タマ、夜空を駆ける②
『青夜、もう行くぞ!』
巨大化したタマが唸る。
俺は空也の背中をポンポンと軽く叩き、微笑んだ。
「じゃあ、行くな。多分、浄化は出来てるから安心しろよ」
そう言って、タマの背中に飛び乗る。
「おぉ……これが本当のネコバス」
珍しく、空也が呟いた。
思わず吹き出して、
「なんだ、それ」
と笑うと、空也も小さく笑った。
(普段無愛想なイケメンの笑顔、破壊力半端ねぇ……!)
腰が引ける俺をよそに、
『行くぞ、青夜!』
タマがそう叫び、夜空へと駆け出した。
(また、あの急降下を味わうのか……)
そう身構えた瞬間、
『……お前の力は大したものだな』
と、タマがぽつりと呟いた。
「え?」
『空也の淀みが消えた』
空也の眷属だからこそ分かるのだろう。
「……そうか」
俺が小さく笑うと、
『お前はもう少し、自分の力の凄さを自覚すべきだ』
と、タマは続けた。
『そろそろ到着だ。
我が部屋を出たら、部屋全体を浄化するイメージで柏手を打て。いいな』
俺は頷き、身体をタマに密着させて前傾姿勢になる。
次の瞬間、タマは「ビュンッ」と唸りを上げ、急降下した。
そのまま俺は、五道家の部屋へと送り届けられる。
「タマ、ありがとう!」
すぐに飛び立とうとするタマに声を掛けると、
『フン。お前のためではない』
それだけ言い残し、タマは軽々と夜空へ駆け上がっていった。
俺は少しだけその背を見送り、急いでタマに言われた通り、
部屋と自分を浄化するイメージをしながら柏手を打つ。
――その瞬間。
部屋の中が、一瞬だけ白く輝いた気がした。
髪がふわりと逆立ち、ゆっくりと元に戻る。
その直後だった。
『バンッ!』
凄まじい音を立てて、部屋の扉が開く。
驚いて身体を跳ね上げると、
「……居るか」
と、五道哲真の低い声が響いた。
彼は俺の近くまで来ると、クンクンと匂いを嗅ぎ、
安堵したように微笑む。
(いや……嗅覚が鋭いのは分かるけど、
嗅がれる側の身にもなってくれ……)
そう思いながらも、平静を装って尋ねる。
「何か?」
五道哲真は部屋の周囲を一度見回し、再び匂いを確かめてから、
「侵入者が居たように感じたのだが……気のせいか」
と、ぽつりと呟いた。
(やっべぇ……どんだけヤバい力持ってんだ、このオッサン)
心の中で呟いていると、
「ああ、そうそう。青夜君。
やはり君は神代一族の血縁だったよ」
そう言って、意味深に微笑む。
「神代一族……?」
「ええ。君の母親、神代雪。
今は結婚して、小林幸と名を変えているようだね」
その言葉に、俺は目を見開いた。
「知っているかい?
実は雪と雪夜は兄妹でね……」
五道哲真は淡々と続ける。
「つまり、君と桜子、そして空也は――いとこ同士ということだ」
その瞬間、俺の頭は真っ白になった。




