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異世界往還の門番たち  作者: 葦原
五章 シンギュラリティ
219/321

22.普通①

 橋本肇の誘いは、長命寺桜にとって少々唐突なものであった。

 富士高地ランドは高速バスで二時間ほどかかる距離にある。

 肇がなぜその場所を選んだのかは定かでない。決して気軽とは言い難い距離にある遊園地を選んだ理由を、行きの車内で桜は問い掛けざるを得なかった。

 肇は無邪気で意味深な笑顔を見せると、スマホの画面に目を落としながら、

 

「いや、ちょっと面白そうだと思ってさ」

 

 とだけ言った。

 凝ったジェットコースターで有名なパーク。たしかに楽しそうではあった。

 ただ、連休でもないただの週末に遠出をするほどではない気がする。桜はそう思ったが、突っ込んだ質問はしなかった。わざわざデートに水を差すほど大きな疑問ではないし、早起きをして出掛けるくらいはさしたる負担でもない。

 それに、大きな出来事があると予期していたのも手伝った。

 おそらく今日、自分が望めば、肇との関係性は変わる。桜にとってそれはとても大きなイベントだ。ありきたりな場所では少し寂しい。

 

 肇との時間はあっという間に過ぎる。

 二時間の道程も、車内で話していたらいつの間にか目的地に着いていた。富士の山麓に拓かれた遊園地はこの季節にしては盛況といっていい賑わいで、その頃にはもう、行き先に関する疑問は忘れてしまっていた。

 

「いきなり乗っちゃう? すごい速いジェットコースターあるらしいじゃん」

「いーね」

 

 両者ともに、悪戯を思い付いた子供のように笑ってパンフレットを広げる。

 その傍ら、やけに目を引く二人組が桜と肇を追い抜いて行った。

 外国人の姉妹と思しき銀髪の少女達だ。

 姉の方は桜と変わらないか年上かといった年頃で、一瞥しただけにも拘わらず、目に焼き付いてしまうような美貌であった。

 濡れ髪の少女達はあけすけに笑いあいながら歩き去っていく。ざわつくような心地になった桜は、肇の横顔を見た。

 

 しかし、彼は遠く見える垂直降下型のアトラクションを眺めていたらしい。桜の視線に気付いて首を傾げた。

 

「なんかあった?」

 

 あんなものと比べられてはかなわない。そんな馬鹿な考えが桜の頭を過ぎったのだが、肇は目もくれていなかったらしい。

 考えてみればむしろそれが当たり前の反応で、桜はむしろ視線を奪われてしまった自分を少し奇妙に感じた。

 まったく知らない外国人の姉妹。そのはずだったが、桜は、なにか違和感のようなものを彼女たちに覚えた。注視してしまったのはそのせいだ。

 去り行く背中を見つめると眩暈のような感覚がある。かすかに、薄く透けたモヤのような光が見えるような気がした。

 

 不思議な燐光は目を凝らすと見えなくなった。

 寝不足のせいかな、と目頭を押さえてから、桜は笑顔で応じた。

 

「ううん。なんでもない」

 

 あまり寝ていないのは確かだったが、高揚した気分のおかげか不調らしい不調は感じていない。一日中遊び倒すことだってできそうに思える。

 先導するように歩く肇の後を、浮かれた気分で続く。すると、花壇を備えた噴水公園に行き当った。

 花々が一面に広がる、いかにもパークらしい景観を歓声と共に眺める桜だったが、その脇のベンチに腰掛ける人物の姿を見止め、驚きに声を上げた。

 

 高梨明人。

 彼は何をするでもなく、穏やかな顔を花壇に向けていた。肇にも桜にも気付かず、またいつもの、どこか遠い場所を見るかのような目をして止まっていた。

 

 偶然にしてはできすぎている。

 彼が自分たちを冷やかしに来たわけではないだろうことは、様子からしても一目瞭然だ。事あるごとに距離を置きたがる明人の普段の言動からしても、それはない。悪ふざけのためにわざわざ週末に、それも遠方まで足を運ぶとは思えない。

 だとすると、

 

「ははっ、ほんとに居たな。高梨のやつ、アプリの位置情報ずっとオンにしてっから。しっかしあいつ、こんなとこで一人……なわけねーか。誰か待ってんのか」

 

 桜が問うより早く、肇がスマホを取り出して自白した。

 悪戯がばれた時の子供のような笑顔だった。

 

「なんでこんなこと……」

「んー……なんで、か。いろいろ理由はあるんだ。高梨が俺らの誘いを断ってまで誰とこんなとこに来てんのか気になったとか。いや……そんなのはついでかな」

 

 肇は笑いながら言った。

 

「桜にはっきり選んで欲しかったんだよ。いまのうちに」

「いまのうち……って」

「わかんねーけど、そのうちあいつは……高梨はどっか、俺たちの手の届かないところに行っちまう気がする。家族のこととかで」

 

 そうかもしれない。

 いや、肇の言うとおりなのだろう。桜も奇妙な予感を持っていた。

 高梨明人にとって今の生活は一時的な変化の過程にすぎないのだと。

 現に彼は一度は休学し、学校を離れている。叔母に引き取られたという彼の生活基盤がどれほどしっかりとしたものなのか、桜には分からない。しかし乏しい社会経験から客観的に考えても、彼の立場はいささか不安定なものに思える。

 もしかすると。

 肇や桜と一線を引いているのはそういった理由からではないだろうか。また事情が変わり、自らが芥峰を去る可能性も考慮して周囲に接しているのではないだろうか。

 そう考えれば、彼の目が自分たちを遠く見る理由が理解できる。説明が付くような気がした。

 

「なんつーか、俺らが……話せるっつーか……友達になれたのはあいつが居たからっつーか。高梨に居て欲しいんだよ、俺。口悪いしよくわかんねーとこも多いけど、おもしろいし、良い奴だし……なんか恥ずいな、こういうの」

 

 恥ずかしそうに頬を掻く肇。

 桜は僅かに考え、素直な気持ちを吐露した。

 

「……うん、うちもそうだよ。同じ」

「だよな」

 

 本人には絶対に言わない。顔の紅潮を自覚しつつ、桜は固く誓う。

 そして、肇の続けた言葉はおおむね予想通りのものだった。

 

「でもさ、俺のそういう気持ちと桜の気持ちは……同じかもしねーけど、ちょっと違うかもしれねーとも思ったんだ。ほら、男と女だし……さ。そこだけははっきりしとかねーと……」

 

 肇の口ぶりには年相応の脆さが垣間見えた。

 人気者で自信家の彼にも恐れはある。人に踏み込んでいく恐怖。否定されるかもしれないという恐怖。そして、自分が劣るかもしれないという恐怖。桜は動揺しながらも、どこか納得していた。

 

「橋本くんって、ほんとに高梨のこと好きなんね」

 

 友情には尊敬が必要だと桜は思う。

 ひとつでも尊敬できる点がなければ、一緒には居られない。そしてその尊敬は対抗意識や劣等感にも繋がる。友情とは、それらの要素が複雑に絡み合った縒り糸のようなものだと桜は考えている。

 照れくさそうに笑う肇は否定も肯定もしない。彼と高梨明人の間に前学年から僅かな交流があったのは知っているものの、目立ってつるんでいたという印象は最近までなかった。きっかけは何だったのだろう。桜は僅かに思いを馳せ、それから目の前の問題へと向き直った。

 

 肇への答えを選ばなくてはならない。

 遠回しな告白に他ならない問いへの。

 

「……違わないって。同じだよ。橋本くんと同じ」

 

 なにも、わざわざ肇と明人を天秤にかけることはない。

 誰がどのように関係を進めようと三人が友人であることは変わらないはずだ。明人は桜に特別な感情など持っていない。仮に肇と桜が関係を進めようと、本人が言うように祝福するだけだろう。

 仮に彼が離れていくとすれば、肇が危惧するような、なにかやむを得ない事情があるのだ。そう考えた。そこに肇と桜の問題は関与しない。関係ない。

 そもそも、自分もあの変人に対してそんな――恋愛感情などはないのだ。いっさい。そのはずで、肇の気持ちを受け入れない選択肢はない。有り得ない。

 答えは最初からひとつだった。

 普通はそうだ。

 

「……お、おう。そっか」

「ん」

 

 安堵したかのように微笑む肇に、桜も微笑みかける。

 懸案は終わった。

 そう切り替えて二人で花壇へと視線を送った。

 

「じゃ、高梨に挨拶しとく? 合流……はちょっと考えちゃうけど」

「一緒に来てる相手次第じゃね。まさか来瀬川センセーじゃねーよな」

「……いくらなんでもそれはないっしょ」

「わかんねーよ。あいつ、センセーと付き合ってるって噂あっから」

「あはは……」

 

 知っている。肇の冗談半分、半分は本気といった感の言葉を受けて桜は引き攣った笑みを浮かべた。

 

「そっちは……割とマジに可能性あるんだよね」

 

 だったらどう、ということはない。生徒と教員にあるまじき不適切な関係があったところで桜は勿論、肇も口外はしないに違いない。

 そも、あのふたりなら――天地がひっくり返るような何らかの奇跡が起きて互いにそういう感情が芽生えたとしても、社会や周囲への筋を通してプラトニックな――精神的な繋がりだけに留めるのではないだろうか。

 

 そうだ。

 何も問題はない。ないはず。

 落ち着かない心でそう考え、桜は頭を振った。

 そうして意識して一歩を踏み出し、奮起する。

 

 いっそ確かめてしまえばいい。

 疑惑を疑惑のままにするからこそ、もやもやと考えてしまうのだ。

 のしのしと歩いて明人のもとへ向かう桜と、慌ててそれに追従する肇。両者の接近に気付いたベンチの少年は、視線をゆっくりマリーゴールドの花から外して彼女たちを向いた。

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 別に長い間放心していたわけでも、寝ていたわけでもない。

 その場に現れるはずのない級友たちの姿に気付かなかったわけでもなければ、遠巻きに何事かを話し合ってるふたりの邪魔をしたかったわけでもない。

 永いあいだ胸につかえていた重みが僅かに消えた今の俺は、控えめに言って悪い気分ではなかった。

 いや、俺は気分が良かったのだ。

 だから多少、彼ないし彼女たちの青春模様に付き合ってみてもいいと思っただけだ。席を立ってミラベルや来瀬川教諭と合流するのを、少しだけ遅らせてもいいと思っただけなのだ。他意はない。

 

 花壇の傍を大股で歩いてくる長命寺は、いかにもお洒落をしているといった気合の入った私服姿だった。その向こうに見える橋本も似たり寄ったりの服装で、その様子からしてもあからさまに逢引。いや、異界(クリフォト)の若者らしくデートと形容するべきだろうか。

 俺も思いがけない休日を過ごしている最中とはいえ、朝っぱらから行楽地でデートをしている連中と比べれば幸福度に天地の差があると言えよう。仮に俺が陪審員なら有罪に一票を入れるところだ。

 

「困るな……まだお祝いの言葉を考えてない」

「っさい! 何も言うな!」

「ご祝儀の準備もだ」

「言うなってんでしょ!」

 

 俺の第一声たる戯言をぴしゃりと一喝し、長命寺は複雑な――本当に複雑な感情を湛えた表情で俺の前に立った。

 そうして何事かを口にするのかと思いきや、目だけを動かして辺りに注意を払う。何かを探っている、らしい。今時点で探られて困る腹のない俺はとりあえず彼女を無視し、どこかばつの悪そうな笑みを浮かべる橋本へと手を上げた。

 

「よお橋本。偶然だな、でいいのか。それとも偶然じゃないのか」

「……お前さ、分かってて言ってるだろ。意地が悪いぜ」

「まあ、こんな偶然が度々あっても困るな」

「度々?」

「いや」

 

 瑠衣のことを思い浮かべるが、よくよく考えれば富士に一番乗りしていたのは彼女で俺達が後追いであるので言えた義理はない。

 橋本と長命寺がどうやって俺の居場所を特定したのかは気になるところだが、今すぐ聞き出さなければならない類の話ではないだろう。俺は襟足の辺りを掻きながら切り出した。

 

「で、だ……本当ならこんなことを直接言いたくはないんだが、俺は邪魔者になる気はない。ふたりでよろしくやっててくれ」

「よろしくって……高梨、お前たまに言い回しが変だよな」

「ほっといてくれ。じゃあな」

 

 フッと笑みを浮かべて踵を返す。一匹狼は静かに去るのみだ。などと恰好をつけて歩き去ろうとするのだが、俺は襟首を掴まれて足を止めた。

 

「ぐえ」

 

 目尻を吊り上げた長命寺である。

 

「あんたはこんなところで何やってんのよ。ひとり……なわけないでしょうし」

「それを何故お前たちに説明せにゃならないんだ……?」

「興味本位」

「なんだそりゃ。どういう理屈だ」

「ウザ。いいから答えなさいよ。なんかやましいことでもあるっての?」

「馬鹿な。そんなもんはない」

 

 開き直った長命寺にグイグイと襟を引っ張られる。もちろん俺にやましい事情などは決してないが、まさか馬鹿正直にご説明差し上げるわけにもいかない。だいいち、高地ランドに居ること自体はただのなりゆきであって明確な目的があってのことでもないのである。

 

「強いて言えば、むかし家族で来たことがあったんだよ。だからかもな。ちょっと景色を眺めてた。それだけだ」

 

 よって、そう説明するしかない。

 今の気分としてもそう表現するしかなかった。こう言えば断片的に事情を知るだろう長命寺が面食らって口を噤むのも、同じく橋本が気の毒そうな眼差しを向けてくるのも、当然予想できていたとしても、だ。

 しかし俺としては、もう、わだかまりのようなものが晴れている。

 

「まあ、もののついでみたいなもんなんだけどな。別の用事で近くに来てたまたま寄っただけ……ああ、そういやここのホテル温泉があるぞ。せっかくだしお前らも入っていけよ」

 

 軽い調子でそう告げると、長命寺も橋本もほっとしたような顔を見合わせた。

 

「……ホテルで温泉? 趣味が渋過ぎるでしょうよ」

「ははっ、高校生のやることじゃねーなあ」

「いやまあ、たしかに俺の趣味ではないんだが……意外に悪くなかったぞ。実に悪くない。ワビサビスシゲイシャ、だ。富士山も見える。味わい深いもんだ」

「いたく気に入ってるし……いくつなのよあんたは……」

 

 感慨深く富士の雄姿を見やり頷く俺だが、長命寺は苦笑いである。

 

「でも、なるほどね。ひとりでこんなところに居たから、昨日の夜はイルミネーション眺めてたってわけか。納得」

「ああ、いや。ひとりじゃない。連れがいて……」

 

 口にしてから気が付いた。

 ミラベルと来瀬川教諭にそろそろ声を掛けた方がいい頃合だろう。橋本と長命寺の邪魔をするつもりがないのも本心だ。なのだが、当人たちは別のベクトルで思考を走らせたらしい。

 

「つ、連れ……!? 泊りがけで……!?」

「高梨お前まさか……!」

「……お前らが今想像しているようなことはまったくないがな。ここに居るのは本当になりゆきで、色気のある話じゃない。まあ説明も難しいんだが……」

 

 言いながらスマホの画面に指を走らせる。ミラベルと来瀬川教諭に連絡をとるつもりだったのだが、通知欄に表示されたニュースのテキストに俺は思わず指を止めた。

 甲府で若者が失踪。平時であればわざわざ通知されるようなニュースにはならないのだろうが、各地で失踪が頻発しているような異様な時勢であれば別なのだろう。最近、関連する検索をこの端末で繰り返しているのも無関係ではないかもしれない。端末のGPS位置情報も合わせて、検索エンジンが気を利かせているのだろうか。

 そこまで考えて、橋本が俺の居場所を特定した手段に思い至った。GPSだ。端末の位置情報だろう。いまひとつ記憶にないが、過去の俺がそういった類のアプリを導入していたのかもしれない。

 割合重要度の低いその推測は一旦記憶の片隅に追いやり、異界(クリフォト)の技術に感謝しつつニュースを斜め読みする。消えたのは地元の中学生で、時間帯は昨日の午前から午後の間。警察は事件と事故の両面で捜査中とのことらしいが、十中八九、事件だろう。

 昨日会った永山警視は空振りだったと言っていたが、警察でまずまずの地位に居るだろう彼が、わざわざ線の薄い可能性を追って甲府まで来ていたとは思えない。はぐらかそうとした、と考えるのが自然だろうか。迂闊で読みやすい人ではあるが配慮はできる人でもあるらしい。

 

「高梨もニュースとか見んのね」

「おい、覗くなよ」

 

 五秒程度で思索を切り上げた俺は、身を乗り出して俺のスマホを覗き込んでいた長命寺と橋本に視線を合わせた。

 

「甲府か……近ぇな。そういや一昨日は芥峰の駅前でも騒ぎがあったよな」

「あー、あれね。でもあれ、なんかの事故っぽかったじゃん」

 

 思案顔の長命寺の言葉に俺は眉をひそめる。

 

「見たのか? あれ結構遅い時間だったろ」

「芥峰のファミレスで桜とメシ食ってたんだよ。ちょうど帰る頃だったな」

「橋本……ひーちゃん先生が日没までに帰れって言ってたろうが。なにかあったらどーすんだ」

「スマンスマン。ちょっと盛り上がっちまってさ」

「本当に気を付けた方がいい。この頃のこれはマジでどっかおかしい」

 

 そんなことを告げると、橋本と長命寺は気まずそうに視線を交わした。気分が盛り上がったのは違いないようだが、さすがにその内容まで首を突っ込もうとは思わない。糖度で心が殺されそうだ。

 

 にしても――杞憂だろうが――

 

 俺は頭を振り、画面に指を走らせながら橋本と長命寺に提案する。

 

「連れと合流する。お前らも来い」

「は? 急にどうしたんだ」

「いや、なに。親戚と来てるんだが瑠衣……小比賀瑠衣って子の演奏を聴きに行く。賑やかな方がいいかもしれない」

「小比賀? A組の?」

 

 橋本が怪訝そうな顔をする。長命寺も似た反応だ。瑠衣の印象からしても目立つ生徒ではないのだろうと納得する。

 

「どういう繋がりなんだか」

「それが分かったら苦労はないんだがね」

 

 バリバリと頭を掻きつつ歩き出す。「どういう意味?」「さあ」と首を傾げる長命寺と橋本も後に続いてくる。

 近辺で事件が起きたからといってここでも何かが起きるとは限らない。しかし、どんなに僅かでも不安材料は潰しておくべきだ。ふたりの逢引に水を差すような真似をしてでもか、というと微妙な線ではあるのだが――言い知れない不気味さがあるのは確かだ。

 まだ絵が見えない。人の手か、それとも別の何かか。

 それさえ見えてこないのだ。念を押して押し過ぎるということはない――

 

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