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異世界で侍女やってます  作者: らさ
第2章
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第5話

読んで頂きありがとうございます。

更新遅くなってすみません。

「うーん。じゃあ、アリシア様には実のお兄さんのウィル皇子、イーガル皇子の他にあと2人お兄さんがいるんだ」

「そうよ。お姉様は3人で妹様はおひとりね。でもね、一番きれいなのはアリシア様だと思うわ」

 メイは、王都で有名だというお菓子屋さんの焼き菓子を頬張りながら言う。


 私はメイの部屋で、彼女に書いてもらった、国王とその家族の家系図みたいな物を前に悩んでいた。正妃とか側妃とかよくわからないし、それぞれに子どもたちがいて複雑すぎる。


 国王と2年前に亡くなった正妃の間にウィル皇子、イーガル皇子とアリシア皇女がいて、北の側妃と東の側妃の間にもそれぞれ子どもがいるって。すごくない。全部で9人だよ。

 そもそも側妃ってのが、よくわからない。北の国と東の国から来ているから政略的な意味で嫁がされたんだろうけど・・・・。王妃になれないのが、わかってて嫁いでくるなんてつらいだろうな。


 私も焼き菓子を口にした。

 うわっ、なんだこれ! 口の中の水分が全部持っていかれる。慌てて、お茶を口にする。

「美味しいでしょう」

 メイはニコッと笑って言うけど、これは日本だったら絶対売れないよ。

「そうだね」

 笑顔で返答しておく。せっかくお招きしてもらったのに、気を損ねたら悪いもんね。



「イーリアス王国って、周辺の国からみたら弱いの」

「ううん、弱くはないと思う。中くらいかしらね。アリシア様が嫁がれる西国のカートリア皇国の方が、国力は少し上かもしれない。恐ろしいのは南の国のライデントよ。ライデントとイーリアスの間には大海って呼ばれる海があるんだけど、50年くらい前にライデントが、大海を越えてイーリアスに攻め入ってきて戦争になったことがあるの。結構苦戦したみたい。結局、イーリアスはカートリアに同盟を申し込んで、ライデント国を撃退したらしいわ。それからライデントは、ずっと沈黙してる。国交がないからどんな状態なのかわからないのよね。大海を挟んでるから商人からの情報もあまりないし」

 メイはお茶をつぎ足しながら話してくれる。


 カートリア皇国とイーリアス王国は国力としてはほぼ同等なんだな。そして北の国と東の国の国力は弱いんだ。南の大国ライデントか。私が、この世界にいる間にまた戦争が起こったら嫌だな。うん、やっぱり早く日本に帰らなくちゃ。


「北の国と東の国は、王族の姫をイーリアス王国に差し出しているんだ」

 私がポツリと呟くと、

「そうね。お二人は対称的なのよ。北の側妃のナタリア様は、お顔立ちは少しきつめなんだけど、白銀の髪に紫の瞳がとてもきれいなの。スタイルもとってもよくて、流行のドレスの着こなしも素敵なの。東の側妃のフロンシーヌ様の、お顔立ちは平凡ね。でも持っている雰囲気がとても優しいの。私たちみたいに、身分の低い者にも微笑んで下さるわ」

 メイは私に焼き菓子を勧めながら話す。一応、1枚頂いておく。

「空いてる王妃の座にどちらかが着くの?」

「そうね。いつまでも空位にしておくわけにはいかないものね」

「メイは、どちらの方が王妃に相応しいと思っているの」

「ナタリア様よ。ガレル国王の隣に立っても遜色ないもの」

 メイの口調は、何バカなこと言ってるのとでも言う感じだった。

 私だったら優しい人に王妃になってほしいけど、見た目が重要なんだ。


「メイはアリシア様やウィル皇子を狙っているのって誰だと思っているの」

「よくわからないわ」

 メイは困惑した表情を浮かべ、お茶を口にした。

 あまりこの話はしたくないみたい。


 ウィル皇子は、皇位第一継承者だから、彼が国王になるのを良しとしない者が狙っている可能性があるよね。そうすると、側妃たちが怪しいんだよね。よくあるじゃない、自分の子どもを皇太子にしたいって考えて暗殺するとか。

 でも、アリシア様についてはわからないんだよなぁ。嫁いじゃうんだし。カートリアとイーリアスの関係が良好になるのを良しとしない者がいるって、どういうことなんだろう。

 あまりにも情報が不足してるよね。考えても仕方ないか。



「ナナってどんな子だったの」

 私は話題を変えた。

「可哀想な娘だった。いつもロビィとイライザにいじめられていたわ。彼女は男爵家の出身だったから、アリシア様の侍女の中では一番下位の身分だったのよ。仕事ができるから、皇女付きになることができたんだろうけど。不幸だったわね」

 メイは立ち上がってランプの灯を強くした。

 窓の外に目を向けると、日が暮れようとしているところで、空は紫色とオレンジ色に染まっている。部屋の中が薄暗くなってきた。そろそろ帰った方がいいんだろうけど、ナナのことは聞いておきたい。


「皇女に毒入りの食事を運んだのはナナだったの。もちろん、ナナや私たちはそれが毒入りだなんて知らないわよ。でも、ロビィとイライザはナナが毒を盛ったんだろうって、毒見をさせるようになったの」

 メイはため息をついた。ほんと、ひどい話だよ。

「誰も止めなかったの」

 私の問いにメイはゆっくりと頭をふった。

「アリシア様は2人を諫めたけど聞きはしなかったわ。ナナも責任を感じていたし、身の潔白を証明したかったみたいね。だから、イアン様はナナが食事を口にする前に鼠で試すようにしていたの。それでも、ナナは食事を口にするのが恐ろしかったのね。日々痩せていった」

「そして、ある日私と入れ替わったってわけだ」

「そうなるね」

「彼女が何かに強く願っていたとか、入れ替わりを実施できる魔術師みたいなのがいたりとかするのかな」

 私の問いにメイは目を丸くして笑い出した。

「強く願ったって入れ替われるものじゃないでしょう。魔術師って何それ。ハナの世界にはそんなことができる人がいるの」

「いないよ。可能性の話。そんなに笑わなくなっていいじゃない。こっちは帰りたくてしょうがないのに」

 思わず口を尖らせて抗議する。

「あっ、ごめんなさい。あまりにもビックリしちゃって。そうだよね。ハナは帰りたいんだよね」

 メイの言葉に頷いた。

「ごめんね。入れ替わりなんて初めて見たし、元への戻り方もわからないわ。力になれなくてごめんね」

「うん、いいよ。きっと難しいんだろうからさ」

 思わず長い溜め息が洩れた。また入れ替わることは、本当に難しいんだろうな。

 ナナは私の家でなにをしているんだろう。不安なく、ご飯を食べることができているのかな。それについては、良かったなって思うけど、やっぱりいい迷惑だ。



「私はハナが羨ましいけどな」

「羨ましい?」

「そうよ。ラインシート様と一緒に暮らせて、皇子やセイン様と話すことができるなんて、羨ましすぎるわよ」

「ふーん」

 やっぱり、この3人はモテるんだな。やだなぁ、普通がいいのに。モテる人たちと親しく話せるなんて、嫉妬されまくりじゃないか。

「ふーんって、超・超モテるのよ! 特にラインシート様は! ハナはなんとも思わないの?・・・・あっ、お父さんって言ったんだよね・・・・」

 メイは興奮して話してたけど、皇女から聞いたお父さん発言を思い出したのか、微妙な顔をした。

「うん。だって過保護なんだもん」

「くーっ、う・ら・や・ま・しーい!」

「じゃあ、今度ラインシート家に遊びにおいでよ。今日のお礼にさ」

 そう言うと、メイはガバッと音をたてて私の手を握った。

「ぜひ! いつ行っていい!」

「う、うん。サイアス様に聞いてからでいいかな」

「わかった! 絶対だよ」

「うん」

 私が頷くとメイは瞳を輝かせて、何を着ていこうとか、手土産は何にしようとか話し始めた。


 そんな中、ガルト君が迎えにきたとの連絡を受け、私はホッとして帰途についたのだった。




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