幸福屋社宅、定休日なのにフルスロットル
朝。それは万人に与えられた、爽やかな一日の始まり……のはずだった。
眩しい朝日を浴びながら、俺は“定休日の遅く起きる幸せ”を満喫──する予定だったのに。
「お兄! 私のお菓子食べたでしょう!」
「空也きゅ〜ん、そこで寝てると襲っちゃうぞ〜」
「ぎゃー! やめろ!!」
俺の静かな朝は、けたたましい声で見事に破壊された。
ゆっくり階段を下りると、リビングではマキちゃんが空也を抱きしめてキスしようとしており、姫華ちゃんが
「一気にブチューってやっちゃえ!」
と煽っていた。
「あの〜……何を騒いでるんですか? 俺、定休日なんでゆっくり休みたいんですけど……」
そう言った瞬間──
「青ちゃん聞いて! お兄が私のお菓子を食べちゃったの!!」
「食べちゃダメなら名前でも書いとけ! ってマキ! どさくさに紛れて頬にキスしようとすんな!」
「やだぁ〜! 空也きゅんったら冷たい〜。青ちゃんどう思う?」
三方向から怒涛の言葉が飛んでくる。
「ですから……俺、休みの日くらいは──」
「お兄! ここに名前書いてありますけど?」
「はぁ? 読めねぇなぁ?」
「青ちゃん、私の名前読めるよね!?」
「姫華! なんでも青夜に告げ口するな!」
「いや〜ん空也きゅん、アタシを無視しないでぇ〜! 青ちゃん、空也きゅんがアタシを無視するぅ〜!」
朝6時30分。
俺は身体をプルプル震わせたあと叫んだ。
「俺は寝たいんだよ!!
空也! 姫華ちゃんのお菓子は買って返せ!
姫華ちゃんはそれで良い?
マキちゃん! 姫華ちゃんの前で空也に迫るのはやめて下さい!!」
一気にまくし立て、
「俺はまだ寝たいんです! だから静かにして下さい!!」
と言い残して背を向けた。
唖然とする三人に背を向けて歩き出すと、小声が聞こえてくる。
「なぁにあれ。青ちゃん機嫌悪い。あ! もしかして月のモノ?」
「マキちゃん。青ちゃんは女の子みたいな顔してても男の子ですよ?」
「あ! あれか? 欲求不満?」
空也の一言の後、三人から“憐れみの視線”が俺の背に突き刺さる。
クルリと振り向いて、
「だ〜か〜ら〜……寝かせてくれないかな?」
怒り心頭の表情で言うと、三人は揃って端に固まり、
「静かにしま〜す……」
と返事をした。
睨みつけてから部屋に戻り、ベッドに滑り込んだ瞬間──
ドスッと腹に衝撃が走る。
「ぐふっ!」
見ると、真っ白な毛玉が腹の上で優雅に毛繕いをしていた。
「タマ……もうちょっと優しく乗って欲しいんだけど……」
声を掛けても、タマは大きなあくびをして丸くなり、すやすや眠り始める。
その小さな命の重さをお腹に感じながら、俺も暖かい日差しに包まれてウトウトし始めた。
おはようございます。
今朝の幸福屋の賑やかさを、皆様にも一緒に味わっていただけていたら嬉しいです。
次回更新は 20時 になります。
またお会いできたら、とても嬉しいです。




