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42.記憶

レイス戦の続きです。

僕らは再び迫って来たレイスから、

一旦、距離を取ると作戦を開始した。


「淡雪、それじゃあ敵が仕掛け弓の上にきたら言ってくれ。

 その際、どのあたりかも指さしてくれ」


分かりました、と彼女は答える。


「ですが、それで罠にちゃんと命中しますでしょうか。

 貴方様の視点では罠は隠れていて見えないと思いますが」


それは大丈夫だ、と僕は頷く。


「10階層でかなり適当に狙ったのに命中したからな。

 おそらく、狙ったものならば必ず当たるだろう」


「分かりました。では少し失礼します」


そう言って、いきなり淡雪が僕を抱きかかえた。


突然の事に狼狽するが、

彼女は構わずに僕に語り掛ける。


「罠の場所は魔力音で検知しております。

 また、その種類につきましても、

 レポートの内容を暗記していますのでご安心下さい。

 ただ、仕掛け弓の罠の上へ、

 うまくレイスを誘導する必要がございます。

 ただ、それにはどうしても素早く移動しなくてはなりません。

 周囲には罠が張り巡らされておりますので、

 そういう意味から言っても、

 不躾ながら貴方様を抱えて行動せざるを得ません。

 何卒お許しを頂きますように」


オートマターのもっともな意見に、

これは誤算だったと思いながら口をつぐむ。


彼女は僕を抱えたまま、

何度目かのレイスの攻撃を躱すと、

敵の頭上を飛び越えて反対側へと降り立った。


「まっすぐにこちらへは向かってきませんね。

 再び透明化して、右へ左へと移動しながら、

 徐々に近づいて来る模様です」


なるほど。ならばやはり、動いている状態では、

発動に5秒かかる大地の書で攻撃する事は難しそうだ。


ですが、と淡雪は続ける。


「ある程度、移動方向の推定値は算定できました。

 今から5秒後にあちらの罠へ矢を放ってください」


そう言って僕を下ろした彼女は、

罠が設置されている箇所をまっすぐ指し示す。


僕はなれないへっぴり腰で弓を構えると、

いい加減な体勢のまま矢をつがえた。


そしてちょうど5秒後、淡雪が「今です」と

声を上げた瞬間、必中の矢を放ったのである。


その矢は決して鋭くもない、

ひょろひょろとした軌道をしばらく描いてから、

何もない地面へぽとりと落ちた。


すると、ばちん、という音が鳴り響くと、

どこからか目にも留まらぬ速さで矢が飛んで来た。


そして次の瞬間。


「オォォォオオンッ」


という地獄の底から鳴り響く怨嗟の如き悲鳴が、

ボスフロア中に轟いたのである。


明滅するようにレイスが姿を現した。


そしてその腹部と思われる部分には、

鋭く突き立った矢が見て取れる。


それは一瞬の光景であり、

レイスは再び透明となり消え失せるが、

間違いなく罠がいのだ。


やりましたね、と声を掛けてくる彼女に

僕は、作戦通りだな、と頷きながら、


「ところで淡雪レイスの体力を覚えているか」


と尋ねた。


無論、完璧な記憶力を有する機械人形だ。


すぐに答えを返してくる。


「150、でございますね」


僕は頷きながら、


「そうだな。だから5回、仕掛け弓を発動させるぞ」


そう言うと、彼女もこれについては

すぐに意図を察したらしく、


「えっ、ああ、なるほど、承知致しました」


と返答をする。


そんな調子で、次々とレイスを仕掛け弓の罠へと誘導しつつ、

必中の矢を使ってダメージ与えて行った。


5回目の悲鳴がボスの口から漏れたところで、

僕は淡雪に声を掛ける。


「よしこれで」


はい、と彼女も答える。


「これで残り体力は35になったはずです」


よし、じゃあ後は分かっているな。


そう問い掛ける僕に、淡雪は淡々と頷くと、

僕を伴ってやはりレイスを罠に引っ掛けるため移動する。


そして再び彼女の合図に合わせて矢を射ると、

やはり同様に奴の呻き声が耳朶じだを打った。


だが、先ほどまでとは違い、その声が止むことはない。


しかも、ダメージを受けた時だけ、

一瞬、姿を現すレイスが、

なぜかずっとその全容を露わにしているのである。


まあ、それもそのはず。


なぜなら、今レイスが引っかかっている罠が、

トラばさみなのだから。


一瞬で効果が終了する仕掛け弓と異なり、

トラばさみは相手を捕まえるとしばらく離さない。


それはスケルトンキングで検証済みだ


そして僕はふところに忍ばせておいた

大地の書を取り出す。


また、淡雪には背嚢リュックから取り出した松明を渡した。


僕は時を置かずに、レイスへ向かって

大地の書の発動を念じる。


恐ろしいボスモンスターを相手に5秒はあまりに長い。


だが、トラばさみの罠は30秒は相手を拘束できる。


スクロールの魔力を感じ取ったのか、

レイスが必死にその場を離れようともがくが、

がっちりとレイスの体に食い込んだ罠が

それを許さない。


ついに書物の魔力が解放され、

ちょうど奴のいる地面一帯から鋭く大地が隆起すると、

拘束されたレイスの体に幾つもの石の棘が突き刺さった。


だが、レイスは大きなダメージを負った様子を

見せるものの、まだ致命傷には至っていないようだ。


「やはり、これでは倒せないか」


僕が改まった口調で呟くと、

松明たいまつに火を付け終わった淡雪がそれに答えた。


「それはそうでございましょう。

 なぜなら、13階層で確認しました通り、

 大地の書のダメージは30でございますから」


うん、と僕は頷きなら、


「そうだな。そして、松明のダメージは5。

 奴の残り体力もこれで」


「ちょうど0、でございますね」


そう言うと、淡雪はレイスの方へ

火の付いた松明を放り投げる。


それは放物線を描き、レイスの頭にこつりと当たった。


そして、ジュッ、という物が焼ける音がしたかと思うと、

レイスの口からこれまでとは比べ物にならないほどの絶叫が上がる。


だが、そんな悲鳴もむなしく、

松明から燃え移った火がすぐに奴の体を燃やし始めた。


そうしてしばらくするとレイスの姿は本当の意味で

跡形あとかたもなくなっていたのである。

ここまででレイス戦終了です。

フラグ管理が大変すぎました(白目)


次の更新までしばらくお時間をいただきます。


また、短編を書きましたので気が向かれたらお読みくださいませ。

『ドラゴンステーキいっちょ上がりッ!』

http://ncode.syosetu.com/n8769cv/


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