タマの肉球ビンタはやっぱり痛い
タマのキックで吹っ飛ぶ俺。
「まったく……最近の若い奴は礼儀がなっていない!」
仁王立ちで腕を組み、尻尾をバシバシ叩きつけながら怒るタマ。
猫なのに喋るだけでも驚きなのに、二足歩行に腕組みまでしてきやがる。
固まって見つめていると──
「なんだ? 何か言いたいことでもあるのか?」
相変わらず、俺に“だけ”は冷たいタマ。
しかし、よく見ると毛色が少しくすんでいる。
「タマ! お前、また毛色がシルバーになってるじゃないか!」
慌てて浄化すると、タマの毛は元の雪のような白に戻った。
「ふん。相変わらず、その力だけは見事だな」
満足げに毛並みを整えながら、タマはサファイアの瞳で俺を見上げる。
「……空也が荒れておるのは、お主のせいか? 何があった?」
その視線に、俺は思わず息を飲んだ。
「どうせ、哲真に何か言われたのであろう?」
タマの言葉に驚いて顔を見ると、
「やはりな。あの家を奪うくらい……あの男なら言いかねん」
そう低く呟き、タマはふっと笑った。
「まぁ今は、やつを“満足させておけば”よい。
……で、お前はどうしたい?」
「俺は……空也と、このままなんて嫌だ」
考えるより先に、口が動いていた。
「分かった。この件は、なんとかしよう」
窓から飛び出そうとしたタマに、俺は思わず叫んだ。
「タマ、待って! もう少しだけ……一緒にいてくれよ!」
気付けばタマを抱きしめていた。
モフモフ……最高すぎて、頬ずりが止まらない。
「ええい! 離さんか、この大馬鹿者!」
思い切り肉球ビンタを食らったが──
(肉球なのに……痛ぇ……!!)
……それでもモフりたい気持ちは止まらなかった。
「あと少しだけモフらせてくれ〜!」
名残惜しそうに毛並みを堪能していると、タマの体がふいに金色に光り──
次の瞬間、巨大化した。
「た……タマ?」
呆然とする俺に、巨大タマは満足そうに微笑む。
「でかしたぞ、青夜。……まさか、そなたの力がここまでとは」
そしてふと目を細める。
「そうか……青夜。お主、神代家の血筋であったか」
「タマ、さっき五道哲真も言ってたけど……何なの? その“神代家”って」
俺が首を傾げると、タマはニヤリと笑う。
「なるほどな。それで“強行突破”に出たわけか……。
ならばこちらも、強行突破と行こうではないか」
そして──
「青夜、我の背に乗れ!」
「え? でも……」
戸惑う俺をよそに、
「案ずるな。この部屋には結界を張っておいた。
お前がいなくとも、誰も気付くまい。
……それともここに残って、空也と絶縁するか?」
その言葉に、俺はタマをギロッと睨んだ。
「その聞き方、ずるいよ……」
そう呟きつつ、迷わずタマの背に飛び乗った。
モフモフ……やっぱり最高に気持ち良い。
タマは背中の俺を確認すると、
「しっかりつかまれよ!」
と言うが早いか──
巨大な体を翻し、窓から夜空へ飛び出した。




