特訓開始3
『私たちも使えるの? 』
必死に隠そうとしているが嬉しそうな様子がひしひしと伝わってくる。
「ええ、魔法を使えるだけの魔力供給を得たから使えるはずよ 」
僕の魔力量は魔法を使えない僕にとって宝の持ち腐れだった。
それがメロ達によって使われるのは本当に嬉しい。
僕も役に立てるんだ。
なんとも言えない嬉しさが込み上げてくる。
「まずはプルからね。プルは昨日言ったようにヒールスライムと呼ばれる存在で一般的に回復魔法を得意とすると言われてるわ。プルも回復魔法の適正がかなり高いようね 」
回復魔法。
この魔法系統を使うには生まれ持った適正が必要で使える人はかなり重宝されると聞く。
例外として、適正がなくとも教会の司祭様やシスター様は宗教、独自の加護を得ることで回復魔法を使えるようになるらしい。
一般的に教会は前世で言う病院のような役割も担っている。
「回復魔法を使えるなんて凄いじゃないか 」
『プル、凄い? 』
「ああ、凄いぞ 」
『嬉しい、プルプル 』
可愛い。
プルはメロ達とと違い顔と呼べるパーツがないため表情から感情を読み取ることが難しい。
けれど最近は撫でている時の反応やちょっとした揺れ方などで感情を理解できるようになってきた。
普段から感情の起伏が少ないからこうして嬉しそうな姿をみると、愛おしくてたまらない。
『ねぇ、私はどうかな? 』
メロは早く自分も褒められたいといった感じで、シルフィを急かすように聞く。
メロは鳥の中でも子供の部類に入るらしい。
だからこうして、構ってちゃんな姿はほんとに可愛らしい。
「メロは、そうね 」
ジーッとメロを見つめる。
魔法のオーラ、色でどような適正があるか見ているらしい。
精霊はやっぱ凄いんだな。
「滅多に見ない適正ね。恐らくだけど、音を司る適正よ 」
『音? 』
「ええ。昔、1度だけ見たのは歌ったり、踊ったりする事で対象をパワーアップさせたり、逆に状態異常をかけたりする支援系の魔法ね 」
具体的には味方の攻撃力やスピードを上げる効果、敵には逆に攻撃力やスピードを下げたり、幻覚を見させたりできるらしい。
さらに、音を操り気配を消したり音の大小を操ったりとかなり多機能な魔法だという。
『ねぇ、凄い? 』
魔法の使い方に思考を巡らせて黙っていた僕に、ダメだったのかと勘違いしたのか不安そうに聞いてくる。
「ああ、めちゃくちゃ凄いよ 」
メロの頭を撫でる。
安心したようにこちらに体を預けてきた。
『ま、まあ、当たり前かしら 』
なんだろう、僕ってこんなに動物とか好きだったけ。
メロとプルが可愛くて仕方がない。
「メロもプルも凄い!。僕の自慢の従魔だよ 」
そう言って抱きしめるとメロもプルも嬉しそうだ。
「ねー、フーカは 」
そう言いながら抱きついてくる。
精霊なのに、子供特有の体温を肌に感じる。
こうして接していると人間と変わらないように見えるんだよな。
「フーカも勿論凄いよ。みんなと契約できて僕は幸せ者だね 」
やばい、僕もまだ子供のはずが父性が芽生えできてるのではないだろうか。
そんな僕らをシルフィは温かい目で見ている。
「シルフィ本当にありがとう 」
「私は何もしてないわ。あなた自身の力よ 」
ああ、嬉しいな。
人に認められるってこんなに嬉しいことなんだ。
不意に1つの事が頭をよぎる。
(もっと、たくさんの『出会い』が欲しい)
欲しいというのはなんだかおかしい言い方な気がするが、「したい」よりも「欲しい」と思ったのだ。
この世界に生まれて僕に待っていたのは素敵な『出会い』だった。
家族、動物達、従魔、精霊。
今まで出会った人達はみんな僕を愛してくれる素敵な人達。
僕は幸せ者だ。
本当に。
きっとこれから辛い出会いもあるかもしれない、それでも出会ってちゃんと『話し』たい。
ははっ、この世界にきて強欲になったのかな。
優と久しぶりに話したいものだ。
今までと逆の立場で僕がマシンガントークを披露する事になるだろうけど。
なんて途方もない願いが叶った時を想像してさらに幸せそうな顔をするリュークであった。