森で遊ぶ
5歳になると忙しさは落ち着きを見せていた。
やはり僕の覚えがいいのが幸を為したのだろう。
最近のマイブームと言えばこっそり庭から山へ抜け出す事だ。
山でさらに多くの種類の動物達と知り合って鬼ごっこやかくれんぼをするのが楽しくて仕方がない。
別に5歳ならこんなもんだ。
子供っぽい遊びが楽しくて仕方ないのも幼児かした影響だろう。
そうだよきっと。
もちろん父様や母様には秘密である。
バレてる気もするけど…。
この森は比較的に安全なのが見逃されてる理由か、あるいは本当に気づかれていないか、まあ何も言われてないしいっか。
最初はアリアにも黙って出ていったのだが気がつけば後ろにいた。
あの時の、笑顔を貼り付けて怒ってないですよと言いながら目が笑ってないアリアを見て恐怖したのを覚えている。
それからはアリアも参加するようになった。
けれど使用人としての仕事や育成の為にいないこともある。
たまに布教してきます、とか言って来ない時があるけどなにの布教をしているのだろうか。
この国はほぼ1つの宗派が信仰されていたはずだけど、だとしたら普通に何か好きなものでも進めているのだろうか。
謎だ…。
まあ、そんな事より。
「よーしみんな今日はだるまさんがころんだで遊ぶぞー 」
『『『おー! 』』』
みんな早く遊びたいとうずうずしていた。
今日参加しているのは、メロ、気弱なクマのロー、寡黙な鹿のスゥト、陽気なサルの双子キー、ウー、スライムのプルだ。
前世のイメージから野生の動物は人を襲うことがあると思っていたが全然そんな事はなくみんなとても優しい。
そして、前世では見た事のない生き物であるスライムのプルと出会ったのは森に遊びに行くようになって数回たった頃だった。
「今日はなにしようかな 」
最近は毎日充実している。
友達も沢山増えた。
これは友達100人も夢ではないな。
まあ、全員動物だけど…。
でもまあ、動物と友達になると人間ではできないようなこともできる。
例えば背中に乗せてもらって森を駆け回るとか、モフモフさせてもらうとかいろいろある。会話もできるし。
それに地球の生態系と違うところがたくさんあって面白い。
そうこう考えていると、ふと少し先にいる1つの物体に目がいく。
それは明らかに異質で、丸く少し空気の抜けたボールのようで透明感のある薄水色の塊があった。
目が無いのに目が合ったような変な感覚に陥る。
『怖いスライムじゃないよ、プルプル 』
明らかに聞こえてきた声が震えていた。
「そうなの?。えっと、僕も怖い人間じゃないよ。プルプル 」
『面白い人だね 』
「そうかな?。君は、えっとどちら様かな 」
今までに見たことのない生き物だ。
いやそもそも生き物なのか?。
『スライムだよ 』
「スライム? 」
『スライム知らない?』
「ごめんね、初めて聞いたよ 」
試しに撫でてみると程よい弾力に手が押し返され、優しく撫でると、かなりすべすべしていた。
それにひんやりして気持ちいい。
『リューク、遅いじゃない。あれ、その子は? 』
待ち合わせしていた所に来るのが遅いからかメロが迎えに来てくれたようだ。
「えっと、スライムさんだよ 」
『あぁ、そうなのね 』
『怖いスライムじゃないよ、プルプル 』
『ふふっ、私はメロ。よろしくね 』
『あなた達は僕を避けたりしないんだ 』
スライムは驚いた口調で言った。
「当たり前だよ。君が悪い子には見えないからね 」
わざわざ自分で悪いスライムじゃないと言っているし。
「ねぇ、メロ。スライムってどうゆう存在なの? 」
『リュークは知らない?。仕方ないわね、私が教えたげる 』
「あ、ああ。ありがとう 」
メロは少しお姉さん風をふかせて教えてくれた。
簡単に要約するとスライムとは魔物と言われる存在であるという事だ。
あとは、スライムの身体の特長とかを教えてもらった。
さっき撫でる時はちゃんと触れたけどスライム自身が触れられたくないと意識すれば、触れると体にそのまま飲み込まれ、徐々に溶けていくのだと言う。
実際に雑草を飲み込んで貰うと、少しずつだが溶かされていくのが見えた。
スライムは魔物の中ではかなり弱い部類に入るが危険度は高いらし。
スライムは基本的には雑食だが種類によって好んで食べるものは変わり、他には鉱石の体を持つスライムや猛毒を持つスライムいるという。
「メロは物知りだね 」
『ふふっ、もちろんよ 』
そう言えば前世でも魔物という言葉を聞いたが1つ疑問に思った事があった。
ああ、聞いたのはもちろん優からだ。
「魔物と動物ってなにが違うの? 」
『うーん、明確な差はあまりないの。よく言われるのは魔力を持っているかどうかの差ね 』
ほとんどの魔物は魔力を持つと言う。
逆に動物は魔力を持たないものがほとんどだがいくつかの条件しだいで魔力を持ったり魔物に変わったりすることがあるらしい。
魔物は一概に危険な存在とは言えず友好的な種もいて、魔物使い呼ばれる魔物を使役する人もいるのだとか。
『あとは、動物と呼ばれるほとんどが精霊様の加護があるの。魔物はその種類によって加護をもっていないものもいる 』
たしか、精霊様もたくさんの同じものではなく、動物事に違う精霊様から加護をもらっていて、魔物も種類別に違う神や精霊様から加護を授かるらしい。
加護や恩恵についてはまだよく分からないことが多いな。
「教えてくれてありがとう、メロ 」
『ふふっ気にしないで 』
そう言いながら肩にとまり頭を頬っぺにぶつけてきたので撫でてあげると気持ちよさそうにした。
「これから宜しくスライムさん、僕の事はリュークって呼んで。えっと、スライムは名前じゃないんだっけ 」
『私もメロでいいわ。よろしく 』
『わかった、メロってリュークに名前貰ったの? 』
『そうよ 』
『僕も名前欲しいな 』
そう言った声はどこか期待であふれていて目はないのにキラキラと輝かせてるみたいに感じた。
「僕でいいなら 」
『やったー 』
『えっ、まあいいけど… 』
「どうしたのメロ 」
『…名前貰ったの私だけだったのに 』
照れるようにゴニョニョと呟いた。
これはもしや、嫉妬というやつか。
それが分かるとモジモジしているメロがとても可愛く見えた。
そう言えば、メロは他の動物達より特に可愛いよな。
他のもそうだけど前世と違い動物の獣感みたいなのがあまりなく受け入れやすい容姿をしている。
特にメロはなんて言うかもう可愛すぎる。
これが、名付け親の愛着というやつか。
「メロは、お姉さんとして面倒見てあげてね 」
そう言うとビビッと頭の毛をたてた。
『そうね、ふふっ。私がお姉さん、先輩なんだから 』
『それじゃあ名前くれる? 』
スライムさんは心配そうに聞いてくる。
「うん、もちろんだよ。そうだな…。君の名前はプルだ! 」
我ながら安直だが。
すると、プルの体が一瞬ひかり薄水色から白っぽい色に変わっていた。
何が起きたんだ。
『わーい!。マスターありがとう 』
そう言って僕に飛びついてくる。
柔らかくひんやりとして気持ちいい。
この抱き心地は今までで1番かもしれない。
ん?。マスター? 。
「マスターってなにかな? 」
『マスターはマスターだよ? 』
その後マスター呼びや薄白色に変わったのをメロにも聞いたがあまり要領を得なかった。
まあいいか。
好きに呼ばせてあげよう。
『僕はプル、悪いスライムじゃないよ。プルプル。これからよろしくマスター 』