タマ、夜空を駆ける
タマは空を駆け上がり、まるで地面を走るかのように夜空を飛んでいた。
足下には家々の灯りが瞬き、気分は某テーマパークの空飛ぶ絨毯だ。
もふもふの毛並み。
眼下に広がる街明かり。
頬を切る夜風の感触。
最高に気持ちがいい。
しばらく進むと、タマの速度が徐々に落ちていく。
『このまま、空也の部屋に突っ込む。
しっかり掴まれ!』
そう言われ、青夜は慌ててタマの身体にぎゅっとしがみついた。
(やっぱり、もふもふが気持ちいい……)
──と思った次の瞬間、急降下。
「ギャァァァァァ――!!」
悲鳴を上げる間もなく、タマは開いていた空也の部屋の窓へと突っ込んだ。
「た……たま?」
巨大化したタマを前に、呆然とした空也の声が聞こえる。
青夜は颯爽と背中から降り、格好よく着地するつもりだった。
──のだが。
タマがいつものサイズに戻ったせいで、
支えを失った青夜はそのまま床へ落下した。
「痛たた……」
尻もちをつく青夜に、
「……青夜?」
空也の驚いた声が降ってくる。
「よ……よぉ!」
気まずい空気の中、青夜は手を上げて苦笑いした。
「なんで、ここに?」
「タマに連れてきてもらった」
「……」
「……」
会話が続かない。
ぎこちない沈黙が部屋を満たす。
すると、タマがイライラした様子で叫んだ。
『お前らは喧嘩別れしたカップルか!!』
同時に、青夜の頬へ肉球ビンタ。
(なんで、いつも俺だけ……)
内心でぼやいていると、今度はタマが空也を見据えた。
『空也。お前も、いつまで拗ねている?』
その言葉に弾かれたように、空也が顔を上げる。
「拗ねてない!」
『拗ねてた』
「拗ねてない!」
同じやり取りが何度か繰り返される。
青夜が呆れた視線を向けた瞬間、
『お前は黙ってろ!』
タマの後ろ足による肉球キックが飛んできた。
「えぇ!? 八つ当たり!?」
吹き飛ばされながら叫び、青夜は頬をさすって立ち上がる。
そして、空也の前に歩み寄り、右手を差し出した。
「空也。さっきはごめん。
迎えに来てくれて……嬉しかった」
微笑みながら言うと、空也は気まずそうに視線を逸らす。
「……おう」
軽く、差し出された手を叩いた。
『ということで、仲直りだな!
じゃあ青夜、戻るぞ』
タマが再び巨大化する。
すると空也が慌てて叫んだ。
「戻るって……本家か?」
『こいつは神代家の血を引いている。
このままここに居るのがバレたら、お前ら揃って本家に逆戻りだ』
その言葉に、空也は妙に納得した表情を浮かべた。
「……青夜は、神代家の血筋だったのか」
そう呟き、ベッドに腰を下ろす。
青夜は慌てて近づき、そっと空也を抱き締めた。
「お前と……姫華ちゃんの居場所は、俺が守る。
だから空也、信じてくれないか?
俺は絶対に、お前を裏切らない」
その言葉に、空也は小さく笑い、青夜を抱き返す。
「……ああ。分かった」
短く、しかし確かな声で、そう答えた。
昨日は体調不良のため、更新できませんでした。
楽しみにしてくださっていた方、ごめんなさい。
無理せず、ゆっくり書いていきますので、
お待ちいただけたら嬉しいです。




