女神と皇帝の時間
各種球技は、もともと戦争の様なものだ。人の死なない戦争、そう言いかえても良い。
なかなか跳ねないボールを使っているのでバスケはラグビーのような形に変わっていったが、それでも帝国内の王国がその名誉をかけて戦う場へと変化していく。人死にの出る奴隷たちの殺し合いも人気があったが、それ以上に人死にの出ない球技は自分たちも手軽に出来る物として平民にも広がっていく。
そして代理戦争の競技として球技は流行っていくのだが、そういった名誉ある戦はスポーツの祭典の形を取り、帝国が消えようとも続くようになる。
帝国の名は、オリンピックと共に後世へと伝わるのであった。
それはまだまだ先の話として、球技以外の遊具も作られる事になった。
「えい、えい、えーいっ!」
「おお、上手いではないか。新記録だな」
理沙がやっているのはもぐら叩きである。
一昔前のゲームセンターですら骨董品のアレである。いくつも空いた穴からモグラが頭を覗かせるので、出てきたところを叩く遊びである。
電気などがあるはずもないので、モグラの挙動から叩きの成功判定まですべて人力でやっている。モグラの出し入れをするのは兵士の皆さんのお仕事で、成功判定は文官が2人体制でやっている。
一回遊ぶのに、6人ほど用意する必要がある。
「がんばりました!」
「おお、そうだな。では、次は余が挑むとしよう」
オーグも理沙に続いてもぐら叩きに挑む。
動体視力や反射神経で幼児に負けるほどオーグはおっさんではない。鍛えられた戦士の身体を持つ、成人男性である。
よって、本気で挑めば接待プレイなどではなく、普通に理沙のスコアを上回る。
「わー! へーか、すごーい!!」
どこかの動物な友人を思わせる言い方で理沙がはしゃぐ。勝負であれば負けたとしか言いようがないのだが、その程度の事を気にするタイプではない。
凄い事は凄い、楽しい事は楽しい。理沙はそんな幼女なのだ。
理沙に褒められオーグも満更ではない。
皇帝という立場上、どうしても恐怖や打算が前提のおべっかを聞き飽きているため、純粋な称賛は耳に心地よいのだ。
なお、このもぐら叩きが一般に流布することは無かった。
さすがに人手がかかりすぎる物なので、一部の人間の間に贅沢品の一つとして知られる事になる。
電気で動く物でも、いくつかは人力その他で代替品を作る事が可能です。
コスパや動力源の都合で広まらないものの方が多いように思いますが、再現可能か不可能をか問えば可能な物も多いと言う事で。




