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本日も晴天なり  作者: 古紫 汐桜
第三章 五道家
22/36

畳二十四枚の間で、当主は笑う

「うっわぁ~!」


通されたのは、信じられないほど広い畳の部屋だった。


(これ……何畳? 宴会場じゃん)


い草の香りがふわりと鼻をくすぐる。

敷き詰められた畳はどれも青々としていて、明らかに頻繁に張り替えている。


ざっと数えて──24畳。


(24!? 一般家庭の規模じゃないだろ……!)


ぽかんと口を開けて見回していると、


「狭い部屋で済まないね」


などと言われ、心の中で思わずツッコむ。


(どこが狭いんだよ! どんだけ金持ちなんだここ!)


その時──襖がすっと開いた。


「失礼いたします」


和服姿の女性が静かに入ってきて、部屋の真ん中に置かれた立派なテーブルへ歩み寄る。

彼女は流れるような所作でお茶と菓子を並べ、柔らかく微笑むと、


「ごゆっくり」


そう言って足音ひとつ立てずに去っていった。


(す、すげぇ……完全にテレビの世界だ……)


目の前に置かれた豆大福に視線を奪われる。

漆塗りの皿に、同じく漆塗りの和菓子フォーク。


(絶対高いやつ……。5個100円の大福と存在感が全然違う)


大福を凝視していたら──


五道哲真がクスッと笑い出した。


「君は……思ったことが口から出てしまうんだね」


その笑顔は意外にも柔らかく、

“鬼”と呼ばれた人物には見えなかった。


「え?」


考え事をしていて返事が遅れると、哲真は肩をすくめた。


「報告は受けているよ。君は無自覚に、思ったことが口に出るってね」


そう言って、ふざけたようにウインクしてくる。


瞬間、空也と初めて会った日のことが脳裏をよぎった。


(ま、まさか……タマのこと“ダウニー”とか“マカロン”とか言ってたの……聞こえてた!?)


思い出した瞬間、顔から火が出そうになる。


哲真は喉の奥で「クックッ」と笑いをこらえながら言った。


「もしかしなくても──出てたね」


「オーマイガー!!」


両手で顔を覆う俺を見て、哲真は楽しそうに声を立てて笑った。


「いやぁ、こんなに笑ったのは久しぶりだよ。

ほら、スーパーの安売り大福じゃないけど……どうぞ」


大福を促される。


俺が迷っていると、


「フォークじゃなくても、手掴みで構わないよ」


と言いながら、彼自身は器用にフォークで大福を切り分け口へ運んだ。


「ここの大福は、雪夜が大好きでね……」


ぽつりと呟く。


その“雪夜”という名前に胸が僅かに締めつけられながら、俺は一礼し、大福を手で摘んで口へ運んだ。


──うまっ!!


餅の塩気と餡の甘さが絶妙で、

あまりの美味しさに、思わず哲真の存在を忘れて夢中になってしまった。


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