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後夜

 いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

 ふと目が覚めてスマホに目をやると23時半だった。まだ2017年3月31日は終わっていなかった。

 だが、あと30分のうちにアイツはあらわれるのだろうか。もったいないオバケ……なんだか、あらためて考えるとおかしくなってくる。


 突如インスピレーションがオレを襲った。イヤな予感ってやつだ。

 オレはボストンバッグに入れた現金を確認した。ジッパーを開いた瞬間、予感は絶望という名の確信に変わった。

 ねえよカネが! オレの全財産が……。

 震える手でバッグのなかをまさぐった。札束の代わりにオレの手にヒットしたのは1通の手紙だった。



親愛なるミスター青木へ


 ご機嫌いかがかな、ミスター青木。この手紙を読んでいるきみは、いま超ブルーな気分だろうと推察します。

 だって手紙以前にこのボストンバッグに入っていたものが、そっくり消えてしまったわけだからね。

 きみが用意した数百万円……私にとっては端金だしたがねだが、ありがたくいただいて行くとしよう。私に盗めないものはないのだよ。

 きみはいま、鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていることだろう。わけがわからない、と思う気持ちはもっともだ。

 何から説明しよう。私が誰か、て? まあまあ、それは最後に取っておこう。楽しみは後のほうがいい。


 さしあたって、きみはあの「もったいないオバケ」が何者なのかをしりたいんじゃないかな?

 あれはねサギ師だ。オバケが実在するかどうか、私は門外漢だが、すくなくともあれにかぎってはオバケではないと断言できる。

 彼女は業界では、めんそーれ吉田と呼ばれている。本名は誰もしらない。しったところで意味などないだろう。ケチな手品師マジシャンだ。


 めんそーれ吉田はきみを狙っていた。きみに暗示をかけたんだ。

 ごく初歩的な催眠術さ。それできみをその気にさせた。現金を用意させるような流れにね。

 果たして、きみは吉田の思惑どおりに動いた。ボストンバッグに札束を入れて彼女の登場を待った。

 現金を彼女に盗まれる可能性をきみは考えなかったのかい。

 彼女がオバケだから? 甘いね……まあそこが吉田の狙いだったってわけ。


 彼女は今夜きみの部屋にあらわれるはずだった。もちろん前回とおなじオバケ然とした演出でね。

 ところが、そこに邪魔が入った。この私だ。

 私はいわば泥棒の元締めだ。素人から盗む泥棒をプロと呼ぶならば、私はプロしか相手にしない。

 吉田女史は幸運にも私のターゲットになることができたのだよ!

 そんなわけで、きみを網にかけた彼女は私の網にかかり、結果的にきみの財産は私がいただいたと、こういうわけだ。


 吉田女史がその後どうなったか、て?

 さあ……いまごろ偽札の詰まったボストンバッグを床に叩きつけてでもいるんじゃなかろうか。

 それではそろそろ失礼するよ。つぎの仕事があるのでね。



 きみの親友 怪人20面相より

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