザール家が得をする内訳となっているからだ。
「ええよいのです。私の商売のモットーは出会いを大切にする事ですから。ルークス様の前でこんな事を言うのはあれですがシックザール家というよりリュークスト様にゴマをすっておこうと思いまして 」
「ははっ、私の目の前で言うかね 」
「はい、もうこの場で腹芸は無意味でしょう。それに、恐らくこの商談は今までにない利益になるかと 」
「あの、1つ提案ですが将棋は貴族ように駒をもっと現実的な形にし、豪華な装飾を盤にして高く売るといいと思います 」
それはパッとでた提案で利益をどう上げるか考えていると思いついた。
「やはり、面白い。このクルーグ商会はリュークスト・シックザール様を全力で支援しましょう 」
この言葉に父様も目を開けて驚いている。
それもそのはず、クルーグ商会とはひとつの家、または個人に肩入れのしない商会で有名だからだ。
「これは秘密にしておいて欲しいのですが、この子エリスには固有能力『先見の明』を授かっておりまして、自分たちにとって良い未来の可能性を感じれるものです。それに、それがなくともリュークストン様はまだまだすごい事を起こす気がしてならんのですよ 」
「商売者の感か 」
「ええ 」
「面白い。息子をよろしく頼む。これからも懇意にさせてもらうとしようか 」
こうして商談は終了した。
「それではルークス様、リュークスト様。私達の商談が上手く行きますよう 」
「ああ、よろしく頼む 」
父様とデニスさんは最後の挨拶を済ませている。
「えっと、エリスさん 」
「エリスとお呼び下さい。敬語も不要です 」
「わかった。僕のこともリュークで良いよエリス、これからもよろしく 」
「ありがとうございます、リューク様。こちらこそ 」
別れの挨拶をすまし、父様と見送る。
あっそうだ。
「デニスさん 」
そして、彼らは名残惜しそうに去っていった。
上手くいくといいな。
それに最後にお願いが出来て良かった。
「デニスになにを頼んだんだ 」
「秘密 」
「なっ、それは父さんじゃダメなのか 」
「ふふっ、ひみつー 」
「あっ、まてリューク 」




