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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第三章 五道家
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守りたい場所と、守れなかった友情

「では、こちらのお部屋になります」


着物姿の、落ち着いた雰囲気の女性に案内されたのは──

驚くほど立派な洋間だった。


日本建築の家だから全室和室だと思い込んでいたのに、

ここだけはまるで別世界のようだ。


広いベッド、重厚な机、壁一面のクローゼット。

そして天井には、なぜかシャンデリア。


「……すげぇ」


思わず呟きながらベッドに腰を下ろし、深く溜め息を吐いた。


空也の背中を思い出すたび、胸の奥がずきりと痛む。


でも──

あの場所を守るためには“これでよかった” と、何度も自分に言い聞かせる。


……それでも。


あのとき空也の背中から伝わってきた

悲しさ、悔しさ、寂しさ

あれを俺が与えてしまったのだと思うと、胃の奥がひっくり返りそうになる。


握り締めた拳を額に押し当て、もう一度、自分に言い聞かせた。


(……間違ってない。間違ってない、はずだ)



「青夜ってさ、なんでも一人で決めちゃうよね」


いつの記憶だろう。

赤いマニュキュアを塗りながら、彼女はそう言っていた。


結婚を考えていた相手だった。


だけど結局、俺の“独りよがり”が原因で破局した。


最後に言われた言葉は、今も胸に張り付いている。


『何でも一人で決めて、何でも一人でやれるなら……

私なんていらないよね?』


素朴で可愛い子だったのに、別れる頃には真っ赤な口紅に真っ赤な爪。

まるで怒りそのままを纏ったみたいな女性になっていた。


「……また、独り善がりだったのかな」


小さく呟くと、こみ上げるものを必死で飲み込んだ。


強引で、我儘で、俺の意思なんてお構いなしで……

でも、離れてしまうと、胸の奥が妙に冷たくなる。


(……なんで、こんなに寂しいんだよ)


──“青夜”


ふいに、空也が俺を呼ぶ声が甦る。


自分勝手で傍若無人で、良いところなんて容姿くらいしかないような奴で……

だけど唯一、俺にこう言ってくれた男だった。


『青夜、俺と一緒に戦ってくれ』


『お前を捨てたりしない。俺はずっとお前のそばにいる。

だって、俺たちは“相棒”だろ?』


空也の言葉は、いつだって本音なんだと信じられた。


だからあの店が奪われることだけは、どうしても嫌だった。

マキちゃんも、姫華ちゃんも、あそこが“帰る場所”だから。


……だけど、本当にこれでよかったんだろうか。


胸の奥で、答えの出ない問いが揺れたその時──


『なんだ……お主も落ち込んでおるのか』


聞き慣れた声がして窓を見ると、

タマが窓の外からこちらを覗いているではないか。


「タ、タマ!」


慌てて窓を開けて呼ぶと──


『“さん”付けをしろ、この馬鹿者が!』


パシィッ!


顔面に鋭いキックが飛んできた。


(肉球なのに……痛ぇ……!!)


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