縁を結び、縁を断つ──五道家の裏側
ちなみに「五道家」の“五道”とは、五芒星に由来するらしい。
木・火・土・金・水──この五つの力を古来より操り、日本を“裏側”から守ってきた一族だという。
とくに“直系”は能力が段違いに強いらしく、今も直系の血を濃く継ぐ者だけが本来の力を発揮できるらしい。
そこで、ひとつ疑問が浮かぶ。
なぜ空也と姫華ちゃんは「五道」ではなく「我妻」を名乗っているのか。
一緒に暮らしていると気になることは山ほどあるが、
本人たちが話さないのにこちらから踏み込むのもためらわれて、結局いまも聞けずじまいだ。
え? 話してくれないかもしれないって?
……まぁ、そうなったらそれまでだ。
誰だって、人に触れられたくない事情の一つや二つはある。
きっと空也と姫華ちゃんにも、我妻を名乗る理由がちゃんとあるんだろう。
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さて。
俺の労働時間は、店のオープン準備である朝10時から、裏稼業が終わるまで──という長丁場。
と言っても裏稼業は頻繁ではないので、普段は 10〜20時で甘味処の手伝いをしている。
ブラック企業で働いていた当時に比べれば、通勤時間ゼロというだけで天国みたいなものだ。
……とはいえ、裏稼業がある日は本当に大変で、ターゲットの行動によっては深夜に突入することもある。
ちなみに裏稼業は“前払い制”。
理由は、依頼が完了すると 依頼主も対象者も、その出来事の記憶を完全に失う からだ。
後払いなんて成立しようがない。
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裏稼業の依頼方法も独特で、幸福屋には──
選ばれた人にだけ見えるメニュー
が存在する。
その人が払えるギリギリの額で表示され、選ぶかどうかは本人次第。
そのメニュー名が 「チョコレートパフェ」。
(ちなみに姫華ちゃんチームは 「ラズベリーサンデー」 らしい。)
甘味処には似合わないから分かりやすい、とマキちゃんは言っていた。
注文が入ると、まずターゲットの行動を下調べし、そのうえで実行へ移る。
夕闇や宵闇に紛れ、悪しきもの・悪しき縁を断ち切り、依頼主を幸せへ導く──それが五道家の裏稼業だ。
空也いわく、「悪縁」が最も厄介らしい。
強い恨みは、一度断ち切っても 想念として残り、生霊となって依頼主に取り憑くことがある。
空也はそれが完全に消滅するまで、ひとつの依頼に時間がかかっていたという。
それを──
一瞬で昇華できるのが、“陽の気質”。
さらに俺の場合、
依頼主も対象者も、それぞれ“幸運へ向かう縁”に結び直す んだとか。
……とは言っても、自覚はほとんど無い。
俺がまだ裏稼業に関わる前、空也が断ち切った“闇”の想念が空也にまとわりついたことがあった。
そのとき、タマの毛は墨色になり、空也自身もひどくつらそうだった。
俺が「どうにかならないのか?」と聞くと、空也はこう言った。
「青夜、そのモヤを空也から引き剥がすイメージをしてみろ。
そして──“手を叩いて消す”イメージだ」
言われるままに柏手を打つと、
黒いモヤだった闇は虹色に変わり、蝶の姿で空へ舞い上がっていった。
空也はそれを見て、ほんの少し──本当に少しだけ笑った。
俺にはまだよく分からないけれど。
どうやらこれが、“陽の気質”という力らしい。
おはようございます。
今回は、空也たちの裏稼業と、青夜の秘められた能力が少しだけ明かされる回でしたね。
さてさて、この先、青夜はどんな道を辿っていくのでしょうか?
楽しんでいただけたら幸いです。
次回更新は 夜の20時 になります。
またお会いできたら嬉しいです。




