ステータス
ついに4歳になりました!。
相変わらず魔法はからっきしだけど、言葉とか国の歴史とかは本を見たり、話を聞いたりしてかなり理解できるようになった。
そして今日は待ちに待った恩恵を授かる日となった。
特別な日だから、と家族みんながこの屋敷に勢ぞろいしている。
貴族の子供達は7歳になると王都の学校に通う事になるためリリス姉と、ルーナ姉は王都で暮らしていて、今日は久しぶりに帰ってきている。
他に父さんの第1夫人であるユリス・シックザールと、兄で長男のクリフ・シックザール、次男のリオン・シックザールもわざわざ帰ってきてくれた。
この国の貴族は一夫多妻制が許されいて、僕と2人の姉の母であるリーネ母様は第2夫人だ。
ユリス母様は公爵家の娘で、リーネ母様は平民の生まれだが変な確執とかはなく、貴族にしては珍しいほど夫人達の仲が良いらしい。普通は後継者争い云々で仲は良くないところが多いらしい。
ユリス母様達は普段王都の屋敷で住んでいるが長い休みとかには僕達の住む屋敷に帰ってきている。
いつもお土産にたくさんの服を買ってきてくれるのは良いが着せ替え人形にさせられるのはちょっと思うところがある。
だって、女装とかもさせられるんだ。
まあ、自分でも似合っていると思うけど…。
3歳になってナルシストとかではなく前世の美意識から客観的に見て、益々可愛さに磨きがかかってきているきがする。
男だよな僕…。
ま、まあ、何はともあれ家族勢ぞろいは嬉しいものだ。
「それじゃあ、みんな行ってきます 」
教会にはリーネ母様とルークス父様、アリアが一緒にきてくれている。
見送りの人に手を振り、用意されていた馬車に乗って教会へ向かう。
途中窓に流れる街並みは、活気があり見ているだけで楽しくなった。
どうやらそんなに遠いわけではないらしく景色に見入っているとすぐについた。
教会は身長の低い僕からするとかなり大きく見上げるくらいだった。
教会は宗教を信仰する場だけでなく医療や孤児院としての役割を果たしている所もあるらしい。
この世界の宗教事情はあまり知らないが、1つの宗教が主に信仰されていて、宗教国家があり聖女様なるものがいると聞く。
父様に言われるまま中に入ると優しげな風貌の初老の男性がまっていた。
「ようこそ、領主様。お待ちしておりました 」
礼儀良く一礼をし、僕達を案内する。
連れられて入ったのは普通の応接室のような部屋で紅茶や菓子が準備されており、どうやら僕以外はここで待っていないといけないらしい。
「既に準備は済んでおりますのでご子息様こちらへ 」
そう言われ初めて緊張感がでてきた。
「リューク、気負うことはない。司祭様の言う通りすればすぐに済むさ 」
「リュー君ならきっといい結果がでるわ 」
父様も母様もアリアもみんなニコニコしていて、軽く言ってくれたので緊張感がすっと消えるのを感じる。
「はい、ありがとうございます。それじゃあ行ってきます」
意気込みながら司祭の後をついて行くと、祭壇と呼ばれる部屋についた。
祭壇の部屋に入ると空気がガラッとかわり厳かでどこか神々しい雰囲気の空間だ。
奥には大きな像が佇み、窓から差し込む光が幻想的に輝かしていた。
「それではリューク様始めましょう 」
司祭様に促され像の前まで進み片膝をつき、祈るように手を組み、目を閉じる。
「司祭、クロスリーフレットが祈り奉る。世界の創造主たる神々よ、この者、リュークスト・シックザールに道を示し、恩恵を与えたまえ 」
司祭様が告げ終わると同時に体の奥から熱いなにかがこみあげてくるのを感じ、一瞬光に包み込まれる。
なんだ目を閉じてるのに目の前が真っ白に…。
「リューク様、儀式は無事終了いたしました
」
ふと目を開けると優しげな風貌の司祭様がいた。
何故だろうかすぐ終わったはずなのにとても長い時間が経過したかのように感じた。
不思議な感覚だ。
「それでは、お父様のところへ戻りましょう 」
まだ少し浮ついた足取りで皆が待っている応接室へと向かった
「お父様終わりました 」
「おぉ、お疲れ様 」
父様はにっこり笑いながらがしがしと僕の頭を撫でた。
「それで、どうだったのかしら 」
母様は今か今かと目を輝かせながら尋ねる。
「どうとは? 」
「奥様今から説明させていただきます。リューク様心の中でステータスオープンと唱えてみてください 」
なるほどそうだったステータスを知るために来たんだったっけ。
ステータスオープン。
半透明な板のようなものが胸から出てくる。
『名前』リュークスト・シックザール
『体力』D
『魔力』SS
『能力』―
『固有能力』
通訳者
ふむ、いいのかどうかわからん。
「ステータスが表示されたら、私達に見せようと意識向けてくだされば皆に見えるようになります 」
心の中に意識を向ける。
「おぉ、見えたぞ。どれどれ 」
真っ先に父様が覗き込むとそのまま表情が固まった。
「リュー君、私にもみせて 」
母様はステータスを見ると一緒わっと、笑顔になりすぐに表情が凍りつく。
遠目で見たであろうアリアも眉間に皺を寄せている。
あれっ、これはもしかしてやっちゃったのか。
「えっと、どうでした 」
完全に凍りついていた場の空気に耐えられず聞いてみる。
「司祭よ、これはどういうことだ。まさかなにか手を加えたのではないだろうな 」
地を這うような父様の声が聞こえ、今まで見た事のない表情で怒っていた。
「とんでもございません。そのようなことは神に誓ってありません 」
司祭様も慌てて否定する。
「リュー君 」
母様は悲しそうな表情で膝の上に握り拳をギュッと作っていた。
「ああ、リューク様。大丈夫です、大丈夫でございます 」
アリアは僕をしっかりと抱き寄せた。
「なぜだ、なぜこんなことが 」
父様の悔しそうな声が聞こえてくる。
「あの、僕は大丈夫です。取り敢えず家に帰りましょう 」
今の状況は貴族としてあまり良くない態度である。
貴族の発言は公的な場であるほど重みも増す。自分の領地の、それも教会となると迂闊な発言は避けるべきである。
「ああ、すまない取り乱した。司祭も、申し訳ない 」
父様もあまり良くなかったと気づきしっかりと落ち着いてみせた。
「リーネ、アリア帰るぞ 」
母様とアリアはまだ落ち着けてはいない様子でけれど表情を押し殺し黙って父様についていく。
父様は世話になった、といくらかお金が入っているであろう袋を司祭に渡し帰路にいた。
「領主様、神の恩恵はその者にとって全て意味のあるものでございます。リューク様の可能性はまだ消えてはおりません。どうか、神の恩恵、信じて下さりますようお願い致します 」
そうしめくくり僕達を見送ってくれた。
父様は返事はせず少しだけ頭を下げ馬車に乗り込む。
馬車の中の空気は酷いもので、屋敷に戻るのも憂鬱になった。