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異世界で侍女やってます  作者: らさ
第1章
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第2話

読んで頂きありがとうございます。

ブクマ登録とても嬉しいです。これからも頑張りますので宜しくお願いします。

今回は、副団長視点です。

「サイアス、その娘は本当に異世界人なの?」

「えぇ、おそらく」

 部屋の奥で近衛騎士に守られていたアリシア姫が私の元に進んで来た。

 彼女はイーリアス王国の第一王女だ。プラチナブロンドの髪、グリーンの瞳、バラ色の唇、すらりとした容姿は多くの国民を魅了してやまない。また、容姿ばかりでなく理知的で、19歳と若いのに外交センスも良く、民や周辺国からは“イーリアス王国の至宝”と呼ばれている。


 先日、隣国のカートリア皇国に輿入れすることが決定したばかりだ。


 イーリアス王国は近隣諸国との微妙なバランスのなかで国力を保っている。アリシア姫は才媛だ。他国に嫁いでもうまくバランス調整できる手腕を持っている。しかし、この縁談を良く思わない輩がこの国にいるのも事実だ。先日、毒殺未遂事件が起きたが、実行犯、首謀者ともに未だ捕らえることができていない。


 アリシア姫の元に不審者が現れたと聞いた時、まず暗殺者を疑った。しかし、その場にいたのはこの世界では見たことのない衣服を身につけた黒目黒髪の小柄な少女だった。私が駆けつけた時、彼女はニールの手首に蹴りを入れ剣を叩き落としたところだった。一連の動作には隙がなくつい見とれてしまい、ニールを止めるのが遅くなった。



 泣き疲れて、くたりとしてしまった異世界人を医務室に連れていくため抱き上げた。この状況で寝られるとは豪胆なのか、馬鹿なのか。軽く溜め息をつく。


「つらそうね。現実を受け入れられなくて逃避しちゃったのかしら」

 アリシア姫が心配そうに少女の顔を覗き込む。少女の眉間には軽く皺が寄り、顔中に涙や鼻水が付着してべたべたしている。正直、抱き上げたことを後悔した。


 そんな少女の顔を、お優しいアリシア姫は手巾で拭ってやっている。

 姫は逃避などとおっしゃっているが、先ほどのニールへの悪態をみていた者としては、この異世界人がそんなやわな神経を持ち合わせているとは思えなかった。

 ニールはまだ固まったままだ。奴はメンタルが異常に弱いんだ。特に顔に関してはダメだ。根拠のない自信をもっているんだからな。これで数週間は使い物にならないだろう。一体、どうしてくれるんだ。



「ねぇサイアス、この娘が現れた時に同じ場所にはナナがいたの。ナナは一体どこに行ってしまったのかしら?」

「ナナ? 事件以降、志願して毒見役をしていた侍女ですか?」

「そうなの。ナナが淡い光に包まれたかと思った瞬間、更に光が強くなって、眩しくて眼が開けられなくて・・・・光が収まったらこの娘が立っていたのよ」

 アリシア姫は小首を傾げた。



 不可思議な・・・・。

「イアン、報告を」

 この場の責任者の騎士イアンに状況報告を求めた。


「はい。アリシア姫のおっしゃる通りです。姫が食事をなさろうと席に着き、毒見役のナナがスープを口にしようとした瞬間、彼女の周囲に淡く光る小さな光の玉の群れが出現しました。光の玉が彼女を包むと、突然光が強くなって彼女の姿が見えなくなったんです。光が収まると、この少女がナナのいた場所に呆然と立ち尽くしていたのです。私は、彼女の着用している衣服や珍しい黒目黒髪から不審者と判断し近衛騎士たちに剣を構えるよう指示しました。あとはラインシート副団長もご覧になった通りです」

 イアンは話し終えると少女の顔を覗き込んだ。

「一体、何者なんでしょうね。ナナはこの子の世界に行ってしまったんでしょうか」

「わからないな」

 私とイアンとアリシア姫は少女に目をやり同時に溜め息をついた。



「サイアス、不審者はどうした。捕らえたか、まさか逃げられたわけじゃねえだろうな。んっ、どうしたニール、なんでそんなとこに突っ立ってんだ。あ゛? 不審者に顔を指摘された? 何言ってんだニール、お前はこの騎士団一の美形だ! 自信を持て、自信を! ハハハ」

 大声で笑いながら近づいてくるのは、騎士団長のジャック・ジャン・ダフルだ。彼は子爵家の三男という地位から近衛騎士団長にまで昇りつめている。貴族社会の中では異例のことであり、彼の努力が並大抵のものではないということがわかる。口さがない人々は騎士団長には不適格だ、品がないなどと言っているが、イーリアス王国の剣聖ダニエルから、剣の指南を受けることができた者は彼だけだ。それに、意外に気配り上手で、団長として信頼できる面も多く、殆どの団員たちに慕われている。ニールは団長の声掛けで動き出すことが出来たようだ。


「このちっこい動物はなんだ」

 団長は私が抱き上げている少女の鼻をつまんだ。

「不審者です。無害のように見えて彼女の体術には隙がなく確実に適所を突いてきます」

「ほーっ、おもしれえな。こんな可愛い顔して体術か」

 団長は少女の顔をしげしげと見つめる。

 可愛い・・・・? アリシア姫とイアンと顔を見合わた。


「そっ、そうね。こんな変な衣装ではなくドレスを着せて、髪を整えて・・・・黙って座ってたら可愛いかもしれないわね」

 アリシア姫が慌てて取り繕うが、フォローになっていない気がする。


「とりあえず医務室だ。セインに診てもらえ」

「はい」

 私はこの場を団長とイアンに任せ、少女を抱きかかえ医務室へと向かった。



 王城の医務室の扉をノックし中に入ると、宮廷筆頭医師のセイン・セオドアが書類から目を上げ、立ち上がった。

「副団長自らいらっしゃるとは、一体何事が起っているんですか」

「異世界人だ」

「まさか! あぁ、本当に珍しい容姿ですね」

 セインは私に駆け寄ると少女の顔を覗き込んだ。


 数百年に一度現れるという異世界人。彼らは国の保護下に置かれ、生活を監視されながら一生を終えていく。彼らの中には、環境に慣れずに精神を病んだ者、保護下から逃れ野垂れ死んだ者、反抗的な態度を示し続け獄中死した者などの記録が残っている。しかし一方で、良き伴侶に巡り合い、幸せに一生を終える者や異世界での特技を活かして充実した生活を送った者もいたという記録もある。


 この少女は、この世界でどう生きていくのだろう。それともナナと入れ違いに自分の世界に戻ることができるのだろうか。


「へーっ、なかなか可愛いじゃない」

 セインは、私から彼女を受け取った。彼は女性のように細身で、銀髪にグリーンの瞳と眩い容姿だが、腕力は強く少女を軽々と抱き上げている。

「油断はするな。近衛騎士を2人戦闘不能にした」

「うわっ、すごいね」

 セインはゆっくりと少女をベットに横たえる。



「で、なんで寝てるの? この娘」

「ここが異世界だと理解した途端に号泣して、疲れたのか寝てしまった」

「ふぅん、心が逃げちゃったのかな」

「かもしれないが、言動は結構図太かったぞ。ニールが固まったからな」

 ニールが衝撃を受けたまま固まった様子を思い出し、溜め息をついた。

「えっ、ニールが。顔のことでなんか言われたの? 」

「ブツブツが多い、清潔にしろと怒鳴られたな」

「はーっ、なんてひどいことを言うんだ。それじゃ彼は2週間は使い物にならないね。また、僕のところに通って来るんだろうな」

 セインも溜め息をつく。

「団長がフォローしたがどこまで効くか」


「わかったよ。取り扱い要注意だね。覚醒したら団長と君に連絡すればいいんだね」

「あぁ、そうしてくれ」

 私は、現場に戻るべく踵を返した。


 その時「うぅ、豚汁・・・・」少女の寝言が聞えた。

 トンジルとはなんなんだ。推測するに、あの木製の椀の中に入っていた食物だろう。

 腹が減ったのか? 私は強い疲労と脱力を感じながら医務室の扉を閉めた。




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