プロローグ
初投稿です!
温かい目で見てくれたら幸いです
夢を見ていた。
中世をイメージさせるレトロな街並み。
少し広い道の両端に溢れんばりの人が集り、どの人の表情も笑顔で目を光らせている。
ポッカリと空いている中央の道には鎧と剣を身につけ、集まった人々に手を振りながら、綺麗に列をなしてゆっくりと歩を進める者達がいる。
大きな旗を掲げ、金や銀の鎧を着た兵隊が先導し、その後ろの者達は人々から羨望の眼差しを浴びる。
きっとこれは凱旋と言うものだろう。
泥がついた鎧も刃こぼれが見える剣も、誇らしげな顔をした戦士たちを際立たせる装飾に変わっていた。
そして、多くが歩いている中、列の中央で馬の上で優雅に手を振る者が数名いる。彼らが真に英雄と呼ばれる人達だろうと直感した。
彼らが進む先には映画出でくるような荘厳な城、そして城門にはドレスで着飾った美しい女性達。
そして、その集団の中でも一際目立つ存在に目がいく。
華奢で幼く、少年とも少女とも取れそうな中性的な美しさを持つその存在は、透き通るようなプラチナブロンドの髪を靡かせながら笑顔で人々に手を振る。
顔はモヤがかかっているようであまり見えない。
親友が好きそうな光景だ。
よく見ようとするとさらにモヤがかかり、一片の光が差し込む。
あぁ、目覚めの時間か…。
瞼が重たい。
ゆっくりと開こうとするが、差し込む光がいつもより強く感じなかなか開くことが出来ない。
それになんだか体が重い。
いや、正確には関節が思うように動かないし、なんだかいつもとは違うような…。
徐々に視界が開けてくる。
なんだか周りの風景がいつもより広く感じる。
いや、これは僕の方が小さい?。
「あら、リューク様、目を覚まされましたか 」
女性の声が聞こえる。けれど、何を言っているのかが分からない。
首は思うように動かせないので声がした方を向けなかったが、どうやら声の主が自ら覗き込んでくれたようだ。
綺麗だ…。
まるで輝いているかのような金色の長い髪に完璧なまでに綺麗に整っている顔立ち、今までに見た事のないレベルの美しさだと思う。
整いすぎていて怖い、といった感じは全くせず、目を細めて微笑みかけてくる姿は例えるなら聖母のようで優しいオーラが溢れていた。
少しばかり見とれてれいると明らかにおかしな部分を見つける。
耳が長い。
それは、今までに見たことがない形の耳でつい手を伸ばそうとするがまったく届かない。
そして、少し伸ばした手が目に入りさらに驚愕する。手が小さすぎる。
僕、赤ちゃんだったっけ。
いや、そんなはずがない。昨日までは、高校生で…。
考えようとすると頭痛が走り思考が停止する。そう言えばいつ寝たのかもよく分からない。
そうか、この状況を僕は知っている。
これはきっと噂の異世界転生と言うやつか!。
僕自身、家が厳しかったためその類の、いわゆるオタク文化に触れたことがなかったが異世界転生についてはよく耳にしていた。
中村 優、自称異世界転生マスター。夢は異世界転生の主人公という癖の強い親友がいたからだ。
いざ転生した時に困らないようにしっかり教授してやる、と何度も聞かされたのを今でも思い出す。てかその事ばかり会話していたような…。
いつ役にたつのかと思いながら彼の話を聞いていたがほんとにこんなことになるとは…。
懐かしい思いをしながら優の教えを思い出す。
『いいかよく聞けよ、異世界転生においてまず大事なのは自分の置かれている状況の把握だ。異世界転生の始まり方には確認すべき2つのパターンがある!』
『1つ目は目覚めた時真っ白な空間で女神に会ったかどうかだ。これにより始まり方は大きく変わる!』
女神…。
目の前の女性も女神と言ってもいいくらい綺麗だけどこれは多分エルフって呼ばれる種族だよね。それに空間と言うより普通に部屋に居るように思える。
やっぱりこれは女神に会ってないパターンだろう。
『しかーし、女神と会った記憶を忘れているという稀な場合もあるので注意だ 』
はいはい、了解だよ。
まるで会話しているかのように脳裏によぎったので少し笑ってしまう。
『2つ目、これは女神に会った後、もしくは会わずに目覚めた時確認すべきことで、赤ちゃんかそうでないかだ。赤ちゃんの場合基本的に貴族の子どもで、赤ちゃんではない場合元の姿か少し若返って目覚める時もあるぞ!』
これはきっと赤ちゃんのパターンなのだろう。なら、貴族の子どもなのだろうか。
まあ、その辺はまだ分からないか。それでも屋根付きのベットなのだから生まれた家はかなり裕福ととれる。
それにしても優は自分が体験してきたかのように自信満々に教えてたな。
ガチャ
そうこう考えていると目の前にはもう1人新しい女性が立っていた。
お母さん…。
きっとそうだ直感的にそう感じる。
先程の女性は別格だが、お母さんらしき女性も凄く美人だ。
おっとりとした感じだが一つ一つの動きが優雅で、上品な笑顔の中に包み込むような優しさを感じる。
ふと、高校生だった頃の事を思い出す。
厳しい父と優しい母。
かなりブラコンな妹に尊敬できる祖父母。
くだらない事で笑いあった友達。
異世界好きな親友。
今での記憶が走馬灯のように浮かび上がる。
あぁ、もう会えないのか。
目の前が涙で見えなくなり、赤ちゃん独特の高い音で声を上げて泣き始める。
「あらあら怖い夢でも見たのかしら 」
お母さんらしき女性は僕をそっと抱き上げ背中を優しく撫でる。
あぁ、落ち着くな。泣きながそんなことを感じる。
ここで新しい人生を送らないといけないのか。
なぁ、優そんなにいいものかな異世界転生ってのは。
みんなともう会えなくなるって状況になってまでしたくなかったよ僕は…。
でもまあ、異世界転生を語る優は楽しそうだったから僕も少しばかり頑張ってみようかな。