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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第三章 五道家
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誓約書に刻まれた運命

「お父様!」

桜子さんが鋭い声を上げる。


しかし五道哲真は、静かだが絶対に逆らえない声音で告げた。


「桜子は黙っていなさい。……分かっているとは思うけれど、これは“ただの脅し”ではないよ」


その威圧感に、俺は一度だけ目を閉じ、深く息を吸い込んで──覚悟を決めた。


「……分かりました。婚約、受けさせていただきます」


静かに頭を下げる。


空也たちと暮らして、まだ長くはない。

けれど──あの場所が、彼らにとって “どれほど大切な家なのか” 俺は分かっていた。


その瞬間、桜子さんが血の気の引いた顔で叫ぶ。


「青夜さん! お父様……こんな婚約、私は嫌です!」


だが哲真は眉ひとつ動かさず言葉を返す。


「桜子。きっかけがどうであれ、結婚してしまえば愛情は育まれる。心配はいらないよ」


そう言って、机の上に一枚の紙を置いた。


──婚約誓約書。


「……分かりました。ただし、俺からも条件があります」


俺は迷わず言った。


「あの場所を、空也たちから絶対に奪わないでください」


真っ直ぐ見据えた俺に、哲真は小さく頷く。


「約束しよう。……では、こちらに署名を」


上質な万年筆が添えられ、俺は誓約書へ名前を書き込む。


哲真が内容を確認し、胸ポケットへとしまった──その瞬間。


ドンッ!


鈍い衝撃音が響き、続けて廊下が騒がしくなった。


「囚われの姫、救出……と言ったところかな」


哲真が静かに呟くと同時に、襖が“スパンッ”と開く。


「青夜!!」


荒い息を吐きながら、空也が飛び込んできた。


「く……空也?」


驚く俺の前で、空也は哲真へ殴りかかりそうな勢いで突っ込んでいく──

だが。


あと一歩、触れられるという距離で、


ガクンッ


空也の身体が地面に叩きつけられた。


見えない重力に押し潰されたように、身動きが取れない。


「まったく……無鉄砲にも程がある」


哲真がため息まじりに言い放つ。


「今のきみでは、私に近付くことさえ叶わないよ」


ゆっくり立ち上がると、畳に押し付けられた空也を見下ろし、


「空也。お前はまだその程度なのか?

お前くらいの年齢の雪夜はおろか、私の足元にも及ばん」


冷たく言い捨て、今度は俺へ視線を向けた。


「青夜君。近々、この婚約は親族一同に正式に発表する。……私は、きみが義理の息子になってくれると信じているよ」


そう言って静かに部屋を出ていった。

背を向けているのに、圧倒的な威圧感が消えない。


「クソッ……!」


哲真が去ったあと、空也が悔しさを噛み締めるように畳を拳で叩く。


その音で、俺はハッと現実に引き戻された。


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