第6話
「何の、真似だ……」
ラミアの振るった剣は地面に突き刺さっていた。
「私には、人は、殺せない……」
俺は戸惑っていた。この隙に、ウォーターショットを叩き込めば、ラミアは殺せないまでも、ダメージは与えられるはずだ。いや、逃げればいい。武器がないラミアなら、街まで逃げ切ることも、不可能ではないはずだ。だが、俺は。
「魔人のくせに、変わってるな。」
「うるさいわね、殺すわよ?」
「悪かったな……」
どういう訳だ? 俺はコイツに惹かれているのか? 外見は可愛らしくとも、中身は凶暴な魔人だぞ?
「あんた……よく見たらいい男ね。で、一人でこんなところにいるってことは、その年で親のお使いかしら?悪いお姉さんに食べられちゃうわよ?」
「親は昨日死んだ。今は一文無しでソロの冒険者。今は薬草の採集に向かっているところだ。」
「あんた…………一文無しってことは、お腹減ってるでしょ? これでも食べる?」
差し出された木の実を、俺が疑うことはなかった。不思議と、疑えなかった。
そして俺は木の実を食べる。何故か、美味しかった。
「決めた……あんた、ほっとけない。私あんたについていくよ。」
「魔人は街に入れない。知っているだろう?」
「街の外で一緒に暮らせばいいじゃない。あんたも一人でお仕事するより私がいたほうがいいでしょう?」
「それは、ラミアが味方にいれば、重宝するが。」
「決まりね。さぁ、薬草採集に行きましょう。それが、お仕事、でしょう?」
「ああ……そういえば、名前を聞いていなかったな。俺の名はザイン。」
「ミリアよ。」
奇妙な二人組は進んで行く。俺達に待ち受けるのは、一体何なのだろうか……