女神降臨
バーン帝国皇帝、オーグは悩んでいた。
父から帝位を継いだのはいいが、何をすればいいのか分からなかったからである。
別に、オーグは仕事ができない人間ではない。
通常の業務はきっちりこなすし、部下が優秀であったため帝国はいい感じに運営できている。
しかし、それだけなのだ。
帝国千年の繁栄の為には、それだけでは足りない。
何か新しい事をしないといけない。
戦争で広がる領土に対し、「今が上手くいっているから大丈夫」などと言うのは楽観論ではなく自殺願望である。
部下を10人使うのと部下を100人使うのが全く違うように、国を10征服した後の統治と100征服した後の統治が同じでいいはずが無い。
かといって軍拡路線を止めれば現状維持も出来ずに帝国は破綻する。外の国を征服し、領土と奴隷を手に入れねば今の帝国は成り立たないのだ。戦争を止めれば、などとはとても言えない。
戦争を続ければいずれ帝国は破綻する。戦争を止めればすぐに帝国は破綻する。
なのに何をすればいいのか分からず、ただゆっくりと時間が過ぎていく。
オーグはこの状況を打破したくとも打つ手が無いことに焦っていた。
そんな時、彼の前に救いの女神が降臨した。
その女神は身長1mを少し超えたぐらいで、黒髪黒目の、幼い娘であった。
女神は赤い鞄を背負っており、綿に似ているがよく分からない材質のどの地方の物とも似ていない服を着て、黄色い帽子をかぶっていた。
幼い女神はキョロキョロと周囲を見て、オーグを見て、自分が全く見たことの無い、どことも知れない場所に居ることを理解して、
「うわーん、おかぁーーさぁーーーーんーーーーーーーー!!」
大声で泣き出した。