第3話
始まりは、唐突だった。
ある日、家に帰ると、見知らぬ男が血の付いた剣を持って父親の前に立っていた。両親の内、母親は既に事切れていた。
「逃げろ! ザイン! この男、ケオスは俺が倒す!」
背中からその声を受けながら、俺は応援を頼むべくかつて冒険者だったという叔父の家に向かった。俺は怖かった。大好きだった母が、死んだという事実が受け入れられなかった。だから頼れる者なら誰でも良かった。誰かに嘘だと言って欲しかった。
「俺に応援を頼むだぁ?いい度胸してんな、お前。まぁ行ってくるから待ってろよ。」
そう言って叔父は俺の家に向かっていった。思えばこれが最大の間違いだったのかもしれない。いや、最大の間違いは、あの男、ケオスの存在だろう。
数分後、叔父は戻ってきて言った。
「お前の親父さんは既に死んじまってたよ……で、冒険者に仕事を頼んだんだ。報酬は用意しているんだろうな?」
「そんな……今、家に金はないんだ、少し待ってくれないか?」
「ないなら家を売れよ。地下都市の家ならちったぁ金になるだろうさ。」
「家がなければ、どうやって生活をするんだ!?」
「冒険者にでもなるんだな。幸運なことに、お前には元素魔法の才能があるじゃあねぇか。引く手数多だせ、お前。」
「くっ……」
結局俺は、家を売り、手に入れた金を全て叔父に払い、地上の街に出て一文無しで冒険者になった。父も母も家も失い、俺はもう、誰も信じられなかった……