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ワガママ王女は今さっき死にました  作者: あまみや瑛理
とにかくワガママな王女は今さっき死にました
11/15

趣味を読書に変更しました

明けまして、おめでとうございます。

そして、遅くなってすみません。システムよくわからなかったのですが、何名かの方々、ブックマークをつけていただきありがとうございます。







もう数日前の話だが、マリアンヌ先生のお説教を思い出した。

きちんといつ気付いたと言い切ることはできないが、頭の中で整理が行われたからだろう。とだけは言える。

正直なところ、辛いと思ってしまう授業の記憶に、綺麗に重なるように、もっと小さい頃の、当然巻き戻しの怒る前の記憶を思い出した。


やはりマリアンヌ先生に、所作を習った時のことだ。

ただ当時は『最低限』という題が付いても、子供には厳しいと思ってしまうような、お茶会の為のティーカップの持ち方を習った時のこと。

何度頑張って持ち上げても、落としてしまったり、中に入っていた紅茶をこぼしてしまったり、時には割ってしまったりした。

ところがついに、上手くいったのだ。

机の上からティーカップを持ち、口元まで上げ、お茶をほどほどに口に含み、ティーカップのお茶をこぼさずに机の上に戻す事が出来たのだ。

私は確か、嬉しくてしょうがなくて、当然褒めてもらえると思っていた。

だけれどマリアンヌ先生は、褒めてはくれなかった。

それどころか、

「持ち方や姿勢が気になりますね」

などと、手厳しかった。

それが原因で私は、その後もマリアンヌ先生を怖がってしまうのだけれど、同時にそれはつまり、マリアンヌ先生が怒るのは、私に対して真剣になってくれている時なのだ。思うにそれは、比較的わかりやすい表現なのだろう。

そうしてこれは私の、


《いい思い出》


となった。

どうした訳か、前回の巻き戻りでは、めんどくさくても、なんだかんだで先生には素直に従っていた。しかも性格まで治そうとしていたから、怒られる事はなかったから気づかなかったようだ。

だからこれは、今回の巻き戻りによる産物。

ぜひともあの人に伝えたいような、素晴らしい発見だと思う。





そして今日は、二回目の巻き戻りの四日目。


「おはようございます、ルシ王女様」


前回の巻き戻りとも変わらず、今まで通りの挨拶が耳に響く。

だがもう疲れは取れたようで、嫌な眠気はない。


「おはよう、レイチェル。お菓子を頂戴」


眠気はない。

…のだが、何かを忘れていたような気がする。ほんの少しだけ。


「それと……?」

「なんでしょうか」


(えっと…なんだっけ?)


探し物をするように部屋を見渡す。しかし寝室にあるものといえば、ランプにカーテン、あとはベッド、そして机と…。


「あっ!」


それを思い出し、心の声につられたように、声を出す。

机の上にあった本に目がついたのだ。


「どうかなさいましたか?」

「それとね、レイチェル。毒についての本よ」

「ああ、はい」


本当なら、微笑んではいけないのかもしれないが、レイチェルは嬉しそうに微笑む。

実際のレイチェルの心境としては、ついこないだまで無気力で、お菓子にしか目のなかったルシ王女様は、目の前の人とは思えないような人物だった。

それが突然に、自分の意思で好きな事をしようとする姿に、ついつい侍女として嬉しくなってしまっていたのだが、そんな事などはもちろん、ルシ王女は全く知らないでいる。

なので今のルシ王女は若干、レイチェル、毒に関わるとなんだか怖くなるな、と本能で感じてしまっていた。

まあ、何はともあれ、ルシ王女は喜んでいたのだ。

そんな喜びの理由は安堵。

毒という私の今回の生の鍵を、すっかり忘れて、一日を無駄にところだった。


「はい、どうぞ」


レイチェルはそういって、淡い深緑のドレスに着替えた私を、クッキーと本の山を目の前に置いた席に座らせた。

山とはいってもたかが数冊の本。

なのに、とても多いように感じてしまうのは、これまでレイチェルのあの小説以外に読もうとして本を見た事がなかったからかもしれない。

だがやはり、

「多い…」

「そうですか?」


そう言ってレイチェルは、少し離れた席から、不思議そうに顔を上げて言った。

なぜ顔を上げたかというと、レイチェルが手早くも、既に一冊の本を読み始めているからだ。


「女官長の下で働いている頃は、このくらいの量は遅くても四日で読み終わりましたね」


そういえば言い忘れていたが、昨日からというもの、レイチェルは懐かしい、よそよそしくない様子に戻りつつ、違う。正確には、変化しつつあるのだ。

そして前回の巻き戻りのように、時折女官長や女官長の下にいた頃の話をしてくれる。

これが本当嬉しくてたまらない。


「とはいえ、女官長は読む本の量が尋常じゃありませんので、私達としては、知識量ではとてもじゃありませんが、追いつけませんでした」

「そうなの…」


一応は頑張ったんですよ、とレイチェルは訴える。

どう考えてもとても大量の本に見えるのだが、女官長が日々読む量に比べるとまだまだ少ないらしい。あの部屋の様子を見ると、言われてみればそうかもしれない。

もし女官長より多くの本を読もうと決めたとしても、まるでうまく行く気配はない。こうなればやはり、いつかは女官長の力を借りる必要がある。

心の片隅にそれを記録して、ルシ王女は本の山の一番上の厚い本をとった。

そして丁重に、表紙から開く。


『危険な毒 入門編』


随分と物騒な題名だな、と自分で選んだ本の背表紙をみた。

そしてもう一度、表表紙の題名を推し量るように見てからページを開き、ゆっくりでも着実に読み進めていった。

一冊目の中盤で、そろそろ疲れて来た時に前で物音がした。それは丁度レイチェルが六冊目を取った時だったが、負けんと焦らず文字を追い、少しずつ本の知識を取り入れていったのだ。

そしてようやく読み終わった一冊を、ぶっきらぼうに机に置いて伸びをする。

今朝の私の行動は歴史的なすごい努力だ。当然そんな事はないと承知の上で、自分に拍手を送る。

レイチェルが許すなら、チョコレートクッキー10皿分の贈呈を行いたいくらいだ。そう思ってレイチェルをそっと見ると、丁度、十一冊目の本から目を逸らしたところだった。

運良く目は合わなかったが、ルシが二冊目に手を触れた時、レイチェルが意図せず作られた長い沈黙を破る。


「もうっ。ルシ王女様は、また一皿チョコレートクッキーを空にしてしまって」

「やっぱり、少ないくらいじゃない。だって難しい文字ばかり並んでいて、頭が痛くなるんだもの。それに、やっぱり女官長の作るチョコレートクッキーは格別だもの」


うう。疲れた。

再び伸びをして、目を泳がす。

すると性格はいつまでも治らないな、なんて余計なことを考えてしまった。

そしてまた気だるくなってくる。


「でも、女官長様もお仕事があるんですからね。いつまでも毎日毎日、女官長様にクッキーを焼かせないでください」

「ん……わかってるわよぉ…」


見る限り、とてもそんな事は出来そうにないけれど。

そうしてルシ王女と、ルシ王女に付き合わされたレイチェルは本を読み続けた。

朝起きてから授業が始まるまで、授業が終わってから寝るまで。この間に本を読む事は、新しい習慣としてルシの生活に取り入れられるようになる。


「今日は手の空いている日なので、時間は感じるだけでいいので、楽ですね」

「ええ、そうね」


こないだのマリアンヌ先生のお説教を、つい思い出してしまう。もう、あんな思いは嫌だ。


そして絶品チョコレートクッキーの代わりのお菓子を片手に、本を読み続けた。


「もう集中力が切れたー」

などというと、

「いいんですか?勉強でき無くても」

とレイチェルは脅す。


ふてくされて続きをちびちびと読んでいるといつしか日が昇りきった。

その頃丁度睡魔が遅い、レイチェルは他のメイドや執事と一緒に寝室へ横にしてくれたようで、目が覚めた時にはすっかり日が暮れて、すっきりとした頭で横になっていた。

そしてまた本を読むと、ついに十冊の本を読みきった。その時にはもう夜になっていて、レイチェルは私が寝ていた時に借りてきた新しい本を読み始めていた。

負けずとがんばっていると先程に比べ、早く疲れ切ってしまった。


「まだ起きているの?レイチェル」


私がまた横になっても、レイチェルは本を離そうとしない。


「いいんです。あと半分なので読みきってしまおうと思います」


もうそろそろ遅い時間なのにと、レイチェルが心配になったが、そう、と黙っておくことにした。





しかし翌朝。つまり巻き戻り二回目の五日目。


「おはよう、レイチェル」


ベッドからでて声をかけても返事がないので、ドレッサーの方まで足を運ぶと、レイチェルは机に伏せるように寝ていた。

熟睡中のレイチェルの片手には、また昨晩とは別の本が握られていた。

その隣に座り、お菓子を片手にまた本を読む。


どのくらい時間が経ったかわからない。本に集中するあまり、レイチェルがさりげなく本を読みだしたことに気がつかなかった。

そんな中、レイチェルは突然に叫んだ。


「あっ!大変です!」

「どうしたのレイチェル。また眠くなってきちゃった」

「何行ってるんですかっ!授業が始まると言っているんですよ!」

「えぇっ!」

「早く着替えてください」


勉強熱心で、私にとても優しくしてくれるレイチェルだけど、以前から思っていたように、少々おっちょこちょいのようだ。

そして今日も、微妙に遅れそうになりながらアーモンド先生の授業をした。


「御機嫌よう、ロイ・アーモンド先生」

「おはようございます。ルシ王女」


そしてこの授業が終わると、今日もまた、本を読んだ。読み終わった本を『王宮の書庫』へ返しに行き、新しい本を借りて、日が暮れるまで読んでいた。

そうしてレイチェルには無理をしないようきつく言って、五日目は終わった。





「おはようございます、ルシ王女様!」


巻き戻り二回目の六日目。

レイチェルは寝不足でもなく、すっかり元気になっていた。

そして朝も夜もやっぱり、お菓子を片手に本を読む日々を繰り返した。


「レイチェル、もうこんなに読んだの!」

「こんなになんかじゃありませんよ。こんなけ、です」

「それでも、私はまだまだ読みきれてないの」


何か早く読めるようになる方法はないものか。


「どうすればいい?」

「大丈夫です、たくさん読んでいたら自然と早くなりますよ」


なんて簡潔っ。

そうして頑張り続けているのだが、はっきり言って実感は、ない。

ちなみに勉強についてだが、もう十分だということで、全然やっていないが、アーモンド先生は気を悪くはしていない。けれど、前回の方が先生への受けは良かった。

こうして、六日目も終わっていく。

そういえば今回は、レイチェルと中庭には行かなかった。まだ本に乗っているから、また日を改めてからにしようと思う。

このお話ももうすぐ半年。今後ものんびりとした描き進め方ですが、よろしくお願いします!

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