精霊契約
なでなで甘えタイムが終わり僕の手が疲れきったところで精霊契約講座へとうつった。
「精霊契約は実は契約の仕方自体はほとんど一緒なの、まあ違う点はやっぱり契約をすることの難易度かしら 」
「難易度? 」
「まあ、どちらも難しいのだけど。そもそも、契約するには契約したい精霊、ないしは魔物、魔獣に真名を与えなければいけないの。勝手に名付けるだけじゃ真名とは認められず契約はできない、真に心を通わせた者同士でしか契約は成立しないの 」
それならばペットとかだと生活を重ねる事で仲良くなるし、真名として認められるのではと思ったが、シルフィが言うにはそう簡単ではないらしい。
契約し真名が認められるには仲良くなるだけではない条件があり、まず1つが対等な関係であること、そしてもう1つ、これが中々難しいようで魔力の一定以上の保持だと言う。
魔力量が高いのは勿論のこと質や濃度などが重要なんだとか。
真名を与えるという行為は非常に崇高な事で、契約とは神々、世界の真理など、なにやら難しく高度なものらしい。
もっとも契約自体は名前を付けるだけなのだけど、世界にその繋がりが認められて初めて契約が成されるのだという。
正直、話が難しすぎて子供の脳には追いつけない。まあ、高校生だった前世で聞いても理解は無理そうだ。
優なら理解できるかも、なんて思い少し苦笑い。
「なんで精霊契約の方が難しいの? 」
「まあ、あなたには不思議でしょうね。動物から、精霊まで、何事もなく会話できるのだから 」
ああ、そうか。
普通は話せないのか。
動物達と話せる事は大きなアドバンテージとなるだろう。
言語のコミュニケーションほど心を通わせるのに必要なものは無い。
なんだよ『通訳者』めちゃくちゃ役に立つじゃん。
思わぬ発見で心が踊る。
「多分僕の固有能力のおかげかな。『通訳者』って言って多分だけどほかの種族とも会話できるんだ 」
つい嬉しくて少し自慢するようにシルフィに言ってしまった。
もとより隠す気もなかったけど。
家族にも言ってなかったことがこうもあっさり口から出るとは、それほど舞い上がっているのだろう。
「それに、精霊が見えて、触れるというのも凄い事よ。多分それは貴女の体質ね。特別な星の巡りにより生まれてきたのね 」
それを聞いてドキッとした。
僕が転生者というのも関係があるのかな。
「精霊は普通人間には声も聞けないし見ることもできないはずよ 」
「じゃあどうやって精霊術士は精霊契約するの?」
実は精霊術士という職があるのは父様から聞いていたのだ。
精霊術士には能無しの者が多くいるらしく、可能性の1つとして教えられた。
精霊術はかなり強力で戦力として扱われるが、非常に数が少なく精霊術士になる事自体難しいため高待遇で扱われるという。
「精霊術士のほとんどは精霊の気配を感じ取れる才能があるの。稀、声だけは聞ける人がいたりしたけれど何百年に1人いるかいないかくらいかしら 」
話の途中だがそれを聞いていったいシルフィは何歳なのかと気になったが。
「あら、レディの歳を聞くのは頂けないわよ
」
と笑顔を貼り付けながらも目が笑っていないのが見える。
「トンデモゴザイマセン 」
なぜ見透かされたのだ。
これが年の功ってやつか。
「リューク 」
「キノセイデスヨ 」
シルフィは怒らせるべきではないなと直感しました。
「ふふっ、もう冗談だから怖がらないの。それじゃあ続けるわよ。精霊の気配を感じてどうやら契約に必要な呪文みたいなのを唱えるの 」
「でも、僕は呪文なんて唱えてないよ? 」
まさか、「だるまさんがころんだ」が呪文だったのか!?。
「呪文なんて、人間が勝手にしているだけだもの。実際は精霊がその人を気に入ったら契約できる、つまり運次第ね 」
さすがに、「だるまさんがころんだ」はなかったようです。
「気配しか感じられないのに信用を勝ち取るなんてそんな無茶な 」
「契約の難しさがわかったようで良かったわ 」
『通訳者』があって良かった。
ん、まてよ。
精霊術士、従魔士どちらも将来に役立つ僕の才能じゃないか。
将来の可能性、やっと見つけたぞ。
ならば次にしないといけない事それは…。
「シルフィ様 、僕を立派な精霊術士にしてくださいお願いします 」
大精霊に弟子入り志願など、本当は恐れ多いことなのだろうがこの時の僕は新しい可能性に舞い上がって気づけてなかったようだ。
「ふふっ、必死になって可愛い。仕方ないわね、明日からみっちり教えてあげる 」
シルフィも少し楽しそうだ。
「シルフィ、ありがとう 」
心からの感謝の言葉をめいいっぱいの笑顔で伝える。
「うっ、ど、どういたしまして 」
『精霊様をも誑し込む魔性の笑みもリュークの立派な才能よね 』
メロは真っ赤になった大精霊様を見て言った。
『それに、天然だからよけいにね 』
プルは呆れ声で同意する。
「はははっ、ましょー 」
赤くなったシルフィの周りを飛ぶ回るフーカ。
そんな一幕に気づかないリュークは新たな将来の可能性に心踊り鼻歌交じりで帰路につくのだった。