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37.油断

前の話の続きです。

「アークア様の言葉を繰り返せば、


『その上位種のゴーストナイトがいた。

 戦ったことのないやつもいるだろうが、

 Cクラスのモンスターだ。そんな奴らがうろうろしてる。

 魔法を使うスケルトンメイジに、

 素早く動くゾンビファイターにも出会った』


 との事でしたから、Cクラスのスケルトンキングを

 撃退した私たちに倒せない道理はないでしょう」


無論、敵に関する詳細情報がないという事実は

重く受け止めるべきでしょうが、淡雪は続けた。


そうした意見も聞いたところで僕は結論を下す。


それに実は少し試しておきたい事もある。


「地下15階層へ下りよう。今まで通り、

 リスクは極小にする努力は続ける。

 1体で行動するモンスターを探してくれ。

 ああ、ゴーストナイト以外で頼むな」


彼女が「なぜでしょうか」と聞いてきたので、

僕は「罠がくからだよ」と答える。


淡雪は了解の意を示し、

魔力音の分析を開始しようとするが、

不意に僕の方へ振り向いた。


「ただ、如何でしょうか。

 危険性を出来るだけ排除されるなら、

 すぐに階段に逃げ込めた方が良い様に思えます。

 モンスターは階層を越えられませんので。

 検討条件にその点を付け加えても宜しいでしょうか」


彼女の意見を僕が喜んで快諾する。


数秒後、淡雪が分析結果を報告するために口を開いた。


「スケルトンメイジかゾンビファイターの内のどちらかが、

 階段を下りたすぐ近くで単独行動しておりますね。

 と言いますのは、どうやら、15階層から19階層まで、

 モンスターの種類は全部で3種類しかいない様なのです。

 そのうちの1種は非常にゆっくりと移動する特性を

 示しておりまして、これが恐らくゴーストナイトと思われます。

 階段近くの敵はそうした動きではありませんので、

 少なくともゴーストナイト以外のモンスター、という訳です」


彼女の報告に僕は納得しつつ、


「そのモンスターでいいだろう。早速向かうとしよう」


そう返答し、地下15階層へと歩き出したのである。


・・・

・・


次のフロアへと下りると、淡雪の先導に従って、

狙いのモンスターが通りかかる付近まで移動した。


そして、ちょうど近くにあった

催眠ガスの罠の手前で待機すると、

敵が現れるまで3分ほど息をひそめる。


この階層からのモンスターは詳細情報がない。


必然、いつも以上に緊張感をともなう時間となった。


だが、そんな張りつめた心意気も、

結局の所、この後、無駄になってしまったのであるが。


数分後、通路の先に現れたのは、

骸骨の体にすり切れた暗黒色あんこくしょくのローブをまとい、

杖をたずさえたスケルトンメイジであった。


奴はこちらを見付けると、

しゃれこうべの歯をカタカタと鳴らし、

僕らの方へ向かって来る。


しかし、数メートルを歩いたところで

催眠ガスの罠にまんまと引っかかり、

その場所で倒れると動きを静止させたのだった。


だが、相手はCクラスのモンスターだ。

油断する訳には無論、行かないだろう。


僕は淡雪に、近づくことなくナイフによる投擲とうてきで、

相手に攻撃するよう指示を出す。


彼女もステータス情報が明らかになっていない敵へ

考えなしに突撃するような猪武者ではない。


命令通りナイフを取り出すと、力を込めてその凶器を

夢の世界に旅立っているモンスターに投げ放った。


すると、何ということだろう。

予想だにしないことが起こったのである。


渾身の力を込めた機械人形の一撃は、

スケルトンメイジの頭蓋骨どころか上半身すらも破裂させ、

敵を本当の意味で違う世界に旅立たせてしまったのだ。


いや、まだ気を抜くには早い。


何せ死霊系モンスターである。

死んだと見せかけて復活する可能性もゼロではないのだ。


そう考え直して気を引き締め直していると、

彼女が淡々と戦果を告げて来た。


「魔力音の消失を確認いたしました。

 モンスターの討伐とうばつに成功したようです」


今度こそ僕は呆気にとられてしまう。


「おかしい。同じCクラスのスケルトンキングは、

 さすがに淡雪の攻撃でも1撃じゃあ倒せなかった。

 同じクラスのスケルトンメイジが

 こんなに弱いというのはどういう事なんだ」


はあ、と淡雪は首をかしげつつ、


「分かりかねますが、ボスのCクラスと、

 雑魚モンスターのCクラスでは、

 意味合いが異なるのかもしれませんね」


ううん、と僕は唸りながら、

上半身が吹き飛んだモンスターへ近づくと、

現れたドロップアイテムを回収した。


「なんだこりゃ、藁人形わらにんぎょうか。

 どういう効果があるアイテムなんだろう」


彼女に聞いてみるが、レポートにはないそうで

分からないらしい。


とりあえず背嚢リュックへと放り込む。


「まあ、一撃なのはわかった。

 ただ、今のだとちょっと分からない所があったな。

 よし、今度は起きている状態で戦ってみよう。

 単独で行動するスケルトンメイジを探してくれ。

 もちろん、階段の近くがいい」


それでしたら、と淡雪は答える。


「次の階層に下りた方が早いですね。

 幸い、下り階段は近くにございます」


僕は彼女の言葉に頷き、早速、移動を開始したのである。


・・・

・・


先ほどと同様に待ち伏せをしていると、

スケルトンメイジが現れた。


こちらへある程度近づくと足元に魔方陣が広がるのが見えた。

しゃれこうべの口がカタカタと上下している。


もしやあれが呪文の詠唱えいしょうなのだろうか。


「貴方様、今ならば隙だらけです。

 ほふってしまわれますか」


そう言って人形が凶器を放とうと投擲の構えを見せるが、

僕は待ったをかける。


「いや、一度発動させてみたい。だが、かわせるか」


その質問に淡雪は何でもないように頷いた。


「大丈夫ではないでしょうか。

 さほど強い魔力の音ではありません」


そんな事を話している内に、敵の魔術が完成したらしい。


光球がスケルトンメイジの頭上に浮かんでおり、

そこから放電の凄まじい音が鳴り響いている。


サンダーボールと言うのが適当だろう。


あんな攻撃をまともに喰らえば僕などきっと、

ひとたまりもあるまい。


絶対に避けなければならない。


そう決意した瞬間、物凄い力で頭を押さえつけられた。


「な、なんだ」


僕は大いに混乱したのである。

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