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女神の算術

 生活科の教科書は絵や図が多く、オーグにも理解しやすい物だった。

 では、皇帝オーグや文官たちに理解しにくい教科書は何だったのか。


 それは、算数の教科書である。


 算数の教科書は基本的に計算式ばかりで、ぱっと見ただけではどんな内容か想像できない。国語の教科書も似たようなものだが、挿絵は複数が関連付けられ配置されるので、なんとなく物語をいくつも収めた物であることが想像できる。図形はまだ先、たまに文章題の挿絵がある程度では何が書いてあるか理解できないのだ。

 これも、理沙に内容を確認することになる。



「ここはね、九九の説明です!」


 算数の教科書、小学校2年生レベルでは簡単な足し引きに加えて掛け算を学ぶことになる。割り算は3年生からなのでまだであるが、それよりも重要な要素が教科書にはあった。


「数字……このような考え方があったとは!」


 掛け算のみならず足し算引き算以前に、「数字」が帝国には無かったのだ。



 これまでの帝国では、計算式を「1+1=2」を「いちたすいちはに」と書くような状態だった。

 初歩の計算であればそれでも大きな問題にはならないが、数字が大きくなるにつれ、「数字」の概念はより重要性を増してくる。「999」を「きゅうひゃくきゅうじゅうきゅう」と書かれると分かり難いのだが、その分かり難さが計算ミスを誘発してしまうからだ。


 このアラビア数字と同じような、この世界の数字も一応は存在する。

 しかし、この世界の数字は秘匿された特殊なものであり、一般には知られていない。書類仕事漬けである皇帝ですら数字の概念を知らなかった事から、その秘匿性の高さがうかがえる。

 要は、本当にごく一部の知識人が自力で考え付き、暗号のように自分だけで使うのがこの世界の数字だったのだ。



 オーグは数字の概念を知ると、その有用性にすぐさま気が付く。

 書類上で数字の多寡が分かりやすくなると、どれだけ書類仕事の効率が上がるか。計算ミスをどれだけ防げるか。

 少し考えれば誰にでも分かるように思われるかもしれないが、それを指摘できるのは、既に数字の事を自身が知っていて数字を常識と認識しているからだろう。


 これはぜひ国中に広めねばならない。そう、オーグは決意を固めた。


「文官を集めろ! これより「数字」について説明を行う!!」



 こうしてバーン帝国の皇帝オーグは「数字」を発明した皇帝として歴史に名を刻む。

 それだけでなく掛け算までだった算数の教科書を解析し、独力で割り算の存在に至り、計算の基礎を確立することとなる。

 その影響は経済、建築、自然科学、その他多くの分野に広がっていく。


 オーグ帝の時代は文化が100年進んだ。


 後にそう称されるほどの切っ掛けは、7歳の少女が持ち込んだ一冊の教科書だった事は、どの歴史書にも記されていない。

みんな大好き、アラビア数字。

知識チートの基本だと思います。


他にも単位系の統一など、「たったそれだけ」と思われる事かもしれませんが、基礎となる学術ほど重要というお話。

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