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家族

 結局空気の悪いまま馬車に揺られて屋敷に到着した。

 道中、魔法について父様から説明を受けたのを思い出す。



「魔力というのは個人が持っている魔法を使用する時に消費されるもので高ければ高い方が良い 」


 どうやらSSは他に類を見ない程凄いらしい。

 そして貴族はSSとまでは行かないが血縁的な関係で総じて高いのだという。


「そして能力だが…」


 父様は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 僕のステータスを何度見ても横線で魔力と同じようなアルファベットではない。


「その魔力を、どれだけ自由に扱えるかで、簡単に言うと… 」


 また言葉に詰まる。

 どう言葉をかければ良いのか考え居るようだ。

 ここまで言われるとなんとなく察する事が出来た。


「僕は魔力を扱う事ができない、つまりは魔法を使用できないという事でしょうか 」


 そして、父様達の様子を見るに魔法を使えないのは致命に悪い事なんだろうな。


「察しがいいのも考えものだな 」


 そして、少し間を開け覚悟した顔つきで続ける。


「魔法を使えないという事実は貴族にとって非常に屈辱で、現状特に貴族間で差別的に見られ、『能無し』と蔑むものが多い 」


 馬車内の空気が今までで最もしずんだもとなった。


 なあ、優。

 僕ってば才能無いんだって。

 これからどうしようか。




 そう思ったのが数分前。


 屋敷ではみんなが今か今かと笑顔で待ってくれていた。

 けれど父様の空気を察して皆でいつも食事を食べているテーブルに席を着く。

 使用人達も数名いるがなにが始まるのかと不安そうな表情だった。


「リューク、ステータスを皆にみせてくれ 」


 馬車内で、この結果を隠すことも出来ると言われたが家族である皆には知ってもらうべきだと思い断った。


 ステータスオープン。


 ステータスが皆に見えるように表示される。

 やはり反応は教会での父様たちと似たようなもので、ユリス母様や兄様達は難しそうな顔をして、リリス姉は悲しそうにルーナ姉は今にも怒りそうな表情だった。

 使用人達も遠目で見えたのか息を呑むのが聞こえる。

 みんなの空気につられ父様と母様もまた辛そうにする。


 ああ、幻滅されちゃったかな。

 なんだよ、優。

 なにが転生したら凄い才能を貰えるのは確実だ、だ。

 全然そんなんじゃないじゃないか。


 この空気は思ったより辛い。

 この世界に生まれ変わって精神年齢も幼児化したのか感情の起伏が少し大きくなっている気がする。


 あぁ、僕は、


「ごめんなさい、僕はどうしたらいいのかな 」


 しまった。

 ハッとなり口を抑えるが、震えた声が勝手にでた後だった。


「リュー君は何も悪くない 」


 隣に座っているリーネ母様が悔しそうな顔で叫んだ声が静寂だったこの空間で反響した。


「謝る必要なんてないの。貴族社会がダメなら私と一緒に私の故郷に行きましょう。平民社会は貴族比べて差別意識は低いわ。ちょっと遠いし今みたいに裕福とはいかなくても母さん頑張るから。だからリュー君は私が絶対に幸せにしてみせる 」


 リーネ母様と目が合う。

 強く、真っ直ぐな眼差しで、いつもはまったりと優しい様子とはうって変わり子供の幸せを願うどこまでも強い母親の姿がそこにあった。


「ならば私もついて行きましょう。私はリューク様のものでございます。どこまでも、もお供させていただきたく思います 」


 アリアが堂々と宣言すると部屋内に控えていた使用人達も私も、私もと声を上げる。


「ふふっ、リュークは家の使用人を皆引き抜くつもりかしら 」


 そう言ったのはユリス母様であった。

 その表情はさっきとは反対に優しい表情をしていた。

 年齢は父よりほんの少し上だが年を感じさせない美しさだ。つり目が似合う綺麗な顔立ちでキツそうな印象を受けやすいが根は優しく、貴族としての誇りをも芯の強い人だった。


「あなたが謝ることはありませんよ。なにかあれば私の実家である公爵家も全力であなたの力になるようお願いしましょう。私にも頼ったください。…リーネだけでなく私もあなたの母親なのだから 」


 最後の方は顔を赤くして言った。

 こんな時に不謹慎だが少し可愛いなと思う。


「ユリス母様もリーネ母様も悲観的にとらえすぎです 」


 リーネ母様に続けつ発言したのは長男のクリフ兄様だった。

 僕とは16も年が離れていて次期領主となるべく王都で祖父の手伝いをしている。

 最近では貴族の威厳が徐々に身についてきて父様とよく似ている。


「リュークは頭もいい。人柄も良く人望もある。そんな良い人材を手放す訳にはいかないな 」


「クリフ兄さんは素直じゃないなぁ。素直に俺が守る、とか言ったらいいのに 」


 そうおどけて言ったのはリオン兄様だった。

 リオン兄様は前世風に言うと少しチャラい人だ。けれど思いやりは人一倍強くよく周りを見ている。

 将来、クリフ兄様が領主を継いだ時に右腕となるべく王都で勉強している。


「誰だって苦手なことはあるさ。リュークは頭も良いし、固定能力もある。魔法が使えないなんてよく考えれば些細なことだよ。きっと、リュークは将来大物になるって。なんなら1番出世するかもしんないし 」


「そうだ 」


 急にルーナ姉が大声を上げた。

 今年から学園に通うルーナ姉は昔と変わらずお転婆で、なぜかリーネ母様よりユリス母様に似て強気な顔立ちの美少女に成長している。


「リューは私と結婚すればいいのよ 」


 うんうんと、何故か自信ありげに言う。


「あらあら、心配しなくても私が一生お世話するから大丈夫よ 」


 リリス姉がそう言う。

 リリス姉はリーネ母様に似た優しい顔立ちに成長した。

 年以上に大人びた感じで少しドキドキする。


「むぅ、リリス姉に渡さないもん 」


「あらあら〜 」


 いつもの言い合いに場が和み始める。


「はっはっはっ 」


 父様が急に大声で笑いだし注目を集める。


「私は情けないな、皆の言う通りだ。なにをうだうだ考えていたのだろうか。リュークは何も心配するな皆がたくさんの可能性を言ってくれたように、君の未来には数多くの選択肢がある。まだ4歳なんだ、リュークがより幸せになるように私達は力を貸す。私達は家族なのだから 」


 あぁ、なんだよ。

 心臓がキュッとなり、体がポカポカと温かい。

 異世界も悪くないじゃん。


 ふと、走馬灯のように前世の様子が思い浮かぶ。


 あのさ、忘れるとかそんなんじゃないんだよ。

 父さんに母さんそれに、妹のみく。ついでに優も。

 みんな大好きだよ。

 また、会えるかわかんないけどさ、みんなに紹介したい人達がいるんだ。

 みんなが育てた僕を同じくらい愛してくれる家族ができたんだ。

 それにみんなの事も紹介したいな、僕の愛する自慢の家族を。


 それじゃあ、ちょっくら異世界転生とやらをしてくるよ。

 きっとまた会えるといいな。

 その時のために土産話でも用意しないと。

 その為にも頑張るから…きっとまた。


 涙で視界が滲みはじめる。

 1度流れ始めた涙は止められる事はなく、けれど止めようとも思えない不思議な涙。

 きっと、これは嬉し涙。

 感情とともに溢れる優しい涙。


 でも少し堪えて伝えなきゃ。


「…っみんな。あいしてくれて、ありがとう。僕も大好きだよ 」


 精一杯の笑顔を浮かべてみんな言う。

 空気が一瞬とまり、次の瞬間リーネ母様や、アリアに姉たちが飛びついてくる。

 涙でぼやけた視界の端でユリス母様が出遅れたと少し悔しそうな顔をして、兄様と父様はやれやれといった表情。


 なんだよ、今日は結局最高の日になったじゃないか。


父さん、母さん、みく、見ててくれよ、みんなの自慢の家族の英雄譚を!。



って強気にいいすぎかな。

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