〜プロローグ〜
「やった………。ついに無限迷宮完全攻略だ!!」
過去クリア者の居ないダンジョンに挑み、353階層目。
食料の関係もあり、一時撤退を考え出した頃。クリアの証の転移石が出てきた。
「大変だった………。やっと帰れる……」
ーーー
俺はエレイス。
ソロの冒険者だ。
各国を回ってダンジョンをクリアして、後半生を優雅に生きるための資金を集めている。
エルトリア王国に未踏破のダンジョンがあるという噂を聞いたのが約3ヶ月前。
そして、エルトリア王都近郊の町へとやってきたのが1ヶ月半前。
装備を整えて浅い階層の道案内人も雇い、ダンジョンへと挑んで1ヶ月。
やっと最下層へとたどり着いた。
ーーー
「しかし予想外だったな……。まさか通常ダンジョンで300階層越えがあるとは………」
人工ダンジョンでは600階層まであるのもある事にはあるが、自然発生のダンジョンでは100階層が天井とされている。
原因は、そんなに深くまでダンジョンを生成できるほどの魔力の持ち主が自然界にほとんど存在しない事。
自然発生のダンジョンは、通常モンスターの死骸から滲み出る魔力を基に生成されるらしい。
故に、そんなに大量の魔力を持つのはドラゴンぐらいしかいないのだが、ドラゴンの死体なんてのはド級のお宝だからな。死んだ場所には骨一本残らない。
そんなわけで、深くてもたかだか120階層程度だと思っていたのだが。
「ありえん深さだったな………。モンスターも異様にハイレベルだし、道はめちゃくちゃラビリンスだし」
なにせ、10階層ごとの中ボスがワイバーン1匹ずつ増えていく仕様だったからな。並の冒険者だったらこの時点で泣くだろ。
その上、最終回層のモンスターはブラックドラゴン。
白よりは一等落ちるが、ドラゴンの中でも生き残った1パーセントしか黒には育てない、という時点で強さは分かってもらえると思う。
「さて、このダンジョンのお宝はどこかな〜」
大抵のダンジョンには、クリアの証の転移石とは別に宝が生成される。
なんで自然に出来たものからも宝が出てくるのかってのはよく分かっていないが、とにかく大体は宝石やらの類が出てくる。
正直、俺はこれがお目当てだ。
ダンジョン産の宝石類は質がいいから高く買い取ってくれる。
資金集めにはもってこいだ。
「取り敢えず宝物庫を探さないとな…………。しかし、こりゃまためんどくさそうだな………」
ブラックドラゴンとの戦闘場から一本道が100メートルほど続き、通路の壁にはいくつも横穴があった。
「これ全部回るのかよ………。幾つ部屋あるんだ………?」
ざっと数えて50はある。
「戦闘よりも捜索の方が長くなりそうだな………」
ポツリと独り言を漏らし、俺はフッと溜息をついた。