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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第一章 出会いは一匹の猫からだった
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甘味処に逃げたら地獄が待っていた

「いらっしゃいませ」


 店内に入ると、明るい女性の声が聞こえ、思わずホッとした。

 こじんまりとした和風の甘味処。

席に案内されて座ると、メニューには蕎麦や天丼などランチもできるらしい。


「いらっしゃいませ。当店は初めてですか?」


 爽やかな声に顔を上げると、ポニーテールに袴姿の美少女が微笑んでいた。


「あ……はい!」


 思わず返事をすると、美少女はにっこり。


「そうですか。ご注文はお決まりですか?」


 お水とおしぼりを受け取り、手を拭いていると──


「それ、レンタルなので汗拭いても大丈夫ですよ」


 と言われ、思わず赤面してしまう。


「じゃあ、決まったころに伺いますね」


 美少女が微笑んで席を離れたその時──『ガラリ』と引き戸が開いた。


 ちょうど水を飲んでいた俺は、入ってきた人物を見て盛大に吹き出した。


「お、お客様!? 大丈夫ですか!」


 美少女が慌ててタオルを持ってくる。

その背後では、例の変態イケメンが俺を見つけてこう叫んだ。


「見つけた! お前、ここに逃げ込んだのか!」


 俺はタオルを断りながら立ち上がる。


「俺、やっぱり帰ります!」


「え? お客様?」


 美少女が慌てる間にも、イケメンはツカツカと近づき──腕を掴んだ。


「逃がすと思ってるのか?」


 また距離感バグってる! 近い! 顔が近い!!


(ひゃー!! 助けて!!)


 と思った瞬間──


『バシィッ!』


 何かを叩く音。

イケメンは頭を押さえてその場にしゃがみ込んだ。


 その後ろには、シルバートレイを構えた美少女が鬼の形相で仁王立ちしている。


「お兄! 大切なお客様に何してるの!!」


 そう怒鳴ると、


「マキさーん! お兄の撤去お願いします!」


 と厨房に向かって叫んだ。


 すると──やけに野太い声で返事が聞こえた。


「はーい」


 現れたのは、180cm超えの筋肉ムキムキ。

だが女装。

どこからどう見てもマッチョな“お姉さん”だ。


「????」


 状況を飲み込めない俺をよそに──


「空也~。おいたしたら、ダ・メ・だ・ぞ♡」


 と言い、容赦なくデコピンを叩き込んだ。

めちゃくちゃ痛そう。


 蹲るイケメンを軽々と肩に担ぎ、


「あたしというモノがありながら、浮気なんて許さないわよ!」


 と言いながら厨房へ連行していく。


「ちょっと待て! 俺はアイツに話が──」


「空也! あたしの前で堂々と浮気するつもり!?」


「違う! というか、お前とは何でもないだろ!」


「キ──!! 空也のイケズ!!」


 その直後、ボキボキボキッという音がして、


「ギャーッ!!」


 という叫びが響いた。


 俺が恐る恐る美少女を見ると──


「あ、大丈夫です。多分、マキさんにハグされただけなので」


 とニコッと笑う。


「お兄はしばらく来られないので、ゆっくりしていってください」


 笑顔で言われたが、それはつまり“来られない状況”……なんだよな?


「あ、あははは……」


 俺が乾いた笑いを浮かべていると、美少女は小さく呟いた。


「焦らなくても、また会えるのに……。余程嬉しかったみたいね」


「え……?」


 意味が分からず固まる俺に、美少女はさらに微笑んで、


「お兄がご迷惑をおかけしましたので、よかったら何かご馳走させてください」


 そう言うと、


「マキさん、あんな風だけど料理は繊細で美味しいの! 食べてって」


 と続ける。


 すると厨房から、


「ちょっと姫華! 聞こえてるわよ!」


 と声が返ってきた。


 美少女──姫華は肩をすくめ、ぺろっと舌を出して笑った。


 こうして──

これが、俺と我妻兄妹との出会いだった。


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