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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第三章 五道家
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守りたかった家と、壊れた友情

「空也、大丈夫か?」


そっと肩に触れた俺に、空也は顔をしかめた。


「あいつに何を言われた? “正式に発表”ってなんだよ。義理の父親って……どういう意味だ?」


矢継ぎ早に問い詰められ、俺が返事に詰まっていると──

空也はハッとしたように桜子さんを見た。


「お前……」


「うん、桜子さんと婚約したんだ」


俺が冷静に答えた瞬間、空也は愕然とした表情で叫んだ。


「なんで!!」


「きちんと桜子さんの気持ちにも向き合ってほしい……って言われてさ」


「それで……婚約したのか?」


「……うん」


短く答えると、空也はゆっくり立ち上がり──

何かを飲み込むようにして呟いた。


「青夜の気持ちは……分かった」


そして俺に背を向け、


「もう、あの家に帰って来なくていい。……桜子、後でこいつの荷物を取りに来い」


それだけ言うと、空也は歩き出した。


「空也!」


慌てて肩を掴もうと手を伸ばした瞬間──

バシッ、と強く振り払われた。


弾かれた俺の手が宙に弧を描く。

その痛みよりも、空也の表情の方が胸に刺さった。


「俺は……お前を信じてたのに」


憎しみと悲しみが混ざった瞳。

その視線に耐えきれず、俺は思わず俯いた。


「裏切り者には用はない。……じゃあな」


そう吐き捨てると、空也はそのまま消えてしまった。


一歩踏み出して追いかけようとした俺を──


「青夜君」


静かだが問答無用の声が縫い止める。

五道哲真だ。


拳を握りしめる。

追いたい。謝りたい。関係を壊したくない。


──でも。


“あの店を守るために婚約した”

そう知られたくないからこそ、追えない。


今、追いかければ、全部が崩れてしまう。


胸の奥がきゅうっと締め付けられた。


(帰れなくなるのか……あの場所に)


騒がしくて、温かくて、俺にとっていつの間にか“帰る場所”になっていたのに。


こんな形で気付くなんて──

……俺らしい。


苦笑いが漏れ、空也に払われた手を見つめる。


(大丈夫……これでいい。俺は諦めることには慣れてる)


自分に言い聞かせるように、そっと手を握り直した。


青夜が踏みとどまったのを見て、五道哲真はなぜか満足げに微笑んだ。


「それでいい。きみは、この決断をして良かったと、いずれ必ず思うはずだ」


その言葉が空虚に響く。


俺はただ──

空也が去った方向を、黙って見つめることしかできなかった。


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